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22 歳の大学生がアルゼンチンを 1 人旅したら①

「君の体験、記事にしてみないか?」
突然の連絡だった。アルゼンチンから宮崎に帰国し、国際交流協会の方と旅の話をしていると旅行記を書かせてもらうことになったのだ。
22歳の若造ぼっちに記事を書かせてくれるなんて優しい人もいるもんだ。
貴重な経験を本当にありがとうございました。(2023年12月無事発行)

以下はアルゼンチンで1ヶ月間1人旅した旅行記になります。

ぼっちのけん

22 歳の大学生がアルゼンチンを 1 人旅したら

2023年9月8日、俺は意気揚々と福岡空港から乗り継ぎのために仁川国際空港(韓国)へ出発したのはよかったのだが、この旅の初めからつまずいてしまった。仁川空港で乗り継ぎ先のニュージーランドのビザを持っていないのが分かり、大枚をはたいて別の便に乗ることになったのだ。「相変わらず俺らしいな」とぼやきながらも、仁川空港から約 40 時間の長いフライトの末、やっとの思いでブエノスアイレス(アルゼンチンの首都)に到着した。

到着したブエノスアイレスの街並み

ブエノスアイレスの第 1 印象は「おわぁ、宮崎よりすげえ大都会だな~! てか、車の量やべぇえ」と興奮してしまっている自分がいた。
高くて白い石柱記念碑『オベリスコ』の周りには KFC やスターバックスといった超メジャー企業や歴史を感じさせる白塗りのヨーロッパの建物が交互に立ち並んでいて、「どうせ森と先住民だけだろ」という偏見に満ちた南米イメージは早々に捨てることになった。

「アルゼンチンすげぇ!」と浮かれていると目の前を 80km くらいの猛スピードで車が駆け抜けていき、クラクションが常に鳴り響いていて、あちこちから怒号が聞こえてくる。目の前の横断歩道では上半身裸で両手に火のたいまつを持った男がファイヤーダンスをして日銭を稼いでいるではないか。
綺麗さとカオスが混じる無秩序な状況に「なんだぁこの国は・・・」と唖然としながらも宿を探すことにした。

電車の物売りの様子

『Couchsurfing』という無料で旅行者に寝床を提供してくれるホストを探せるアプリがあることをご存知だろうか。
そのアプリで今夜の寝床を貸してくれるホストを探した。その宿に向かう地下鉄の中で疲れ切ってうとうとしていた。すると突然、膝にお菓子とペンが置かれたのだ。「何だこれ?」思わずびっくりして顔を上げてみると、黒キャップを被った 30 代前半の男が乗客にお菓子とペンを配っていたのだ。配り終えたかと思うと、男が戻ってきて「Dinero、Dinero」とお金をせがみに来たのには二度びっくりした。電車の中で物売りを初めて目にした俺は、記念にそのお菓子とペンを買うはめになったのだ。(笑)

初日にして宮崎、もちろん日本でも未体験のことばかりで頭の中が一気にグチャグチャになってしまった。ホストから提供されたベッドの上で、「俺、ここで死ぬかもなぁ」と、そんなことを考え続け、なかなか眠りにつけないアルゼンチンの 1日目であった。

トトロが大好きなホストのお家

次の日「俺、もう、帰ろうかなぁ」と早々に日本が恋しくなりながら街を歩いていると「Chino」とすれ違いざまに聞こえてきた。「気のせいかな?」
と首を傾げ、今度はレストランの扉を開け中に入ると「Chino、Chino」と厨房のスタッフがコソコソと同僚に話しかけている。客席に座っていた 7、8 歳くらいの女の子までもが明らかに私の顔を見てヒソヒソと友達に耳打ちしているのだ。「間違いない、こいつら俺に何か言ってやがる!」イライラしてきた。
『Chino 意味 うざい』と検索してみると
【Chino はスペイン語で中国人という意味で、スペイン語圏では 99.9999%の確率で言われる言葉です。】と書かれていた。「あーもうむかつく!」という怒りの声と同時に、俺が『日本人』として見られていないことに少し口惜しい気持ちになった。

ブエノスアイレスにある大きな橋

日本から遠く離れた人口の 97%を白人が占める国では、日本人、ましてやアジア人が少ないので肌の色や顔の作りが違うだけでかなり目立つ。
電車の中やスーパーでレジを待っている時も目線をジロジロと感じた。
『日本人、韓国人、中国人はみんな中国人である』という強いステレオタイプが深く浸透しているこの国では、こういった言動がとられることは仕方
がないことなのかも知れない。これは、俺が南米に来るまで「どうせ森と先住民だけだろう」という偏見に満ちた南米イメージを持っていたのと同
じことだと思った。このことで、自分がこれまで心の小さな「ステレオタイプの人間」だったと反省させられた。

ただそんな中でも、日本の文化や日本人のきれい好きなところや丁寧な接客が好きな人々が一定数いるのは嬉しかった。俺が日本人とわかると「う
わぁ!日本人なの!?私日本大好き〜」と言って、自分の水道代を払うことも精一杯なのに家に泊めてくれる人もいたのには感動した。
焼き鳥やお寿司のお店が連なる日本食マーケットに足を運んだ時には「日本人だから値下げしてあげるね!」と割引してタダで頂けることまであ
った。そんな体験をした時には日本人で生まれてきたことや先人の善行が築き上げた日本の価値に改めて感謝することができ、嬉しく暖かい気持ち
になったのだった。1 人旅という事もあり、出来事や悩みを共有し、聞いてくれる相手がいないので余計にそう感じたのかも知れない。

アルゼンチンにある世界最大の日本庭園

続く…

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