トラウマ療法:ソマティック・エクスペリエンシング(SE)のセッションを視聴して…

最近、ある有料サイトで、ソマティック・エクスペリエンシング(SE)のセラピストによる、実際のセラピーを視聴する機会がありました。

そのセラピストの熱意や技量に、私はとても感心したのですが、視聴しながら(私がいつも考えていること)もしも自分一人でやるとしたら、どんなことならできるかな?どんなことを取り入れていけるかな?ということを考えました。

まず感じたのは、セラピストがクライアントの身体にとても敬意を払っているということでした。身体に何かの反応があったときに(クライアントは、それをセラピストに伝えるのですが)セラピストは、とても喜び、「素晴らしい身体ですね」と笑顔で伝えます。そんな風に言われたら、誰でも嬉しいですよね。それは一体、誰が嬉しいのでしょう?自分かな?自分の身体かな?きっとイコールなのでしょうね。そして、これは、私たちが自分ひとりでもできること、自分の身体に対して敬意をもつことは、私たちが常にできることです。

フォーカシングという、ひとりでもできる心理療法でも行われることですが(https://note.com/witmiffy/n/nca18a6d22ef8「自分で自分の身体の感覚を感じる」「身体の感覚のわずかな変化に気づく」「その変化を追いかけていく、変化に気づき続ける」というのが、SEのセラピーの間、ずっと行われていました。自分の身体のわずかな感覚は、「フェルトセンス」と呼ばれますが、それを自分でちゃんと感じることが、第一歩です。

この感覚は、他人であるセラピストには感じることができないので、自分自身が感じることです。慣れるまでは、少し難しいかもしれないけれど、自分の身体の状態に静かに心を集中させていくと、誰もが自分の身体のわずかな感覚に気づくようになると思います。(私自身も、慣れるまでに時間がかかりましたが、ちゃんと感じることができました)

そのような身体の感覚の変化に「ただ気が付いていてください、気がつくだけでいいです」という声かけが何度かありました。身体の感覚の変化に、ジャッジメントを入れない、何かの判断をしないということですね。

具体的な方法として・・・

  • クライアントに何かの感覚があったときに「これは、なじみのある感覚ですか?」とセラピストが質問していました。自分で行うときには、「これは、なじみのある感覚だろうか?」と自分自身に問いかけることで、自分の身体の感覚の変化を追っていくことができます。

  • 楽な感じ、軽い感じ、何か良い感覚を自分の身体が感じたら、その良い感覚をしっかり味わうように促されます。これも私が受けてきたセラピーでもよく言われたことでしたが、その感覚を本当にしっかり味わえるようになるには、自分がリラックスしていることが大切だと思います。「楽になるための近道は、苦しい所を見て、それを何とか楽にしようと考えるのではなく、楽な所があるときに『楽ってこんな感じなんだなぁ』としっかり感じること」と言っていました。

  • 身体の感覚に何か楽になるような変化、良い感じのする変化があったときは、「これは身体のお手柄だから、身体はすごいなぁ!としっかり認めましょう」と何度も言っていました。「自然に身体で起こった変化でも、意識するかしないかで大きく違うから、ちゃんと意識を向けて、身体ってすごいなぁと認める、ほめる」ことは、私たちが自分の身体に対してできることですね。「私の身体、すごいね、ありがとうね」と自分の身体に伝えてあげられますね。

  • セラピーを始める前に(私が体験したセラピーでも行われていました)まず、楽な姿勢で座ること。そして、自分の身体が今、椅子にしっかり支えられていて、足が床についていること、その感覚をしっかり味わうようにします。これは、グラウンディングといいますが、自分の身体がいま現在、安定していることを、しっかり自分で確かめて感じることが最初に行われます。
    そして、セラピーを受けている間に自分の身体に何かの変化があっても、「自分は今、大丈夫だ」という感覚を同時に意識しながら、いま、自分がいる環境には、危険なことは起こっていないよね、大丈夫だよね、という意識をしっかり持ち続けます。(大丈夫だと意識することで、新しく感じた感覚が定着しやすくなると言っていました)

  • 身体に自然に起こること(咳、あくび、くしゃみ等)は、できるだけ止めないように」「途中でトイレに行きたくなったら我慢しないで」という声かけもありました。自律神経が起こすことは、自然に起こさせてあげるということですね。

  • 自分の身体の感覚を色々感じた後は、しっかり休むように言われます。これも私が受けたセラピーでもよく言われてきたことでしたが、「セッションの後に休めば休むほど、神経系の統合がスムーズにいって、良い変化が定着しやすくなるので」とのこと。

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昔、ある人から聞いた「他人に優しく、自分には、もっと優しく」という言葉。本当にそうだな、それができたらいいなと私も思います。
そして、自分に優しくすることって、どんなことだろう…と考えると、日々、瞬間瞬間、自分のほんとうの気持ちを考え、それを大切にできるように行動すること。そして、ほんとうの気持ちは、どこから来るのか、と考えると、自分の身体の感覚なんですね。だからその感覚をしっかり細やかに感じられるように、少しずつ取り組んでいく。私の場合は、それが自分の傷を癒していく、ということなのだろうなと思います。

トラウマの核心は何か?と言えば、それは「自己の喪失(主体が奪われること、失われること)」です。トラウマを負うと、フラッシュバックや過覚醒といった問題のみならず、自分が自分のものであるという根本的な感覚が失われてしまうのです。特に発達性トラウマなど慢性的なトラウマでは、そうした感覚が顕著です。

みきいちたろう 『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(p.80)

心理学やセラピーの勉強をしていくと、多くのことを学びます。そして、もしも自分が自分のセラピストになることができたら、きっと最強なんだと思います。
サポートを受けるチャンスがあれば、それは幸運なこと。でも、そんな機会がなかったとしても、みんな自分の身体をもっています。生きている誰もが、日々動いてメッセージを送ってくれる身体をもっています。
身体はきっと最強のパートナーで、いつも共にいてくれる最高のセラピストなんだと思います。