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立地で成功の7割が決まる。1000円超のサラダが関西でも大人気の秘訣

京都市街を東西に走る、四条通り。

自転車にのり、河原町~四条烏丸周辺をぐるぐると散策します。平日休日の朝昼夕、歩く人たちの流れや、混雑しているお店を観察しながら。この一連の動きを、京都に出張するたびに、3回、4回と繰り返します。

(河原町のほうが観光客が多い。四条烏丸は平日は働く人がいて、休日は地元の買い物客で賑わっている)
(オーガニックのカフェがあり、このあたりにブルーボトルやスターバックスがあるな。結構、感度が高い人たちが集まってるエリアだな)

私の脳内では、こんな会話が交わされていました。

2022年7月にオープンした「WithGreen 京都ラクエ四条烏丸店」を出す1年前にしていた、「新規出店場所探し」の一部です。

WithGreenが新しく出店する場所を探すのは、代表の私の役割なんです。候補地を挙げて、副社長である弟にその場所を見てもらい、最終的な判断を2人でしています。

今回は、出店の際に重要な場所選定の観点や、東京の店が地方に出ていくときにやるべきことについて。その土地で1号店になる価値についても、感じたことを書いてみます。

京都エリア1号店となる、『WithGreen 京都ラクエ四条烏丸店』

立地で成功の7割が決まる

私たちが手がけるサラダボウルは、日常食です。

わざわざ出向いて摂るような食事ではありません。サラダ専門店は、人が多く集まるところにあることが最重要です。

考え方は、昼休憩でテイクアウトするコーヒーと似ています。どれだけスターバックスのラテが飲みたくても、2キロ先にあれば最寄りのコーヒーショップで済ませますよね。

だからこそ、新規出店する際の最初にして最大のポイントは、「場所選定」になります。

私の感覚では、サラダの業態は、立地で成功の7割が決まります。利用するお客さんの生活の導線上にあって、おいしくて使いやすいとなると、週に何度も通ってくれる方も出てきます。

サラダで勝負できる地方の出店先は限定的

出店場所を決める際に見るポイントは、都内や地方にかかわらず3つあります。

1つは、店前通行量。そもそも行き交う人の母数がいるのか。ここが少ないと、お話になりません。

2つめは、そこにいる人たちがどんなファッションで、どこにお金を使っているか。

3つめは、WithGreenに来てくれるお客さんの好みに近いオーガニックだったり、ヘルシーな食事がどれだけ受け入れられているか。サラダと相性のいい、アンテナが高いお店があるかをチェックします。

神楽坂にある1号店を出す際に、店前を通る人数を手動で計っていたことや、繁盛店・撤退店の両方を経験して培われたことから、サラダにとっての良い立地はピンとくるようになりました。

東京なら、サラダが合う場所はたくさんあります。人の数が多いですから、同じまちに複数あっても採算はとれます。渋谷の商業施設だけでも、ヒカリエやスクランブル、ストリームやマルイなどいくつもありますからね。

一方で地方の場合、サラダが受け入れられて勝負ができる場所は限られています。

通行量を鑑みると、京都は、四条烏丸・河原町・京都駅の3択です。

ずっと見ていると、河原町は観光客や若者が集う場所、四条烏丸は京都の地元の人が働いたり集まる場所だなと感じました。サラダは日常食で、WithGreenは地元の人に愛される店舗にしたいので、まずは四条烏丸で挑戦してみよう、と。

大阪は、ミナミに行くほどお金の使い方に対してシビアになると感じたため、難波ではなく梅田に「WithGreen エキマルシェ大阪店」を、大阪1号店としてオープンしました。

大阪エリア1号店となった『WithGreen エキマルシェ大阪店』

地元のいい業者さんと出会い続けたい

出店場所が決まれば、次は「商品と流通」です。地方出店の場合は、新しい店舗のために、仕入先や流通をゼロから探して組み立てます。東京と違い、その土地の方たちとここを築いていくことが、地方出店において一番大変なところかもしれません。

私たちが扱う野菜は、冷凍がききません。WithGreenの根源は「サラダのおいしさ」にありますから、東京の店舗と変わらない鮮度のいい食材を提供したいと考えると、できるだけ地元で強い農家さん、八百屋さん、野菜卸さんを探さないといけないわけです。トマト1つ、玉ねぎ1つ、八百屋さんや野菜卸さんによって、その質はまったく違います。

東京の八百屋さんから紹介してもらうものの、地元のいい業者さんと出会うのは簡単ではないんです。

おいしいサラダを提供するために、いまも常に求めて探し続けているところはありますね。より良い仕入先と出会うことに終わりはないので、うちのサラダは、出店した直後よりも1年後のほうがおいしくなっているはずです(笑)。

流通は、基本的に毎日配送を行っている業者さんであるかどうかは、とても大事です。地元の業者さんだと水曜と日曜が休業日というところも少なくないのですが、私たちの求める新鮮さのためには、毎日配送ができる体制のところと組む必要があります。

そんな配送先が見つかり握手できたら、発注方法の仕組みなどを設計していきます。

現地でストアマネージャーを半年かけて育成

「スタッフの採用と教育」も重要な要素です。1店舗の運営には社員1-2名、アルバイトスタッフを20人〜30人が必要です。まず店長を採用して、東京のストアマネージャーが半年ほど現地で一緒に過ごしながら、スタッフたちに経験を積んでもらいます。先に2-3ヶ月ほど、地方で採用しても、東京に来てもらって研修することもあります。

採用は最初こそ大変ですが、実は回り始めると楽です。サラダボウル専門店という存在が地方では目新しいので、働きたいと思ってくれる人は東京より困らないんですよね。

モノ(商品と流通)と人(従業員)がそろったら、最後はマーケティングです。

大阪、京都と出店してみてわかったのは、地方に影響力のあるインフルエンサーは、それぞれのエリアにいること。食なら全国区のタレントさんよりも、地元のおいしいところをピンポイントで紹介してくれる人を、地元の人はフォローしています。そういう地域密着のインフルエンサーに来店してもらい、発信してもらうと効果がありました。

何もないところに根づかせていくことの価値

関西出店うまくいくのか。始める前は、不安や心配がありました。

食いだおれのまち大阪であっても、味には自信がありました。ただ、東京と比べて、お金を使うときの感覚がシビアです。1000円を超える価格帯のサラダボウル文化は、受け入れてもらえるのか? 出店準備をする間、ずっと考えていました。

フタを開けてみると、杞憂でした。

実は、大阪店は、WithGreenの全店舗で売上がトップクラスなんです。いまも右肩上がりで伸びていて、駅という立地上、男性のお客さんが4割という伸びしろもあります。健康に対してきちんと投資する人は、東京に限らず一定数いることがはっきりとわかりました。

サラダボウルという概念がないエリアに、食文化としてゼロから根づかせていくのは大変だし、時間はかかります。

でも「地方1号店」として上陸しゼロから開拓するからこそ、そのジャンルでのパイオニアになれる可能性があります。お客さんがついてくれて、応援してもらえて、知名度もできてきて、売上も伸びていくのかなと思うんです。

地方こそ叶えやすいビジョン

東京と地方で感じる差は、スタッフたちのサービスでしょうか。

マニュアルにしているわけではないのに、地方の従業員の接客のほうが、温かくて丁寧だと感じる場面が多いんです。その鏡のように、お客さんたちからも、我々への親しみを感じます。繰り返し来店することを喜んでくださっている様子を見聞きするたび、嬉しくなりますね。

サラダボウルを通じて、農場と食べる人とをつなげ、1つのコミュニティにしたい。

創業時に描いたWithGreenのビジョンは、東京の外にある環境のほうが育みやすいのかもしれません。

地方出店は、今後も続きます。

2023年3月には、中部エリアで初となる名古屋の栄に出店したばかり。

中部エリア1号店となる『WithGreen 名古屋栄ラシック店』

一歩ずつですが、東京・神楽坂からはじまったWithGreenは、大阪、京都、そして名古屋と全国に広がってきました。店舗数が拡大してきたことで最近は、チェーン店と言われることもありますが、私たちが目指すのは、「多店舗展開はしているけれども、その地域の人に愛されるローカル店」です。

「私が大好きなサラダ専門店は、WithGreen! ほんとにおいしいし、サラダボウルだけでも十分満足できるから行ってみて!」

こんなふうに土地土地で言ってもらえるよう、私は今週も出店場所選びのために出張し、自転車やお散歩しながら、まちを巡りますよ(笑)。

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サラダボウル専門店 WithGreen/ウィズグリーン編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)

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