【詩】写真
私を語るには四枚の写真で十分だ
一枚目は赤子の私
母に抱かれ背景に水色のカーテン
私は母の瞳を天のように眺めている
神が彫刻を始める前の皮膚はふくよかで その乳白色は煌めいて
焦点の定まらない瞳は これから始まる時間を見て
指で空間に触れようとしている
声を出した瞬間 世界は形になった
二枚目は誕生日の私
少女は友達に囲まれながら 両親や祖父母の笑みを感じながら
綺麗なドレスにうっとりしながら
ケーキの蝋燭の束を吹き消そうと 赤い頬を膨らませている
まだ魔法を信じていて
墜落や挫折や怨恨や絶望や欺瞞を記憶に変える未来が来ることを知らない
純粋で 無垢で 活発で 自由な 心と手足
毒を知る前
ローソクを吹き消すと世界は希望のプレゼントで溢れた
三枚目は結婚式の私
世界を黄金分割する二人の男女
人生を走ってきた仲間と親族たちの視線の抱擁
愛 ラブ YOU
言葉が二人の間に流れる
空気よりも濃くて 地球より重たい そのセリフは人生の芝居ではなくて 本気な 純粋な 化粧されていない
誰よりも 何よりも 真実である異次元の存在
二人がキスをすると誰もが自分の過去と二人の未来を繋ぎ合わす拍手をした
四枚目はベッドの私
そばに立つ彼は微笑んでいる
私の手を握る彼の手は私と歩んだ時間を忘れないように 愛を確かめるようにしている
私は彼が写真から抜け出て 今の私のただ白い手を握るのを待っている
彼がもう一度私の中心まで温めてくれるのを信じている
私は待つことに慣れている
少女のように駄々を捏ねず 若い女のように夢みず
トランプのカードのように写っている彼を眺める
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