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[スイス 子連れ旅行記](3)フェルトキルヒ〜ファドゥーツ ( 「教育発想源」番外編)

「教育発想源」の番外編としてお届けしている「子連れ旅行記」。子どもと一緒に海外旅行に行った時に、どんな感じでやっているのかということをお伝えしていますが、好評の声をたくさんいただけて何よりです。

今回は今から約7年前の2017年、当時6歳だった長男と二人でスイスを車で一周した旅行の様子を「スイス 子連れ旅行記」としてお伝えしています。

「スイス子連れ旅行記」第1回はこちら
「スイス子連れ旅行記」第2回はこちら

チューリッヒから始まった「スイス子連れ旅行記」は、今回は第3回。スイス国外にもちょっと出てみますよ。それでは、どうぞー。


■[スイス 子連れ旅行記](3)フェルトキルヒ〜ファドゥーツ

●今回のスイス旅行メンバー(2017年9月当時)
 ・父(筆者)、6歳長男

前回、世界遺産の修道院のあるザンクト・ガレンに行った様子をお伝えしましたが、そこから40kmぐらい走ったところに、リヒテンシュタインという小国がありまして、6歳長男に「スイスの隣の別の国に行ってみたいか?」と聞くと、「行きたい!」と言うので、その首都ファドゥーツに次のホテルの予約をしてみました。

で、長男が地図を見ていて、「スイスとリヒテンシュタインの横にオーストリアっていう国があるけど、ここは寄れないの? 3ヶ国行ったことになるけど」と言い出します。

長男はイタリア旅行の時にバチカン市国やサンマリノ共和国なども行っていて着実に訪問国数を増やし、スイスで14ヶ国目だったので、それが16ヶ国に増やせるなら増やしたいと。確かにそれはそうだな!と思い、オーストリア最西の街フェルトキルヒにちょっと足を伸ばしてみることにしました。

気楽に思ってたら、問題が。スイスからオーストリアに入る国境の検問所で、警察に止められたんですね。パスポートと免許の提示を求められ、ちょっとこっちで待てと車を端に寄せて、20分か30分ぐらい待たされました。スイスはEUに加盟してないから厳しいのかな。

で、レンタカーを借りた証明はあるかとか(多分)聞かれて、ネット予約時の完了メールを見せたところ、「漢字とかいっぱいあってよく分からないから、通っていいや」(多分)と言われて、無事に通されることに。いやー、すっごく焦りました。

そして、フェルトキルヒ(Feldkirch)の街に無事に到着。スイスとリヒテンシュタインに接している、3万人ほどの街です。旧市街横のバスターミナルの中央に地下駐車場への入口があったので、そこに停めて旧市街地に行ってみることに(上記GoogleMap参照)。駐車場内に無料トイレもありました。

通称「猫の塔」

バスターミナルの前には、猫の塔(Katzenturm)と呼ばれる1500年ごろに建てられた塔があります。この街のシンボル的存在で、ここから旧市街地に入っていけます。

フェルトキルヒの旧市街地。

このあたりが、フェルトキルヒの旧市街地のメインストリート。人口3万人ほどの小さな街なので、非常にこぢんまりしていますが、中世的でとってもメルヘンな感じ。

ブティックやブーランジェリーなど、おしゃれな店が並んでいます。ちなみにオーストリアはユーロ加盟国なので、スイスと違って支払いは当然、スイスフランではなくユーロとなります。

冬には雪がたくさん降るからか、両側の建物の1階はアーケード型の通路になっていて、雪の降っていない今はパン屋さんやお花屋さんなどが露店を出していました。左のC&Aはヨーロッパでよく見るアパレルチェーンですが、長男はここで見つけた可愛らしい靴下セットを2歳の弟のために買っていました。スイスで買えよ!

この左側の建物は市民センターなのか、カルチャーセンターなどが入っていて、観光案内所もありました。旧市街地のイラストマップももらえます。

旧市街地はここまでなのかなと思って、ここから引き返したんですが、帰国してから地図を見ると、もう少し先に行ったらSchattenburg(シャッテンブルク)という名の古城が見えたんだそうです。行けばよかったー!

フェルトキルヒの裏路地もいろいろと歩いてみました。

噴水がワシの口になっているので、ワシになりきったつもりらしい。

15世紀に建てられたという聖ニコラウス大聖堂(Dom Sankt Nikolaus)の尖塔が見えています。

ただ長男が「訪問国数を増やしたいから」というだけで訪れたので、特に何をするということもなく、ぶらぶらと旧市街地を歩き回ったのですが、中世の雰囲気が色濃く残り楽しい街でした。

今度は、フェルトキルヒからリヒテンシュタインへと国境を越えます。先ほどのスイスからの国境越えのように止められるかとドキドキしていたら、特に何もなく普通に通過できました。

そして車は、リヒテンシュタイン公国の首都ファドゥーツ(Vaduz)へ。運転時間は30分程度のもので、距離も20kmほど。すぐに到着です。中心街に地下駐車場(Parkhaus Marktplatz)があったのでそこに停めました。下のGoogleMap参照。

スイス旅行なのに国境を越えてオーストリア、そしてリヒテンシュタイン公国と3ヶ国目となりました。たった1日で。

リヒテンシュタイン公国は、バチカン市国、モナコ公国、ナウル共和国、ツバル、サンマリノ共和国に次いで6番目に面積が小さな国。面積は160平方キロメートルなので、日本で言えば小豆島とか宮古島とかと同じぐらい。

ファドゥーツのメインストリート。多分。

地下駐車場を出ると、そこにはオシャレな街並みが広がっています。首都とはいえ非常にコンパクトな街で、空港も鉄道の駅もないので、基本的にはバスで来るのが一般的なようです。

崖の上にも建物が見えてるけど……

左のレリーフのある建物はリヒテンシュタイン州立銀行らしく、中央の白い壁の建物はリヒテンシュタイン国立博物館らしいのですが、その奥の崖の上に何か建物が見えていますね。よく見ると……

ファドゥーツ城です。「ヨーロッパ100名城」の一つにも選定されているお城で、ファドゥーツのシンボル的存在。ヨーロッパ屈指の資産家と言えるリヒテンシュタイン公の一家が今も居住中であり、今のところ内部の一般公開はされていません。バリバリ現役のお城なのです。

顔はめパネルがあるぞ

リヒテンシュタイン国立博物館。公国に関する歴史などがいろいろと展示されています。リヒテンシュタイン公になりきることができる顔はめパネルも設置されていますね。

観光のメインストリートとなっているシュテットレ(Stadtle)通りは歩行者専用の道路になっていて、博物館や観光案内所などもあり、またあちこちにアートな銅像やオブジェなども。この板のような門も、くぐると中が噴水になっているというアート作品。

政府官公庁舎と大聖堂

手前の3階建ての建物がリヒテンシュタインの政府庁舎で、奥の尖塔のある建物が聖フローリン大聖堂の呼び名のあるファドゥーツ大聖堂。

誰だこの胸像。

ファドゥーツ大聖堂の前にあるこの胸像は多分、ファドゥーツ出身の作曲家、ヨーゼフ・ガブリエル・ラインベルガー。特にオルガンソナタなどオルガン曲で有名な人です。

メイン通りから外れるとすぐに、のどかな景色に変わります。ライン川と繋がっている運河や水路なんかがあって、すごく静かです。

公園があって、6歳長男はここで現地のお子さんたちとブランコやらターザンロープやらで仲良く遊んでいました。背後の山の中腹に、ファドゥーツ城が見えていますね。

ファドゥーツ城の遠景。この時は曇りだったのに、この写真を撮っていた時だけ奇跡的に陽が差したのです。西の斜面に立っているので、夕方にはこのように陽に照らされた姿になります。西陽が暑くないのかな。

恐らくファドゥーツ唯一のおもちゃ屋さん。

街中におもちゃ屋さんがありました。ドイツ製やスイス製のものが多かったですが、かわいらしい玩具がたくさん。日本からのお客さんは珍しいからか、店主さんが優しかった。日本人だと明かすと「ショーギを知ってるか? 昨日も日本のショーギを取り寄せてくれっていう依頼があったんだよね」とか言ってました。6歳長男に光る石などいろいろプレゼントしてくれました。

6歳長男が3歳次男のために選んだパズルのおもちゃ。

ちなみにこのリヒテンシュタインの玩具屋さんで、6歳長男は当時3歳だった次男へのお土産でこの木製パズルを選びました。とてもかわいいし手触りもいい。このパズルのおもちゃはその後に生まれた三男にも受け継がれていったのでした。三男は正しい組み合わせを作るのが好きだったけど、次男は異なる組み合わせで新しい乗り物を作るのが好きだったですね。

あちこちに四輪バイクが置いてありました。ちなみにリヒテンシュタイン公国は『ルパン三世 カリオストロの城』の舞台であるカリオストロ公国のモデルの一つなんだそうです。全然そんな感じには見えないけど。

右に置いてある石は、さっき玩具屋さんでもらった光る石。

美味しそうなレストランがあったので、早めの夕食。日本の旅館と違い、海外のホテルでは夕食がついていないのが普通なので、ホテルに着くのが遅い場合は早いうちに食べておくこともよくあります。帰国後にネットで見たら、すごく評判が良く評価の高い国内上位ランクのお店でした。

ファドゥーツの街も次第に暗くなってきました。ファドゥーツ城もライトアップが始まってます。夕食も食べ終わったし、そろそろホテルに向かいます。予約をしていたホテルは、中心地から車で10分ぐらい走ったところにありました。

この日泊まったホテルの部屋。小ぢんまりしていますが、駐車場が広いという理由で選んだアパートメントタイプのホテル。ベランダからの風景も素敵なお部屋でした。海外の郊外のホテルは簡素でも周囲の環境がいいので好きです。

かわいらしいカップがいっぱい。

朝食はバイキングがついていましたが、このホテルはカトラリー類がかわいかった。このカップっぽいのは、ゆで卵を載せるためのものですね。

宿泊者用ノートに初の日本語を書き込む。

ホテルのロビーには宿泊客たちが自由に感想を書くノートが置かれてあって、6歳長男も覚えたてのひらがなで「ありがとう」とか自分の名前とかを書いていました。なかなか良いホテルだった。

昨日にホテルでもらった観光イラストマップで、ファドゥーツ城まで一般道があるらしいので、チェックアウト後に行ってみることに、市街地から徒歩で30分ほどで登れるそうですが、車ではくねくねと曲がって10分ほど。お城には一般車の侵入ができず、そこから150mほど上がったところに、30代ほど停められるフリーパーキングがありました。小さな公衆トイレもあります。

目の前に、ファドゥーツ城が。

駐車場から歩いて3分ほど下りると、見えてきましたファドゥーツ城。ちなみにここは西向きの斜面なので、向こうのスイス側は明るいのにこちら側はずっと日陰。それでも素敵な外観です。

ファドゥーツ城は「ヨーロッパ100名城」の一つに数えられてはいますが、「ヨーロッパ100名城」というのは「日本100名城」を選定した日本城郭団体が、何の権限があってか知らないけれども選定したものですので、日本では通じてもヨーロッパで通じるものではないので注意。

少し下に下りた場所からもかっこいい。長男もミラーレスで撮ってます。ちなみにファドゥーツ城を「リヒテンシュタイン城」と間違って呼ぶ人がいますが、リヒテンシュタイン城というのはドイツに実在する別のお城ですから注意。ドイツのリヒテンシュタイン城だったドイツ人貴族がリヒテンシュタイン家で、それがここに移って独立国となったということです。

ここからのアングルが一番かっこよく写るなー。

ここのカーブからのアングルが、私の一番のお気に入り。これ陽が差してたらもっとかっこいいだろうなー。

長男のお気に入りアングル。スイスも見えてます。

長男はここからのアングルが一番良かったと言ってました。ジョギングなんかをしている人もいて、気持ちのいい場所。奥に見えているのは国境のライン川の向こうなので、スイスの山ですよ。

ちなみに、リヒテンシュタイン公国といえば、クイズマニアには頻出の「二重内陸国」としてお馴染み。内陸国とは海のない国ですが、二重内陸国とは何かというと、海岸線に出るには国境を2度超える必要があるという国。この二重内陸国は世界でウズベキスタンとリヒテンシュタイン公国しかないのです。

さあ、次の目的地へ出発だ!

ということで、早朝にファドゥーツ城を堪能してからは、ライン側を西へと渡ってスイスへと再入国。そして高速道路13号線に乗って、次はスイス南東部へと走っていきますよ。


*       *

さて今回の話で、スイス一国を回る旅行のつもりが、オーストリアのフェルトキルヒ、リヒテンシュタイン公国のファドゥーツに寄ったことで、一気に3ヶ国行ったことになりました。

長男はこの「国境を跨いで訪問国数を稼ぐ」ということが面白くなったようで、次の年には世界地図を眺めながら「こう回ったら6ヶ国一気に行けるんじゃない?」という場所をヨーロッパ中央部から探し出したんですね。

で、実際に行ってみようということで、翌年にウィーン空港からオーストリア→チェコ→スロバキア→ハンガリー→クロアチア→スロベニアと6ヶ国を巡ってウィーンに戻ってくる、というレンタカー旅行をやったんです。

でも長男は前年にフェルトキルヒに行っているから「しまったっ、オーストリアはもう行ったんだったっ」と悔しがっていましたが、この時に生まれて初めて海外旅行をした三男は、0歳にして6ヶ国を訪問したことに。

ヨーロッパは一つ一つの国が小さいし、EU加盟国は自由に国境をまたげるので、ヨーロッパ旅行をする時にはぜひ「国境を越えてみる」というのを経験してほしいなと思います。

パリに旅行するとしたら、「フランスだから、マルセイユと、ニースと……」などと同じ国内で完結して考える人が多いのですが、パリからなら、マルセイユに行くよりも、イギリスのロンドンやベルギーのブリュッセルなんかに行くほうが圧倒的に近い。

イタリア旅行に行って東のベネチアに行くならば、もう少し東に足を伸ばしてスロベニアなどにも行ったほうがいい。

個人的に良かった国境越えは、デンマークの首都コペンハーゲンに行った時に、スウェーデンのマルメに渡ったことですね。高速列車で30分ぐらいで隣国に行けるのですから、手軽でいいです。マルメでは北欧デザインのキャリーバッグやコーヒーカップなどいろいろお気に入りのものに出会えたんですよ。

そうやって訪問国数が増えると、「自分に関わった国」が増えるわけですから、それだけで一気に興味の幅が広がります。特にお子さんを連れている場合は、関わった国が多くなるといろんな知識を一気に吸収しようとしてくれるはずです。


ということで、「スイス子連れ旅行記」、好評のようでしたら、第4回へと続きます。

※今回の内容を読まれて一つでも面白い情報が見つけられた方は、よろしければ下の☆(スキ)をチェックして頂けると嬉しいです。


「スイス子連れ旅行記」、第4回はこちらからどうぞ!

第4回「ラントヴァッサー橋梁〜サン・ベルナルディーノ」


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