見出し画像

⭐️WIMednesday Interview⭐️    #10 : Yuko Yamamura

Women In Music Japanが音楽業界で活躍する女性を紹介する
⭐️ウィメンズデイ⭐️

第10回は、ホルンでジャズを演奏するという珍しい取り組みをされている山村優子さんです。ボストン、ニューヨークを経て、現在日本で活躍中です。

—-—-—-—-—-—-—-—-—-—

山村優子(やまむら・ゆうこ)
ジャズ・フレンチホルン奏者/作曲・編曲家。兵庫県生まれ。
2004年バークリー音楽大学への入学を機に渡米、卒業後NYを拠点に活動を展開。2015年よりビッフェ・クラムポン・グループ、公式ハンスホイヤー・アーティスト。2014年アメリカン・ソングライティングアワード・ジャズ部門最優秀賞受賞。2012年ジョン・レノン・ソングライティング・コンテスト・ジャズ部門最優秀賞受賞。その他、作曲/ソングライティングのコンテストで受賞多数。

ジャズだけに関わらず、和太鼓とホルンによるデュオ「Ajarria(アジャーリア)」としても活動。2011年ニューヨークで結成。同年マンハッタンで開催された 第9回ジャパン、アート・マツリのタレントナイトにて最優秀賞受賞。 結成以来、各種コンサート、ライブでの演奏に加え、那智大社(和歌山県)、薬師寺(奈良県)等神社仏閣での演奏、米国ニューヨークでのライブ活動、 スペイン、バルセロナの世界遺産サン・パウ病院内カサ・アジアでの単独コンサートなど、 国内外での演奏活動多数。

—-—-—-—-—-—-—-—-—-—

1. あなたにとっての成功とはどういう意味ですか?

成功の定義って難しいと思うのですが、振り返ってみると自分にとって成功とは、小さな目標の達成を積み重ねた先にあるものな気がします。例えば趣味で山に登るのですが、毎日コツコツと筋トレをすることで、 高い山に登るのが前ほど辛くなくなったり、前よりも高い山に登れるようになったり、そんな感じでしょう か。

---

2. あなたと同じように音楽業界で働きたいと考えている女性に対してどんなアドバイスがありますか?3つ教えてください。

・ 女性はどちらかというと男性よりも身体的な力が弱かったり、どうしても身体のサイクルで体調が乱れ てしまったりして、十分に実力を発揮できない場合もあったりするかもしれません。身体的な男女の違いに 直面した時には、無理に強く見せる必要は決してないと思うので、自分なりの「良い状態」を見つけて、女性であることを意識しすぎずにのびのびと活動してほしいと思います。例えば私の場合は、演奏には体力や筋力を使うのですが、私は身体もそれほど大きくないし、欧米人に比べて小柄な体型なので絶対的なパワー が足りないなと感じる機会が沢山ありました。筋力を補う為に日々筋トレもしているのですが、それ以外に、じゃあ何が自分の強みになるのかな?と考えてきました。それから、身体のサイクルによって体調がベ ストでない時には、身体に負担をかけず、どうすればいい状態に持っていけるのか、自分の身体と向き合ういいきっかけになりました。私は身体のサイクルの状態で、いつもよりもお腹に力が入らなくなってしま い、高音が出にくくなったり、音が抜けにくくなり、音色がくぐもってしまいがちなってしまうので、スポー ツ用の骨盤サポーターをつけて演奏してします(自然な身体の変化に、なるべく負担をかけたくないので本 番や大事なリハーサル限定ですが)。長年試行錯誤をしながら見つけた、自分なりの解決方法です。

・プライベートにおいて、結婚、出産など男性とは異なる意味を持ち得るライフイベントはたくさんあると思います。正直、今現在自分自身も直面しているのですが、そういう出来事が目の前に現れた時には、怖がらずに軽やかに乗っかってみる気持ちが大切だと感じています。自分を取り巻く環境や状況の変化に軽やかに対応できたり、それまで積み重ねてきたものを違う視点で見つめたり適応させていくのは女性の方が上手ではないかなと思います。自分と同じような状況の女性の皆さんには、「変化する勇気」を持って下さいと伝えたいです。

・質問と逸れる答えになるかもしれませんが、私はこれまで、勘や直感を信じて様々な決断をしてきました。信じる努力をしてきたと言う方が正しいかも知れません。そして、その決断をする事で何か変化が生じても「きっと大丈夫!」と思えるだけの実績を積めるようもちろん努力もしてきたし、たとえ結果が残せていなくても、自分が努力してきた事を自覚できるように、意識して「何に自分は頑張ったのか」をメモする習慣をつけていました。そうする事で、決断をする勇気を絞り出してきました。どんな時も決めるのは自分。どうすれば自分は自分の決断に納得できるのかを考えるのはいい事だと思います。そして、もし何かに悩んだらとことん悩んだ方がいい。納得できるまでは動かないことも大切だと思います。

---

3. 仕事やプライベートでのどのような経験が今の成功に結びついていると思いますか?

・私は音大受験を控えた10代の頃に阪神大震災で被災したこともあり、学生時代はもちろん、卒業後バークリー音楽院への留学のための単身渡米も含め、親の援助が一切受けられませんでした。そのことが、自分の目標に手を伸ばしたいならチャンスは自分で掴まないといけない、必要なお金などは奨学金を取ったりアルバイトをして自ら作らねばという意識を持つことに繋がりました。

・公私共にたくさんの出会いを経験し、それによって様々な広がりを得られたことから、人との出会いを大事にしようと思うようになりました。どんな活動も一人ではできないので、出会ってくれた人を大事にし、誠実であることを大切にしてきました。それによって自分のことを応援してくれる人を持てたことが、(今の自分が果たして成功しているかどうかは分からないけれども)今に繋がっていると思います。

---

4. あなたが経験した中でも大変だった事を教えてください。

ジャズの歴史の中でも今まで存在していなかったフロントプレイヤーとしてのホルンでのジャズを世の中に知ってもらうこと、そういう演奏ができる居場所を作ることが、演奏活動を始めたばかりの日本でも、そして渡米後のアメリカでもとても大変でした。バークリーにも前例がなく、学内で開いたコンサートでも 「ジャズホルンでコンサートを開いた学生は君が初めてだよ」と言われるほどでした。アンサンブルの授業で配られる楽譜も、学期末や中間に行われる試験の楽譜もホルン用のin F(ホルンはin Fの楽器なのです) のものはありませんでした。それでも、ホルンにしか演奏できない、ホルンらしいジャズをやりたかったか ので、自分自身でホルンのためのジャズの曲を作曲するようになりました。また、音楽家がひしめき合うニューヨークでも、ホルンでジャズはとても珍しく、既存のバンド編成にも基本的には含まれないので、どうやって演奏機会を得たら良いのか分からなかったし、オーディションも楽器の枠自体がなかったので参加できず、こんなに音楽に対して懐の深いニューヨークですらジャズホルンは入り込む場所はないのかとひどく落ち込んだりもして、どうすれば良いのか途方にくれていました。そんな中で、まずは自分のことを知ってもらい、演奏する機会を得られるよう努力をしました。これはとても大変なことだったのですが、本当に私を成長させてくれた事でもあります。

---

5. その経験で得た一番の学びは何ですか?

ジャズにおけるホルンの特性や強み、面白さについて深く考えられたことです。やりたいと思う気持ちだけじゃなくて、客観的にジャズホルンが持つ魅力、ホルンだからできるジャズとは何かを分析できました。 そこから導き出されたものを大事にしながら、既存のものに頼るのではなく、ないなら作ればいいというフロンティアスピリットと、やりたいことはどうやったら実現できるかを考える視点を持って歩んできました。

---

6. あなたが今住んでいる地域で音楽に携わる女性達が直面している一番の課題は何だと思いますか?

広く日本において言えることですが、例えばかわいいとか美人であるとか、容姿でその人の評価が変わるという事でしょうか。もちろん、人前に立つので「見て」頂くこともとても大事だと思うし、自分を表現する手段としてとても意味のあることだと思うのですが、例えば女性の音楽家であるというだけで一定のカテゴ リーに振り分けられてしまうことがあるのではと感じています。見た目や性別などのカテゴリーを気にせずに、もっと自由な視点で本人も周囲も関われる、そういった多様性が浸透していくことが必要だと思います。

---

7. 誰からインスピレーションを受けますか?その理由は何ですか?

沢山いて書ききれないほどなのですが、音楽家であれば、一番に思い浮かぶのはザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 ホルン奏者で恩師の伏見浩子氏。私が大阪音楽大学で学んでいたときからの恩師に当たりますが、女性としても音楽家としても強くしなやかで、いつも毅然と振る舞われる姿勢や、家庭を大事に(もうお子さんは成人されていますが)子供を育てながらも第一線の演奏家として活動し続けられているところにとても尊敬を しています。そのほか、ジャズホルン奏者のパイオニア、ジュリアス・ワトキンス氏や、多くのジャズミュー ジシャン、音楽仲間からもインスピレーションを与えてもらっています。音楽家以外だと、今は母でしょうか。「今は、、、」というのも、正直こんな風に思えるのはここ数年のことだからなのですが、想像力って結局のところ、そもそもの「生きる力」みたいなものなのではないかと思うんです。私は阪神淡路大震災で被災経験をしているのですが、それに加えて色々な家族の問題なども乗り越えてきた母の強さにとても感銘を受けています。今、自分が音楽で何を表現したいのかを深く掘り下げていくと、この「生きる逞しさ」なのだと思います。それを一番間近で見せてくれていると思います。
ジャンルや直接お会いした事があるなしに問わず、何かに対して真剣に向かい合っている方の言葉や振る舞いにインスパイアされます。自分が悩んだ時や落ち込んだ時に、「この人だったらどうするだろう?」と考えて、参考にさせて頂いています。

---

8. 来年の目標は?

結婚、帰国などを経て少しペースダウンをしていた数年間を経て、今まさに演奏活動を再び本格始動させだしたところです。具体的には自身のコンボでの演奏活動を充実させたいと思っていますし、参加させて頂いているバンドでも、自分自身がもっと成長したいと思っています。また、ずっと構想を練っていた金管楽器主体の中型編成のバンドを立ち上げようと思っているので、それらを来年は軌道に乗せたいと思っています。さらに作曲家として大事にしている音楽理論を、誰がどこにいても受けられるオンラインレッスンという形で指導する活動もしているので、それをもっと充実させたいです。

---

9. WIMJapanの活動に興味はありますか?

Women In Musicの幹部で、友人である藤岡愛音さんからの紹介で知り興味を持ちました。以前から様々なライフイベントや体調管理などを通して、女性がアーティストとして活動するための指針になる何かがあれば良いと思ってきました。自分だけでなく、他の沢山の女性の皆さんの経験や情報を共有できるコミニュティとして、とても興味がありました。

---

10. あなたの最終目標とその為の次のステップを教えてください。

目標に「最終」はないと思いますが、目の前にある小さなステップを一つずつ上っていった先に大きな成果があると考えています。できるならば、自分がいなくなってからも残る音楽を作りたいです。そして、一番身近にいてくれる人たちが温かい気持ちになれる生き方をしたいですね。そのためには、毎日おいしいご飯を食べ、友人を大事にし、家族を大切にすること、美しいもの、嬉しいこと、悲しいことをしっかりと味わうことを大事にしたいと考えています。

#womeninmusicjapan #womeninmusic #wimjapan
#femalemusicians #musicbusiness #musicindustry #働く女性 #キャリアウーマン #女性の働き方 #音楽業界 #音楽ビジネス #女性ミュージシャン #パラレルワーカー #フリーランス
Women In Music Japan FB
Women In Music Japan Instagram
Women In Music (本部)ウェブサイト (英語)
Women In Music (本部)ブログ(英語)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?