見出し画像

⭐️WIMednesday Interview⭐️    #12 : Tomoko Omura

Women In Music Japanが音楽業界で活躍する女性を紹介する
⭐️ウィメンズデイ⭐️

第12回はNYでジャズバイオリニストとして活動されている大村朋子さん。とても真摯にアーティストとしてのご自分に向き合っていらっしゃる姿勢が眩しく、素敵な方です。

—-—-—-—-—-—-—-—-—-—

大村朋子(おおむら・ともこ)
静岡生まれ。NY在住ジャズバイオリニスト、作曲家。
横浜国立大学のジャズ研究会でジャズを始める。2004年に渡米。バークリー音楽院卒業後、フォーク音楽のバンドに所属して演奏活動をする傍ら、自主制作のアルバム『Visions』を発表。その後、2010年よりニューヨーク・ブルックリンに拠点を移す。その後、自身のアルバムを2枚−『Roots』(2015)『Post Bop Gypsies』(2017)、インナー・サークル・ミュージックレーベルからリリース。米雑誌『ダウンビート』では2015年より5年連続、Rising Starヴァイオリニストとして選ばれている。ニューヨークで自身の音楽活動の傍ら様々なアーティストと共演。または録音では、ファビアン・アルマザン(Fabian Alamzan)の『Rhizome』(Blue Note/Artist Share)やカミラ・メザ(Camila Meza)の『Amber』(Sony Masterworks)をはじめ様々なアーティストのアルバムに参加。
現在、自身の4枚目のアルバム制作に取り組んでいる。

オフィシャルサイト: www.tomokoomura.com

—-—-—-—-—-—-—-—-—-—

1. あなたにとっての成功とはどういう意味ですか?

自分の音楽を妥協なくできる状況にいられること。

---

2. あなたと同じように音楽業界で働きたいと考えている女性に対してどんなアドバイスがありますか?3つ教えてください。

私がまず一番大切だな、と思うのは、決断力です。自由業なので、毎日24時間、すべてが自分の決断にかかっています。自分が本当に何をやりたいか、今すべきことはなにか、と判断して実行するのは自分にかかっています。仕事を引き受ける時も、本当にやりたい仕事なのか、実際どれぐらいの時間が必要とされて実行可能かどうかや、もし、教えている方であれば、レッスンと演奏の仕事のバランスをどうしたいか、1日の練習の時間を確保するためにできること、できないこと等、すべて自分で決めないといけないので、決断力は本当に大切だと思います。

二つ目は、自分を好きになる努力、好きでいられる努力を続けることです。アーティストという仕事は、常に精神的にアップダウンがあり、ものすごい賞賛を頂くこともあれば、周りから思わぬような辛辣な批判を受けることもあります。そして、向上心から自分の尊敬するアーティストと自分を比べてしまって自己嫌悪に陥ったり、曲が書けない、思うような演奏ができないスランプの時期が来たりいろいろです。私自身、自分が好きになれない時期が続いたことがあって、本当に辛かったのですが、ある日、『自分を好きになる』ことを否定的に捉えていた自分に気が付いて、『好きになる』ことはポジティヴなことで、精神的にも絶対必要なことなのだと確信して以来、自分を好きになる努力をしています。この努力というのは、何か実際行動に移して自分を向上して自信を得ようとするのではなく、ありのままの自分を受け入れられるように心の中で努力するという意味です。
どんなに辛いことがあっても、自分に『Yes』と言ってあげられる強さを持っていたいです。

三つ目は、包容力はやはり必要だと思います。ハプニングがつきものの業界なので完璧に物事が進まないことの方が多いです。それから、本当にいろいろな人と関わっていく仕事なので、意見が違うこともあるし、うまくいかない時にギスギスしたり、ピリピリしていると嫌なムードを撒き散らしてしまうし、スムーズに物事が進みません。そして、音楽を一緒にやっていく上で気持ちよく仕事をすることは大切だと思います。妥協とは別の話ですが、キャパシティーは大きめに構えて、常にいいムード(Vibe)を出していると、いい音楽活動ができると思います。

---

3. 仕事やプライベートでのどのような経験が今の成功に結びついていると思いますか?

目の前にあるプロジェクトをまずは妥協しないでやり通すこと。私の場合、それが結局、次の出会いや仕事のきっかけにどんどん繋がっていきました。そして、仕事では、時間を守る、約束を守る、メールや電話の応答もなるべく素早く、簡潔で明確な返答をできるように工夫しています。そういう基本的なことをちゃんとできるように気をつけています。ミュージシャンは、会社で注意してくれる上司が居るわけでもなく、そういうところがルーズになりやすく人に注意されることも少ないけれど、私はバンドリーダーやそういったグループを仕切る側に立った経験から、安心して仕事を頼んでもらえるという点はとても大事だなと痛感したので、自分でも気をつけるようにしています。

それから、信頼できる人を見つけること。アーティストは孤独であることが多いので、信頼できる人間関係を保つのは精神的な面でとても大切だと思います。そしてそういう関係を育むには時間がかかります。でも絶対必要だと思います。

そして、他のプロジェクトに参加したり忙しい毎日を送っていても、自分の音楽はしっかり続けることにしています。自分のプロジェクトには締め切りもないし、誰にも強制されることはありません。毎日やることもたくさんあるし、サイドミュージシャンとしてでも十分忙しく過ごしています。でも、私はやっぱり自分の音楽をしていないと、アーティストとしてアイデンティティーを失いそうになったり、精神的に不安定になります。そういう自分を知っているから、何が何でも続けます。そして、自分の音楽を通じて、いろいろな人たちに声をかけて頂いて、様々なプロジェクトに参加したり、他の仕事に繋がることが多いので、そういう意味でも一番重要な作業だと言えます。

---

4. あなたが経験した中でも大変だった事を教えてください。

バークリー音楽院卒業後は本当にお金がなくて、月300ドルのリビングルームに住んでいたこともありました。ネズミは出るし、治安も悪く、冬はヒーターがなく大変でした。卒業後すぐ参加した民族音楽のバンドの活動のかたわら、日々自転車で寿司屋まで行ってバイトをしたり、ボストン在住の(とても素敵な)日本人一家の(掃除、洗濯、夕飯の支度をする)家政婦のような仕事をしたりして、自分のアルバム制作費やビザ費用を貯めていました。しばらくの間、極度の貧乏生活でした。そして、ニューヨークに引っ越した一年目は、実はニューヨークからすぐ近くのニュージャージーのジャージーシティーに1年住んだのですが、その時も本当にお金がなくて、仕事もなく、友人もニューヨークではまだほとんど居なくてとても寂しい思いをしました。今思えば、人生の中で一番大変だった時期だと思います。

---

5. その経験で得た一番の学びは何ですか?

そんな時の心の支えになってくれた友人達にとても感謝しています。そして、乗り越えられたことで自分の強さを実感できたし、その後、何か辛いことがあってもその時のことを思い出して勇気をもらいます。

---

6. あなたが今住んでいる地域で音楽に携わる女性達が直面している一番の課題は何だと思いますか?

私が日本にいた時は、女性への差別を大きく感じていました。学生時代、ジャズの生演奏をするバーで働いていたのですが、男性のお客さんにひどい扱いをされたりすることもありました。そういうのが当たり前という感じだったので、若くてナイーヴだったその時の自分はどうやって対処していいかわからず泣き寝入りでした。そして、女性は女性らしくという世間の風潮は強く、またその女性像がか弱いイメージで、私としてはとても窮屈に感じていたし、この世界でどうやって自分の身を振ったらいいのかわからないと思うこともありました。その風潮に順応できていた周りの女性は物事がスムーズに進んでいたし、こういう風潮を『問題』と捉えるような感覚は世の中であまり感じられなかったです。実際あれから十数年経った今でもこうした考え方は根強く存在していると思います。そういう意味で、日本では行き詰まりのような経験をしました。

ニューヨークの音楽業界では、性差別という面では日本よりはるかに進んでいるのではないかなと思います。もちろん、以前にはたくさん問題があったと聞きますし、女性だとジャズバンドには入れていもらえない時代もありました。最近では、特に音楽業界だけでなく#MeTooムーヴメントで叫ばれていますが、ジャズの業界でも女性のサポート団体も立ち上がっていますし、女性ミュージシャンの中でも、不平等な場合やセクシュアルハラスメントにあった場合、ちゃんと立ち上がって『Speak Up』する人が多く、全体的に意識が高いと思います。ちゃんと立ち上がれる強さがあるのは、やはり日本人としては大いに見習いたいなと思います。

私が思うのは、『差別』は性に関わらずいろいろな場面に複雑に絡んでいて、私たちの無意識なところでひっそりと存在したりします。一人の女性が思い描く『男女平等』がその他大勢の女性の意見と全く同じだということもないし、女性が男性全体を非難する場合、それはそれで男性に対しての『差別』とも言えます。女性だけが雇われる音楽の仕事は実はたくさん存在します。それも差別だと見なして改善すべきでしょうか。そして、性別以外でも人種問題などいろいろなファクターが混ざっていて、どこまでを性差別と見たらよいか判断しずらいことが多々あります。そういう面で、とても難しいトピックだと思います。

ただ、明らかに差別や侮辱を受けた場合は、恐れずにはっきりと立ち向かえる強さは絶対必要だと思います。

---

7. 誰からインスピレーションを受けますか?その理由は何ですか?

岡本太郎さんが好きです。ずっと前に『自分の中に毒を持て』という本を読んでものすごく感銘しました。アーティストとしての根本的な心構えのようなものを教えてもらいました。素晴らしい本です。

---

8. 来年の目標は?

新しいアルバムを今作っているので、そのリリースなどで忙しくなる予定です。あとは、新しい作品のアイデアがいくつかあるので、それに時間をかけて実現させたいです。

---

9. あなたの最終目標とその為の次のステップを教えてください。

自分の音楽作品を作り続けること。
その為に、音楽にかける時間を確保できるための日々のルーティーンを大切に、たくさんいい音楽を聴き、本を読み、身体づくりをしつつ、家族と友人を大切にし、自分の心にゆとりのある生活をしたいです。ストレスがあると良いアイデアが浮かびにくくなるので、心のケアも忘れずにしたいと思います。


#womeninmusicjapan #womeninmusic #wimjapan
#femalemusicians #musicbusiness #musicindustry #働く女性 #キャリアウーマン #女性の働き方 #音楽業界 #音楽ビジネス #女性ミュージシャン #パラレルワーカー #フリーランス
Women In Music Japan FB
Women In Music Japan Instagram
Women In Music (本部)ウェブサイト (英語)
Women In Music (本部)ブログ(英語)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?