⭐️WIMednesday Interview⭐️ #1 : Hinako Sato
⭐️ウィメンズデイ⭐️
第1回はWIM Japan代表の佐藤比奈子さんのインタビューです。
音楽だけに止まらない彼女の活動とそれに対する行動力はとても参考になると思います。
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★佐藤比奈子(さとう・ひなこ)★
Biography
山形県鶴岡市出身、米ボストン在住14年、現在はニューヨークと2拠点で活動。
米NPO「Women In Music」ボストン支部・日本支部代表。ピアノ、キーボード、アコーディオンなどを弾きこなす鍵盤楽器奏者、教育者。
8歳から「小さなジャズピアニスト」として日常的にステージに立つ。奨学金を受けて米バークリー音楽大学に留学。在学中はピアノ演奏と美術史に加え音楽ビジネス経営を学び卒業。
これまでにカーネギーホールやケネディーセンター、ブルーノート・ニューヨークやギリシャアテネのヘロディス・アッティコス音楽堂などで演奏。これまでにWomen of the WorldやMario Frangoulis, Zili Misik等と主に活動してきている。他にも、Amal Murukus, National Arab Orchestra, Greek National Orchestra, Angelique Kidjoなど多数アーティストと共演。
現在は、芸術を通して考える力を養う独自教育カリキュラム”Artful Mind Project(AMP)” の共同開発を行ったり、日本の学生達向けのボストン研修プログラムのコンサルやメンタリング等のサービスを展開する傍ら、世界各国の伝統音楽研究などに力を入れている。
グローカルなコミュニティーリーダーとしての活動にも熱心で、近年ではボストンの自宅で異業種社会人と学生を結ぶコニュニティ「Winship House」をつくり様々なトークやイベントを開催したり、ボストン在住の異業種日本人女性をつなぐコミュニティ「ボストン女子会」共同発起人として月例会を企画している。
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1. あなたにとっての成功の定義とは何ですか?
自分なりの幸せを叶えられるスキルと健康な心身と、自分を最大限に評価してくれる環境がある事。その為にも、自分自身をよく知っている事、だと思います。言い換えれば、適材適所が叶っているかどうか、だと思います。
私にとっては、グローバルな環境で可能な限り自由に学び生きられる環境が一番大事で。
そのために、10代の頃から楽器演奏能力や初見・読譜力などのハードスキル、語学力や異文化でのコミュニケーション能力、歴史や国際情勢知識なども含めた様々なスキルをコツコツと開拓し、実社会で実践できる場を常々探し、なければ機会をつくる、という行動を日々繰り返してきました。
大学時代からボストンの様に「思考・選択・表現の自由」が比較的ある環境に身を置きながら上記を実践し続けていることで、今のマルチフリーランス的生き方を実現できているのだと思います。
2. あなたと同じように音楽業界で働きたいと考えている女性に対してどんなアドバイスがありますか?
少しでも興味をそそられたりする事があればまずは自分から動いて体験してみる、経験してみる、学んでみる。面白そうな人がいれば直接会いに行ってみる。これ、おすすめします。
フットワークの軽さと直感に従う柔軟さ、行動力はどの業界においても大事だと思います。
特にフリーランスは顔を広くしておくことは必要不可欠ですし、まずは自分の存在を知ってもらう為にも日頃から色々な所に積極的に出向く事は大切だと思います。
新たな仕事現場の開拓機会にもなりますしインスピレーションを受けられるので、異業種交流イベントなどもおすすめです。
音楽業界と言っても実に多種多様です。
日本だけに絞らず、世界の音楽事情に興味を持って日頃からアンテナを貼って情報収集をしながら動いていると、思わぬ所や形で仕事に繋がったりします。
3. 仕事やプライベートでのどのような経験が今の成功に結びついていると思いますか?
実家がライブハウス兼喫茶店を経営している関係で、子供の頃からイベント企画や運営に関わっていたことは今の生き方、特にコミュニティーリーダー的な存在において役立っていると思います。自営業の親族が多いため、フリーランスとして生きる事に抵抗がなく、むしろ自分でキャリアを創造することが自然だと感じられる環境で育った事が今のライフスタイルに直結していると感じます。
同時に、祖父母は日本の伝統芸能やまちづくり事業などに通じていたため、田舎に住んでいてリソースが限られていながらも早くから日本そして世界の伝統文化や芸能、歴史などに対して敏感かつオープンに育った事は大いにプラスだったと思っています。
最初の質問ともつながりますが、自分なりの幸せや成功の定義を見極めるには、それを見つけられるだけの実体験が伴うことが大切だと思っていて。
そういった意味では、全ての経験は今の自分なりのライフスタイルを作っていますし、経験の幅が広い事はアーティストとしても共感力や想像力を広げる為には役立っていると思います。
4. あなたが経験した中でも大変だった事を教えてください。
これをインタビューなどで公表することに対しては多少躊躇するのですが、もしも誰かの為になるのなら、という思いで正直に書いてみます。
私の父親は、優れたミュージシャンでありながら昔から気性が荒く、コミュニケーション能力が偏った人で。子供の頃から耳が良かった私に着目して、「この子は一流のミュージシャンになれる」と、アスリートの親などにも見られるような過度の期待を抱いたのだと思います。それが歪んだ形で表面化して、想像を絶するスパルタ教育を強要され、結果的には約10年にも及ぶ身体的虐待と精神的虐待を受けることになりました。
8歳からステージに立って大人達と日々演奏をして、早くからキャリアスタートさせていたため表向きには何かと注目されていたのですが、家の中では日々戦場にいるような感覚だったな、と。
自分の意見や趣味嗜好を持つこと、アイデンティティーを持つことに対して真っ向から否定され貶されて長年育つと、大人になってもその影響が当然あちらこちらに出てきます。
自分なりのアイデンティティーを持つ事を許されない10代を過ごした人間、という意味で、親元を離れてからの私の20代は、いわゆる「自分とは何かを0から見つける」時代でもありました。変わった環境で育った為にひどく世間知らずで常識もあまり無く、20代半ばまでは人間関係でも沢山失敗して苦労しました。人よりもきっと遠回りしている事も沢山あると思います。
英語で「Imposter Syndrome」インポスター症候群と呼ばれるような感覚(自分の達成を内面的に肯定できず、自分は詐欺師であると感じる傾向であり、一般的には、社会的に成功した人たちの中に多く見られるとされる)は、正直常日頃付きまとっていて、自分とは何か、という確信が持てないとより深く感じるのではないかと思います。
海外に出て、旅もして、留学もして、多種多様な人間と人一倍関わって、いろんな職務体験もして、いろんな経験を積みに積んで失敗も人一倍して、メンターとなってくれる素晴らしい方々や沢山の方々のサポートがあり。この繰り返しの中で、沢山のキャリアの成功もあり、30代になってようやく全てに対して芯が出来た感じです。
5. その経験で得た一番の学びは何ですか?
月並みかもしれませんが、希望を持ち続けることはすごく大事だと思っています。
私にとっては、選択肢が多い事・可能性が沢山あること=希望を持つ事と直結しているんだ、という気づきも大切だったと思います。歳を重ねてもこの部分は日々念頭に置いています。
選択肢を広げるという事は、つまりは日々変化し続け、学び続ける事、だと思っています。
6. あなたが今住んでいる地域で音楽に携わる女性達が直面している一番の課題は何だと思いますか?
ボストンに住んでいますが日本支部向けに日本国内の話をすると、
多様な生き方働き方がようやく叫ばれる風潮が出てきてはいますが、そうはいっても日本(特に地方)では実際に会ったり出来る女性ロールモデルが少なく、音楽業界ではなおさら少ないように思います。
自分一人では思いつきもしなかったキャリアの道や可能性、実際のノウハウなどを見せてくれるような存在が一人でもいる事、自分のままで良いんだといってくれる存在、自分にも出来ると思わせてくれる存在。そういう人に一人でも多く出会える場所を作る事は、沢山の女性の力になるだろうと思っており、日本支部立ち上げにはこういった思いも背景にあります。
7. 誰からインスピレーションを受けますか?その理由は何ですか?
インスピレーションを受ける人は幸運にも身の回りに沢山いるのですが、中でも特に自分で道を切り開いてきた女性達には業種問わず感銘を受けますし、自由に自分を表現出来ている人、そして世の中に様々な形で積極的に貢献している女性達をみると心から感銘を受けます。あと、既存のラベルや思想にとらわれず自らの定義で柔軟に生きている人には深く感銘することが多いです。
8. 来年の目標は?
数年以内にジェンダー学または民族音楽学専攻で大学院進学(場所はニューヨーク希望)したいと考えていて、現在準備中です。
音楽においては昨年から重点的に探究を始めたバルカン音楽やトルコの古典音楽、中東音楽などについて、演奏そして学術的観点から更に理解を深めたいと思っています。あとは、これまでの人生で一度も挑戦したことがない、「自分のオリジナル作品(音楽)を作りリリースする」という目標も今年は掲げてみたいです。
ジェンダー学については、日本の音楽業界における女性達の生き方働き方についての調査を行い、統計・データとして発表し、出版したいです。そのために、WIMネットワークも積極的に活かして皆で協力して実現させたいと思います。
WIM Japanとしては、今年はまず活動を基盤にのせ、国内での認知度を上げ、プラットフォームとして本格的に動かしていけるようにしたいので、今本部と連携しながらコツコツと準備をしています。まずは(日本語ネットワーク内の)音楽業界における女性ロールモデルと直接繋がれるネットワーキングやショーケース、パネルなどのイベントを数回企画実現することから始めたいと思っています。
9. どうしてWomen In Musicの活動に関わる事になったのですか?あなたの最終目標とその為の次のステップを教えてください。
バークリー卒の同期Jobeth Umaliから誘いがかかり、イベント役員としてボストン支部に入ったのが3年前。
昔から女性音楽グループなどとしょっちゅう演奏していたり、女性エンパワメントがテーマの教育プログラムでメンターやコーディネーターを務めたりしていて、女性のキャリア支援などに何かと縁があったので、自然な流れだったと思います。
今後、少なくとも先5年はアメリカ東海岸を拠点に演奏活動や研究活動を続けながら、コミュニティーリーダー・アクティビストとしての活動も日本とアメリカ両方で続けて、特にグローバルに生きたい・働きたい日本人女性達、次世代を担う学生達、更には地方に住む人々が今よりももっと多様な選択肢が持てる社会を実現できる様、微力ながら貢献していければ良いなと思っています。
今後はセミナーや公演活動なども多く引き受けてロールモデルの一人として自分の生き方働き方の発信も積極的にしていきたいですし、人生を全コンテンツ化してさらに自由にパワフルに活動展開していきたいです。
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