可愛い世の中をみると、全然可愛くなかった
今の私が、学生時代の自分に何かを言えるとしたら「とにかく本を読め!」だと思う。
雑多でいい、積読していい、表紙で選んで良い、帯でコメントしてるのが好きな人だからでいい、イラストが可愛いからでいい。
とにかくいろんな本に出会って、読んで、それからその感想を書いてほしい。そしてそれを今の私に見せてくれ。そのときの私の気持ちを読ませてくれ。
そんなことを思っている。
で、どうしてそんなことを思ったのかというと、毎朝恒例、通勤電車中に読む本が新しくなったからだ。
この前は森見登美彦さんの「きつねのはなし」、次は燃え殻さんの「相談の森」、そしてナガオカケンメイさんの「ナガオカケンメイの考え方」ときて、今は山崎ナオコーラさん「可愛い世の中」を読んでいる。
まだまだ序盤の序盤なのだけれど、もう、ほんっとに……やられた。
面白すぎるって~~~!!
主人公は4姉妹の2番目、豆子。花、豆子、草子、星、の4姉妹。
名前の時点で、設定が秀逸すぎる。本文内でも触れられるけど、名前を見ただけで、長女と末っ子の名前が華やかできらびやかで、あいだの2人は挟まれている。さらにそれは、見た目にも表れているという面白さ。
名前の通り、花と星は華やかな顔立ちで、小さな瓜実顔に胡桃のように大きな瞳が少し離れ気味に並んでおり、豆子と草子は地味で、饅頭のようなふっくりした顔に竹串でちょんちょんと跡をつけたような目があるのだった。
性格も、長女と末っ子はおしゃべりで明るく、真ん中二人は大人しくて暗かった。
小説に、挿絵は基本的にない。だからこそ、主人公の名前や見た目に関する説明が出てきた段階で想像する。
だけど、こうも圧倒的に想像できる名前があるだろうか。
結婚後数年で離婚した華、ニートでひきこもりの草子、玉の輿にのって主婦をしている星、そして豆子は、結婚や恋愛に疎遠で、ばりばり働く女性を目指していた。
ところが、30歳を目前にして急遽、マッサージ店の店員さんと結婚することを決意。そのお相手の名前がこれまた面白い。いそうな名前ではあるのに、なぜその漢字を使う!? と電車で吹き出した。
豆子の「ぶす」に対する想い、ばりばり働く女性としての社会的地位、自分で働いて稼いだお金の金銭感覚。心臓がちくちくするように、私を刺す。
わかる、と思う。共感もできる。だけど、その実、そのことはわかりたくなかった、とも思う。共感したくなかった。
だってわかってしまったら、共感してしまったら、そう思っている自分が、自分の中にいたことを認めることになってしまう。そのことがちくちくちくちくと痛い。
山崎ナオコ―ラさんは、ユーモアで私を刺す。面白い、だけど、読みたくない。なのに、読む手は止まらない。
気づくとすぐに会社の最寄り駅に到着してしまっている。また早く朝になってほしい、とすら思っている。
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