好きなことでしか生き延びれない残酷な世界『働き方 2.0 vs 4.0』(橘玲/著)
今回は、『働き方 2.0 vs 4.0』(橘玲 著)という本の紹介をしつつ、いつもテーマにしている「自由に豊かに生きるための働き方」をまた考えていきたいと思います。
本書の副タイトルは『不条理な会社人生から自由になれる』と書かれており、まさにこのテーマと一致していたので、手に取りました。
そして、結果的には、私のキャリア、人生の方向性を考えるときに、最も重要な本の一つとなりました。
『金持ち父さん貧乏父さん』が、4つの領域を示すことで、世界から富を得る構造をシンプルに伝えてくれました。
本書も、働き方と富を得る構造を、データや事例をもとに解析して、急速に変わる世界の中で、ビジネスパーソンが今後どのように生き延びていくべきかを示してくれています。
■働き方2.0と4.0とは何か
まずは本書のタイトルに使われている言葉の定義について紹介したいと思います。
筆者は「働き方」を次のように分類し、定義しています。
■フリーエージェント化とスキル・シェア社会
アメリカでは急速に「組織に所属しない働き方」が広がっていて、フリーエージェント化、ギグ化などと呼ばれています。
この背景には、会社側とビジネスパーソン側の両方の事情があります。
会社側が、従業員を雇いたくない理由を以下のように挙げています。
一方で、ビジネスパーソンの方が会社に雇われたくない理由を以下のように挙げています。
このようにして会社側もビジネスパーソンもフリーエージェント化を推し進めていて、スキルシャアする社会に進んでいる、というのが筆者の見立てになっています。
そして、高収入のスペシャリストほどフリーエージェント化が進んでいるというのです。
彼、彼女らは、フリーエージェントとなることで、人間関係を選択できるようにしていて、その方が人生が楽しくなると感じています。
このようにして、自分のコンフォートゾーン(居心地のいい場所)で仕事をして、その中で能力を発揮して対価を得る、ということを選択しているのです。
■好きなことでしか生き延びれない残酷な世界
AI時代において、「生涯教育」やリスキリングを繰り返すことでしかビジネスパーソンは生き延びれず、
それができず、落ちこぼれたら、自己責任とする論調がリベラル派から出ている、と書かれています。
これはかなり衝撃的な内容でした。
これは私の所属する会計・税務業界においても同様です。
会計士や税理士は毎年のようにアップデートされるそれらの基準や法令をキャッチアップしていくことで、かろうじてスペシャリストとして飯を食っているわけです。
しかし、AIがいずれ、会計基準や税法を習熟し、あらゆるシチュエーションにおける最適な解をクライアントに提示することができるようになるでしょう。
その時に生き残っているのは、AIの見解と、人間スペシャリストとしての見解を融合したうえで、より価値のある情報を提供できる人材だけになります。
AIの解の方がいつも正しいという状態では、そこにスペシャリストの介在する余地はありません。
そして、そのキャッチアップの過程や、進化する社会の流れに応じて学習やリスキリングを繰り返していく過程に、モチベーションが追い付いてこないような状態になれば、もはや生きていくことはできなくなるのです。
つまり、言い換えるとこの過程に「楽しさ」を感じ取れず、その過程を「継続」できない人間は、もうすでにその業界で生き残ることができないことを意味しています。
人は面白くもないこと、楽しくもないこと、得意でない苦役を、永遠と繰り返し続けられる生き物ではないと思っています。
そして、それが好きなことや得意なことでしか生きていくことができない状態を生み出していくというのです。
しかしながら、すべての人がこれをできるわけでないという意味で、筆者は「残酷な世界」と表現しているのです。
このパートは、本書の中でもっとも印象に残った下りとなりました。
■拡張可能な仕事と拡張できない仕事
本書の筆者は、仕事を「拡張可能性」という考え方で分類しています。
これは、一つの仕事がどれだけ多くの人々や世界にリーチできるかという考え方と理解しています。
この考え方は、働き方や、生き残るための職選びに大きな影響を与えます。
ただし、スペシャリストの収入は安定性と時給単価が比較的高いが、収入の増加とともに責任も大きくなる特性もあります。
一方で、バックオフィスはマニュアル化されているため責任が小さい一方で時給単価が低いという特徴があります。
AI時代かつグローバル化社会では、今の自分の仕事や今後選ぶべき仕事が、どちらなのか、ということを考える必要がありそうです。
■サラリーマンもフリーエージェントとして生きる
最後に筆者はまとめとして、未来でも生き延びれる人材として、
会社でもフリーエージェントのように立ち回り、会社の看板ではなく、個人に評判を蓄積できる人、だとしています。
早かれ遅かれ、いずれ定年でフリーになる以上、定年を迎えるまでフリーエージェントのように仕事をしてこなかった人の中には、突然、生活不安になる人もいるでしょう。
どんなタイミングでも、自分の専門性とスキルを活かして、個人に評判や信頼を蓄積できるような生き方を、早い段階から目指す必要がありそうです。
そうした生き方をサラーリーマンの時からするべきで、しっかりと準備をしたうえで、フリーエージェントになるタイミングはいつでもOKという状態にしとくのが理想だと思います。
■まとめ
経済的にも、時間的に自立するためには、ビジネス資産や投資対象の資産を築くか、労働をするにしても高単価な状況を確保する必要があります。
この本は、そのための指針となる考え方を示してくれていると思います。
以上、参考になれば幸いです。