固定観念を外す遊び~機内食と牛乳と親子丼~
固定観念を外すことで、普段当たり前に思っていることが急に面白く、又は違和感を持って見えてくる「遊び」をご紹介します。
こんにちは。かすとりです。
今日は、若干コラム風にはなりますが、固定観念を外す遊びについてお話したいと思います。
そこでまず、「固定観念」とは何か、ということをお話ししたいのですが、そのためにはまず、「パターン認識」についてお話をしておいたほうが良いかもしれません。
1 「パターン認識」と「固定観念」
パターン認識とは、人間が物事を認識する際の情報処理の方法の一つで、脳内に蓄積した過去の情報と照らして事物を類型化することで速やかに情報を処理する方法です。
人間は、あらゆる「生情報」をそのまま処理していると、脳に過負荷がかかってしまいます。
上の図をご覧ください。キリンを見たときに、キリンの持つ全ての情報を処理しようとすると、莫大な情報処理量となってしまいます。
「首が長いな。身体は黄色で茶色の斑点あり。斑点の数は、1,2,3,4,・・・・・見えるだけで62個か?足も長い。2mはあるか。頭には突起があり、その突起は・・・・」
・・・これでは脳が爆発してしまいます。
そのため、人間は、過去に脳内に蓄積してきた既存の情報と照らし合わせて対象を類型化し、素早く情報処理を行います。これが、パターン認識です。
キリンを見たときは、脳内にある「キリン」というデータ(このデータには、「首が長い」とか「斑点模様」とかの多くの情報が織り込み済みです)と自動で照会し、「あ、キリンだね」と即座に判断することができるのです。
※なお、類型化の際に利用する脳内の「キリン」、これこそがプラトンのいう「イデア」に近い存在です。
この通り、パターン認識は人間が脳の負荷を可能な限り少なくするために編み出してきたもので、これ自体は非常に合理的なものです。
(現代社会では、この「パターン認識」自体もときに意識して外していく必要があるのですが、その話はまたの機会に。)
しかし、この「パターン化」がうまくいかないとき、それは「固定観念」となり、我々の「認識」、そしてその先にある「判断」を誤らせるのです。
固定観念の例で言うと、「女性って〇〇だよね」といった、安易な性別論などもそうかもしれません。
過去あったような、女性に特定の役割を押し付けていた社会通念下では(悲しくも)その「パターン認識」が成立していたかもしれませんが、性別による役割論が意味を喪失した現代において、「女性は〇〇だ」といったパターン認識を発動すると、それはもはや我々の認識・判断を誤らせる「固定観念」となります。
そこで、固定観念を意識的に外していくことの訓練が大切になります。
そのためには色々な手法があるのですが、今日は、我々の身の回りにあるものを使って固定観念を解除していく、「固定観念外しゲーム」について、具体的な事例をもってご紹介していきます。
固定観念とは、「ある認識の合理性を説明する際に、『過去からそうだ』『周りもそうだ』というように、『パターン化されている』ということ以外の説明ができない認識」と言い換えることができます。
そうなると、これを解除するには、パターン化されていない、近しい別の物に置き換えて想像してみることが大切です。
それによって、認識は、その合理性の根拠であった「パターン」を失い、その認識が持つ違和感やグロテスクさが急激に表れてくることとなります。
こう言語化しても意味が分からないと思いますので、以下、具体例で語ってみたいと思います。
2-1 具体例① 機内食
さて機内食です。
機内食って、変じゃないですか?笑
変じゃない?普通?
はい。それは固定観念に浸食されております。
考えてみてください。飛行機に乗っているので意識しづらいかもしれませんが、機内食って、上空数千メートルで、マッハのスピードで進みながら、ご飯を食べてるんですよ?
地上から、上空の飛行機を見上げた際、その飛行機が透明だとしたら、人間がご飯を食べながら大空の中を超高速移動している、という状況が立ち現れます。これって改めて考えるとめちゃくちゃ変な状況ですよね。
さて、固定観念を外す手法の一つとして上で言及した、「パターン化されていない、近しい別の物に置き換えて想像してみる」ことを試してみましょう。
凄い高さで、凄いスピードで移動するもの。
ジェットコースターですね。
ジェットコースターに乗りながら食事をしている人。
変ではないですか?
両者は「凄い高さで凄いスピードで食事をしている」という点で同じです。しかしながら、ジェットコースターの上で食事をするのは違和感があり、機内食には違和感がないのであれば、「過去から機内食はあるんだ」という「パターン化されている」ということ以外にその認識の合理性を説明する術がありません。
これこそが、まさに固定観念です。
2-2 具体例② 牛乳パック
「いや、牛乳パック、何もおかしくないでしょ。」
そういう声が聞こえてきそうです。
しかしですね。これも改めて考えてみると、なかなかに異常です。
牛の乳です。言い換えると、動物の体液です。
動物の体液を、大量生産システムに乗っけて物流させ、画一化された容器でスーパーに陳列させている。
これ、めちゃくちゃ異常な行為ですよ。
この違和感をむき出しにするために、パターン化されていない近しいものに置き換えてみます。
なんでも良いですが、動物の体液ですので、「ニワトリのおしっこ」としましょう。
ニワトリのおしっこが、大量に生産され、日本全国津々浦々までトラックで運ばれ、スーパーに陳列されていることを想像してください。
めちゃくちゃ変ですよね。
なんでニワトリのおしっこが異常で、牛の乳が異常ではないか。
本来なら、スーパーで陳列された牛乳を見た際、陳列されたニワトリのおしっこを見たときと同じ量の違和感を持つべきなのです。そうならないのは、「だって牛乳は昔から飲んできたもん・・・」しかありません。過去からのパターンでしか合理性を説明できない。すなわちこれ、固定観念です。
2-3 具体例③ 親子丼
これはもう説明無用。
食べ物の名前として、こんなに悪趣味なものはあるでしょうか。
鶏肉と卵があるから「親子だよね」というネーミング。
この悪趣味さを知覚するには、簡単です。人間に置き換えてみたら良い。
人食い宇宙人が人間を捕らえ、ただ捕食するだけならまだしも、大人と子ども同じ料理に使い、「大人と子どもを同じ食材に使ってるんだから、これ、親子丼って名前でいいんじゃねww」と言っている様と比較して下さい。その悪趣味さが腹落ちしていただけたのではないでしょうか。
3 おわりに
固定観念外しゲームの具体例は以上です。
言わずもがなかもしれませんが、これは、上の3つの事物を否定するものではありません。
「固定観念を外してみたら、今までと違ったように見えてくるものがある」ということが非常に分かりやすく伝わる3つの事例、ということです。
他にも、「パターン化されていない、近しい別の物に置き換えて想像してみる」ことで、固定観念が取り払われた結果衝撃的な違和感を味わえるものが色々あることと思います。これを思考実験して、楽しむこと。そして、それによって固定観念の力と、それがいかに自然と我々を侵食しているかを知ること。
この知的営みが、固定観念外しゲームです。
皆さんも、このゲームにチャレンジしていただいて、衝撃的な他の事例が見つかりましたら、ぜひ教えてください。
冒頭でも記した通り、現代のVUCAな(予測が不可能な)時代においては、固定観念はおろか、従来は合理的であったパターン認識でさえ我々の判断を誤らせることとなり得ます。
ここについては近々詳細に言語化したいと思いますので、ご期待ください。
なお、今回の内容も、noteを活用したダイナミック・インテリジェンス・システム「知性の曼荼羅」の一環です。
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