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あまり語られていないサステナビリティの本質 ~「自分のため」と「みんなのため」の統合~

  • あまり語られていない、「サステナビリティ」という考え方を取り入れることに「どういう意味があるのか」「何がどう変わるのか」について言語化していきます。

1 サステナビリティとは

私はここ数年来、企業と社会の「サステナビリティ」推進に関するお仕事をしています。

この仕事を担当し始めた頃は、まだ「サステナビリティ」という言葉や概念はあまり一般的ではありませんでしたが、最近では、特に国内におけるSDGsの爆発的な広がりによって、ビジネス文脈はもとより、一般社会にも広く浸透してきた感があります。

改めて、サステナビリティとは「持続可能性」を意味します。
そして「持続可能性」とは、「このやり方や状況を、この先もずっと続けていけるか」ということです。

サステナビリティ=持続可能性

特に昨今、「人類がこのままのやり方で発展し、世界・地球を開発していたのでは、社会、環境、そして地球は続いていかない。社会・環境・地球と寄り添いながら、人類の発展をこの先もずっと続いていく、サステナブルなものとしていくことが大切だ」といった文脈で「サステナビリティ」という概念が取り上げられてきましたし、これを国際的な協調のフレームワークとして示したものこそが「SDGs」となります。

広く市民権を得たSDGs


2 サステナビリティの本質

さて、「サステナビリティ」の概念は社会に広く受容されてきましたが、私は一点気になっていることがあります。

それは、サステナビリティの本質、言い換えると、何かに取り組むうえで「サステナビリティ」という考え方を取り入れることで「どういう意味があるのか」「何がどう変わるのか」、そこがあまり語られていない印象を受けるのです。

ですので、今回はその「サステナビリティの本質」について可能な限り言語化していきたいと思っています。

いきなりですが、結論から言いいましょう。
「サステナビリティ」という視点考え方がもたらす本質
それは、「利己と利他の統合」です。

もっと簡単に言います。
「自分のため」と「みんなのため」を「イコール」にしてしまう力が、サステナビリティにはあります。

抽象的で掴みづらいと思いますので、以下、具体的に語っていきます。

3 具体的には

まず、前提としてドライかつスマートに認識しておく必要があるのが、「人間は、基本的に自身の利益とならないことはしない、もしくはしても続かない」という事実です。

「いえいえ、例えば〇〇氏は、自身を犠牲にして●●という善行を行いました」という反論があるかもしれません。

当然、個別具体で見ていくとそういう方もいらっしゃると思いますが、「悲しいかな」、統計的に見てみるとその方は「例外」です。
どんなことにでも例外ありますし、極端な事例を一般化して主張を行うことは議論を行う上で無意味です。

ただ、この事実をもってして、私は、「だから人間はだめだ」と言おうとしているわけではありません。

私が言いたいことは、
何かを達成しようとするときに、人に「やらせる」形にしてもうまくはいかない。それぞれの人が「自発的にやる」ように仕向けることが重要だし、そのためには、それに取り組むことで各人にメリットがあるように動機付け(インセンティブを付与)しておくことが大事だよ、ということです。

そして、ここで「自発的に」「みんなのためになることをやる」という、一見相容れない2つの要素をロジカルにつなぐところに、「サステナビリティの本質」があるということです。

具体例で示していきましょう。

4 もっと具体的には(事例で語る)

あなたは、とある企業の営業セクションのマネージャーで、2人の部下を抱えています。

最初にあなたに課せられたミッションは、「今日から1週間で、チームとして最高の実績をたたき出すこと」です。

さて、上司であるあなたは、2人の部下に激しく檄を飛ばし、部下たちは必死の形相で会社を飛び出していきました。
夕方になり、成果なく戻ってきた部下たちに罵詈雑言を浴びせかけるあなた。「売れるまで戻って来るな!」のあなたの怒号に、部下たちは再度、会社を飛び出していきました。

さて、あなたの半ば脅迫的な指導に震え上がった部下たちは、日中から夜にかけて営業活動、そしてほとんど徹夜でふらふらになりながら翌日の準備を行い、なんと、あなたのチームは2週間で全社一位の成果を上げることができました!!

おめでとうございます!!!

さて、鼻高々なあなたに次に課せられたミッションは、「今日から2年間で、チームとして最高の実績をたたき出すこと」です。

2週間の成果に息巻いているあなた。またもチームに檄を飛ばしました!お前らよくやった!この感じであと2年間頼むぞ!成績が下がったら給料下げるからちゃんとやれよ!!

さて、あなたのチームは相変わらず順調な成績を続けていましたが、1か月ほどたった頃から複数の問題が噴出してきました。

Aさんの営業先からクレーム。「説明内容と実際に届いた商品の仕様が全く違う!」追い詰められていたAさん、目先の売り上げ欲しさにほとんど嘘の説明で営業活動していたようです。

Bさんが出社して来ません。確認すると、心の体調不良とのこと。心療内科に通院する必要があるそうです。

急遽チームメンバー2人が活動できなくなったあなた。しかし、結果は出さないといけません。Aさんの営業先への謝罪の合間を縫いつつ、これまで部下に任せっきりで、勘所が掴めない中で自ら行う営業活動。
当然うまくいくはずがなく、あなたのチームの成績は、地に落ちてしまいました。

あーあ。。。

上の件で反省したあなた。あなたは気づきました。

「長期間にわたって持続的に営業成績を上げるには、無理のあるやり方ではだめだ。みんなが無理なく、ハッピーに続けられるやり方を模索しなくては」

そうしてあなたはマネジメントについて改めて学び直し、実践しました。
AさんBさんとコミュニケーションを重ね、心理的安全性を担保しながら、精神論に頼らないロジカルな営業・マーケティングスキルに関するナレッジを伝えつつ、ときに自身も営業の場に同伴しながらチームとしての営業活動に注力する日々。

その結果あなたのチームは、なんと、2年間のタームでも、最高の営業成績をたたき出すことに成功したのです。

心からおめでとう!!

以上、具体例でした。


5 まとめ

上の例はビジネス文脈の話ですが、何もこれはビジネスの世界に限った話ではありません。

2週間の場合でも、2年の場合でも、あなた自身の目標が「チームとして高い営業成績を出す」であるということに変わりはありません。チームで良い成果を出すことで、チームの代表者であるあなたの評価が上がります。

変わっているのは、自身が考慮すべき要素の射程です。

2週間という「短期」タームでは、あなたはAさんBさんのことを全く考えずとも、ただただ自分の利益だけを追い求めることで、望む結果を出すことが出来るということです。

しかし、2年間という「中長期」ターム、つまり「サステナブル」に自分の利益を追求したければ、AさんBさんにしっかりと思いを馳せる必要があるということです

つまり、サステナビリティの視点を投入することで、「本当に自分の利益を追い求めるためには、相手のことを芯から考えなければならない」という条件付けが行われる、言い換えると、「自分のため」と「相手のため」がイコールになるということです。

もっと見方を変えて抽象度を高めると、このようにも考えることができます。

サステナビリティの視点を投入すると、自分の幸せを達成していくための方程式の変数に、自分以外の周りのあらゆる要素が入ってくる、ということです。自身の関数が、外界に向けて拡張されるイメージです。

自分の関数が外界に向けて拡張される

その結果、「自分が幸せになるために」、周りの人とコミュニケーションをとったり、色々なことを勉強したりして、自分を取り巻くあらゆる要素についての理解を深め、そしてそれらをハッピーに、持続可能にしていくことが必要となります。

ここで付言しておきたいのが、このサステナビリティの考えが素晴らしいのは、相手のことを考えたり、相手をハッピーにすることを「善いことだからしたほうが良い」という「倫理的な」ロジックに捨て置かないことです。

「あなたが利益を得るために」「あなたが幸せになるために」、あなたは相手のことを考え、皆をハッピーにする必要がある、という構図に持っていくことで、インセンティブを付与し、「やらせる」のではなく「自発的にやる」という建付けになります。

以上を整理すると、
サステナビリティの視点をプラグインすることで、我々は、自分が最大限幸せになるために、率先して、自分を取り囲む人々や環境を良くしていくことになる。
それにより、「結果的に」社会全体がハッピーになっていく

「利己」と「利他」の統合。

「自分のために」と「みんなのために」がイコールに。

これこそが、「サステナビリティの本質」です。


【※】
今回の内容も、noteを活用したダイナミック・インテリジェンス・システム「知性の曼荼羅」の一環です。




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