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賃上げされたといってもその実態は?

賃上げのニュースが相次いで、連合の一次集計では賃上げ率は平均5.28%で、前年の同時点(3.80%)から1.48ポイント上昇した。

これ自体は喜ばしいことたが、とはいえ、当たり前だが全ての企業が一律でこの割合であがるわけではない。ニュースなどで個別に伝えられる企業は大抵大企業だ。
日本において大企業の就業者は全体の3割でしかない。上澄み3割が賃上げしたところで残りの7割が変わらないのであればあまり意味はない。意味はないどころか格差が拡大するだけで余計に悪い。

実際、2023年は3.58%賃上げして、岸田首相も「30年ぶりの賃上げ率を記録した」とドヤってきたのだが、その2023年が終わってみて2022年と比較して実際どうだったのかを検証したい。

賃金構造基本統計調査では2023年の数字はまだ速報値しか出ていないことを前提に、その2023速報値と2022年の確定値との比較で、企業規模別年齢別に所定内給与で比較する(本当は賞与も含めた年収で比較したいのだが速報値ではデータがない)。

全体の結果は以下である。

なるほど。全年齢通じて2023年は賃金があがっている(ように見える)。60歳以上の伸びが高いのが気になるが。

しかし、これを企業規模別に分けてみるとこうなる。

全年代プラスなのは中企業だけで、大企業ですら30-50代はむしろマイナス。小企業に至っては、19歳以下と60歳以上以外はすべてマイナス。

大企業に関しては元々当該年代の給料が高かった部分はあっても、子どもが大きくなっていく世代にあたり、マイナスは痛いだろう。しかも、元々たいして給料がよかったわけではない小企業はほぼ全年代マイナスだった。

一体これのどこが賃上げなの?と思いたくなる。

そして、全体でも企業規模別でももっとも賃上げ率の高いのは60歳以上である。うがった見方をすれば、経営者や上級管理職の引退間近の層ががっぽりがめているとも見える。実態は、定年延長で60歳以上の就業人口が増えていることも影響があるだろう。もっと細かく業種別などでみれば、それぞれに違いはあるたろう。

それでも若者の賃金は増えているのだからいいじゃないかという話もあるが、とはいえ、20代の単価の安いところを率であげるのは簡単な話で、どうも賃上げといってもどうなんだろうという疑問しかない。

残業込みの初任給を提示して盛ろうとするヤバい企業も出てくる。


そもそも若者の賃金をあげろというのは、そのかわり30-40代の中年層の賃金を下げていいという話ではない。20代で多少賃金あがっても、30代になったら下がるとわかっているならそれは先の希望にはならない。

2024年5.28%あがったといっても、単にこの2022→2023年のグラフの形の踏襲なのだとしたらあんまり意味はない。

さらに、ここに網羅されていない雇用者ではない個人事業主なども所得はあがっていないだろう。会社員はこうしたベースアップなどがあるが、ライターやイラストレーターなど個人事業主の対価は物価高になってもほぼ変わっていないのではないか?それも10年以上も。そこにインボイスも加わるわ、社保料はあがるわ、で手取りはマイナスだろう。

名目の賃上げ率より実質的な手取りが増えたかどうかが問題なのである。じゃないと消費は増えない。消費増えなきゃ景気回復しない。

そしてなんでもかんでも少子化と結びつける気はないが、もはや「結婚も出産も消費」となった現代では、中間層の消費減退はイコール少子化を加速させる。
出生減は婚姻減であり、婚姻減しているのは所得中間層だけである。中間層とは25-39歳の年代が多くを占めるし、その年代の未婚率は高いのである。にもかかわらずそこを苦しめてどうする?という話だ。


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