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聖夜に寄せて 米津玄師が選んだ祈りの言葉

米津玄師の歌詞を因数分解して分かったこと 
<第1章>

プロローグや他の米津玄師記事は下記マガジンにまとめました。

 日本人は無宗教の人が多いと言われているが、私もその1人だ。それでも今年ほど多くの祈りを捧げた年はなかったかもしれない。
「神様、どうか、どうか・・」と。

 特定の信仰がある人にとっての「祈り」は日常的な習慣であり生活の一部だろう。しかし無宗教者が祈るのは、何か切実な願いがある時や、救いを求める時だけかもしれない。
 
 まったく虫のいい話であるが、そこが人間の可愛いところだと思う。

 冒頭の「神様、どうか、どうか・・」はご存知「orion」の歌詞である。

 米津玄師の歌で”神様”は3曲に登場するが、「アンビリーバーズ」や「Paper Flower」では神に祈りを捧げていない。女神も2回出てくるが彼女たちにも祈っていない。それどころか、「クランベリーとパンケーキ」に登場する女神はおヘソに煙草を擦り付けられている。バチが当たりそうだ。

キリスト教を想起させる言葉が目立つ

 宗教的な言葉は49回使われており、そのうちの約37%がキリスト教に由来し、約18%が仏教系の言葉である。
 
 過去に米津は「聖書を読んでいる」「大乗仏教をやろうと思った」などと発言しているが、「自分はキリスト教徒ではない」と明言している。おそらく彼も多くの日本人と同じように特定の信仰はないのだろう。

 しかし、米津の曲からはキリスト教のイメージが色濃く漂う。

 それは「amen」「サンタマリア」が歌詞だけでなくタイトルにもなっていること。
 
 3曲に登場する「ハレルヤ」が大ヒット曲「パプリカ」のサビに使用されていること。

 「塩の柱」や「9つの門」と言う、「ん?」と引っ掛かりやすい歌詞が旧約聖書や神曲に由来していること等が影響していると推察できる。

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 特に「サンタマリア」は紀元に匹敵すると本人が言うほど米津にとって大きな転機となった曲だ。

 「amen」はカップリングの3曲目と言う控えめな立ち位置ながら「脊椎がオパールになる頃」のライブのど真ん中で披露される強烈な1曲である。この曲だけでたっぷり1記事書けるほどの闇だ。

 この「amen」はCD音源で聴くと、間奏中にキリスト教神学者アウグスティヌスの「告白」の一節を、繰り返し朗読する米津の声が聞こえる。

<実際、私の心は真っ逆さまに落ちるのを恐れて、あらゆる同意から離れていたのであり、この留保によって殺されていたのである。>

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 この聞こえるか聞こえないかの呟きはこの曲の重大ポイントなのだが、それについての考察はまた別の機会に見送ろう。

では、仏教的ワードはどうか?

 「修羅」「刹那」が3回ずつ、「曼陀羅」「輪廻」「閻魔」が各1回使われている。どれも仏教用語ではあるが、今回のテーマである祈りとは関係はなさそうだ。

 米津玄師の用いる言葉自体は、原罪を背負ったキリスト教的なものが多い。

 しかし、彼がライブMCで語った「大きな船」とは、旧約聖書の神に従った者だけが救済されるノアの方舟ではなく、信じる者すべてを救うと言う大乗仏教に近い気がする。

なかなかハイブリッドだ。

誰に祈りを捧げているのか?

 「祈り・祈る」と言う類の言葉は13回登場する。「祈る」と言う言葉を辞書で引くと最初に「神仏への祈願」とあり、2番目には「心から望む」「希望する」と説明されている。

 米津の使用している「祈り」は、神や仏への祈願よりも、2番目の意味合いの方が強い。

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 また、幸せを願う「祈り」の反対に、不幸を願う「呪い・呪う・呪われた」が4曲で使用されていることも一応書いておく。

クリマスソング リリースの可能性

 普遍的なポップミュージックを作りたいと常々語っている米津だが、この季節の王道とも言えるクリスマスソングが1曲もない。キリスト教由来の言葉を多用しているのにもかかわらず、クリスマスを匂わす歌詞もない。

 強いて言えばトナカイを意味する「カリブー」と言う言葉が「ViVi」と「Caribou」に出てくるがクリスマスとは無関係だ。

 さらに「冬」も「orion」のみである。ちなみに「秋」は1度も使用されていない。

 そもそも、米津はあれだけのボキャブラリーを持ちながら四季・二十四節気に関する言葉の使用度は15%ほどで、そのほぼ全てが「春」「夏」である。寒いのが苦手だと言う彼がクリスマスソングをリリースする可能性は低そうだ。

JR東海あたりのタイアップでも入れば別だがw
ちなみにハチ時代の曲「Christmas Morgue」では「メリークリスマス」と言う歌詞がある。Morgueの意味は霊安室、もしくは傲慢。どっちなのか?

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聖夜に彼は何を祈るのだろうか? その祈りは誰のために? 

 冬空に映えるオリオン座を眺めながら「どうか、どうか、声を聞かせて、ほんのちょっとでいいから」と祈った声が届いたようだ。
ニュースZEROのスタッフに。。。。
Merry Christmas!よい聖夜をお迎えください。

何が掘り出せるか分からないまま始めた連載の第1章はいかがでしたか?次回は何をテーマにしようかとエクセルとにらめっこ中です。
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<Appendix>

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