スーパーネットストーカー 前書きと目次

この記録は私が6年近くにわたり受けた、そして今もなお受け続けているそのようなインターネットを使ったハッキングハラスメントについて書いている。

わたしはセキュリティに関して専門的な知識をもたない。それでなにか書き残そうとすれば結局は記録のようなものにならざるを得ない。ハッカーにやられっぱなしの情けない展開は延々と続いてゆくのだが、それでもデータを破棄してしまわないで、残しておこうと思ったのは私のような被害者は潜在的に増え続けていることがベンダーなどの報告書から読み取ることができたからだ。

ハッカーが特定の個人を狙うということについて、この個人的な体験を公表することで世に知らしめることは少なからず意義があると思う。この種の被害は表に出てこないもののかなりの数にのぼると思われる。被害にあうのは決して特殊な人間ではなく、誰でもその可能性があることを少しでも多くの人にわかってもらえれば幸いである。

この記録にもう一つ価値があるとすれば、それは私がこの嫌がらせの張本人であるハッカーが誰であるか知っているということだ。それはベトナム人のIT技術者であり、さしたる理由もなく個人を執拗に攻撃し続ける、この狂った男がどんな人物であるのか?それを知ってもらうことがなぜ価値をもつのか?これを読み進めるうちに理解してもらえると思っている。

最近の事例を紹介してゆけば、こうした嫌がらせがある程度客観的なかたちで提示できるはずだが、それらを出してゆく前に、ある程度の背景を把握してもらうのが良いと思われる。ここにそのための材料を用意した。この体験を500枚の原稿にしたもので、書き上げたのは2年以上前になる。だからこの原稿の中身は数年のタイムラグがあり、日々めまぐるしく変化しつづけるサイバー犯罪について、いまの状況に合わない箇所もあるだろう。

ブログの特質としての同時並行的な進行とはかけ離れたある意味死んだ過去の記録であるが、この原稿のすくなくとも第一章を読んでいただければ、最近の事例など読み進める上でのセキュリティの基礎知識を含めた羅針盤となりうると思う。以上の理由でブログの最初としてこの原稿を逐次入れてゆくことにする。

原稿の前書き

 その一連の嫌がらせは、心血を注いで二年近くかけて作り上げた二つのWEBサイトがつぶされたことから始まる。同じ犯人が、今度は私の自宅にあるパソコンに侵入し、画像ファイルやドキュメントを削除し、ときにドライバーを削除してネットから切断し、ネットバンキングのログインを妨害し、重要なメールを勝手に削除し、パスワードを変更するなど、ありとあらゆる妨害行為を行ってきた。 

 それは自宅PCへの不正侵入の問題だけにとどまらなかった。街のネットカフェでも、あるいは図書館などの公共施設のPCを使用した場合でも、共通する現象が起きた。また新しいメールアドレスを外のパソコンで、たとえ架空の情報を使ってつくったとしても、すぐに察知されてしまうという問題も含んでいた。つくって使用していない場合ですら、パスワードが変えられ、重要なメールが勝手に削除された。メールだけではない。WEB上で航空券をネット決済したり、インドのビザ申請をしようとすると、それが執拗に邪魔されるという現象も出てきた。

 話を聞いた人の多くは、とたんに色眼鏡をかける。だから最初は、言わずに伏せたままにしておいた現象も多かった。しかしハッカーが行うボットネットという手法で、それがひとつの標的に狙いを定めた攻撃を行う場合に、こういうことは十分にあり得るということが次第にわかってきた。

 ネット上の情報から、その実証的な根拠を得ることが可能になったのだ。いつの間にかボットはサイバー犯罪の中でも最も危険なものの筆頭にあげられ、ネット世界の崩壊を招きかねない危機として取り上げられ始めていた。

 感染したウイルスは自己隠蔽してウイルスソフトの目をくぐり抜ける。たとえパソコンのハードディスクをフォーマットしてOSを入れ直しても除去することさえできない。またそれはパソコンだけでなくスマートフォンもその感染対象にする。私の場合もスマホにも侵入され、PCほどではないがスマホでもまた妨害を受けている。

 WEBサイトがつくれない。安全なメールがもてない。ネットでクレジット決済ができない。そうした現象は日本国内だけではなかた。訪れるアジアの各国で同じことが起きるのだ。私に仕掛けられているこの高度な個人標的型のボットネットがどんなに悪質であっても、しかし警察を含めた関係機関は、名もない個人のためには何もしてはくれはしない。しかし私のような潜在的な被害者の数は少なくない。

 実は私はこの嫌がらせ行為をつづけている、その当のハッカーを知っている。彼とは、5年ほど前にIT関連のビジネスを通した短い交流があったのだ。はじめて会った当時、その男は人生をやっと自分の足で踏み出したような若者だった。彼は何故ここまで嫌がらせを繰り返してきたのか?その心の闇とはどんなものなのか?

 私はここに、私が体験した事実だけを書いた。でもそれが事実であると客観的に証明することができない。確たる証拠がなければ、とネット犯罪を防衛する側にいる人たちから何度か言われた。でも実際には彼らでさえその確たる証拠を取ることは難しい。

 あるいはこのネット上の妨害行為の数々を、自分の想像によってでっち上げたのではないかと疑う人がいるかもしれない。現時点では、それを否定する証拠を示すことができない(ある程度の証拠となるスクリーンショットなどはその都度アップするつもりだが)

 しかしもしここで取り上げた現象の数々がパソコンへの不正侵入によって確実に起こり得ることであれば、そしてそれがシステムやネットワークなどのエラーによるものと考えにくいケースであることが示せれば、さらにそれが誰の身にも降りかかってくるものになりつつあることが示唆できれば、この証拠のない話も多少なりとも読む人の役に立つように思う。


 たとえ確証を提示することが出来なくとも、事実にはそれを否定し拒むことの出来ない、隠れた重みのようなものがある。知識と想像で構築した虚構には似つかわしくないある種の威厳がある。だから本当はこんな蛇足は必要ないのかもしれないが。

 前書きの最後としてお断りしておきたいことがいくつかある。              
 ひとつは用語に関することで、一般にネット犯罪が語られる場合、ネット上でも犯罪者をハッカーと呼ぶことが多いが、本来ハッカーとはコンピュータやネットワークに関して高度な技術を持っている人として使用するのが正しく、内部データの操作、改竄、破壊などの不法行為を目的として、悪意をもってコンピュータシステムにアクセスしてくる攻撃者はクラッカーと呼ばれる。ただクラッカーという言葉は一般にはそれほど馴染みのない言葉でもあるため、本稿ではハッカーで統一させてもらった。

 同様にコンピュータウイルスという言葉も、本来は多岐にわたる特徴をもつ、悪意あるソフトウエアは総称してマルウエアと呼ばれ、ウイルスはそのなかの一種になる。だから多分に限定的な意味合いになるが、これも同様の理由でウイルスという言葉でくくらせてもらった。

 ハッキングやウイルス感染についてのやや専門的な範疇に入る話は一章と二章の前半に集中しているが、専門用語は極力控え、まったく知識の無い人にも理解できるよう配慮したつもりだ。文中に出てくる技術的な解説などはネット上から得た知識、情報によって為されている。もちろん私自身はセキュリティの専門的な知識を持たない素人にすぎない。

 だからこれはあくまで体験談が中心となる。技術的な知識からではなく、主に個人的な体験からハッキングによる現象を解明してゆくことがこの体験記の意図するところのひとつでそれは第三章でまとめて展開されてゆくが、三章以降はインドでの生活なども出てきて話が膨らんでゆくので、とりあえず二章まで読んだ後に2018年からの最新の嫌がらせ情報に飛んで読み進めてもらってもいいだろう。このハッカーの嫌がらせは多分私が生きている間ずっと続いてゆくだろう。

 繰り返すがこの原稿は2年以上前に書き上げたものであり、その内容となっている体験は2012、3年ころから始まっている。取り上げているサイバー犯罪に関する状況は2018年現在でも概ね変わらないものと思うが、細かな部分では一部時代にそぐわない箇所があるかもしれないこともお断りしておきたい。
登場人物は仮名処理してあるが、嫌がらせの張本人は実名でのハッカーは実名である。また文中の( )つきの数字は原稿の最後に脚注として提示している参考資料の番号となっている。


未発表原稿 /目次

 第一章 悪魔のマジック

 第二章 エイリアンの巣で       

 第三章 ヴィエンチャンの悪夢

 第四章 新天地にて 
      
 第五章 不吉な迷宮            

 第六章 糾える縄のごとく        

 第七章 スマホの闇            

 第八章 決戦への旅            

 
        注

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