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水中探索と"溺死体"

ーオレとアチキの西方漫遊記(15)

水晶淵(高知県仁淀川町)から上流に向かって2分ほど歩き、幅2mはありそうな大きな岩を乗り越えると、砂防ダムの前に広がる「仁淀ブルー」の水面が見えた。周囲には人っ子一人いない。まばらに人がいた水晶淵からは、岩によって視界がさえぎられている。まさに天然の"プライベートプール"だ。夫婦揃って大はしゃぎしながら、憧れの仁淀ブルーに相次いで飛び込んだ。そこで、やがて気付くことになる。それぞれ楽しみ方が違っていることに。

前回のお話:「Dive into the BLUE」/これまでのお話:「INDEX

プライベートプール

水は青く澄んであまりに美しく、仁淀ブルーというにふさわしい。ダムに向かって右手に水面から1m超の岩場があり、格好の飛び込み台だ。勢いよく岩を蹴ると、目前に仁淀ブルーが迫り、それが高揚感を誘う。足跡一つない真っ白な新雪に飛び込んだ感じとよく似ている。奥さんも水面に浮き上がってくるたびに、お得意のオールドスクールな歓声をあげるなど、大喜び。にこ淵(高知県いの町)で泳げなかった鬱憤が晴れたようで良かった。

ひとしきり"仁淀ブルーダイブ"を楽しんだ。個人的には、頭から飛び込んだ後、そのまま深く潜り、目を開けて水中の景色を見るのが楽しかった。魚はいないか、珍しい石はないか。水底を這い回るなど、探索するのに時間を忘れた。やがて奥さんとの楽しみ方の違いに気づく。奥さんは足から飛び込み、早めに水面に顔を出す。そこから仰向けになって全身の力を抜き、水面に漂う"溺死体ごっこ"がお気に入りのプレイらしい。

砂防ダム_滝壺002

グッジョブ

「自然と一体になった気がする」と奥さんはいう。実際に飛び込みから一連の動きを見せてもらう。言葉の印象とは裏腹に、仁淀ブルーに浮かぶ溺死体のようだ。見ていて、あまり気持ち良いものではない。ただ、自然と一体というフレーズに惹かれ、一緒になって溺死体ごっこに興じてみる。仁淀ブルーの水面に仰向けになった。見えてくる青い空と緑の木々。近くで聞こえる滝の音。風になびく葉の音が心地よい。

これはこれで悪くないー。そう思い、奥さんに向け親指を立てた。(続く)

(写真〈上から順に〉:砂防ダムの前に広がる仁淀ブルーの水面=りす、滝壺を水中から撮影=りす)

関連リンク(前回の話):

「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:


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