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若輩者が仕掛ける頭脳戦

食をめぐる駆け引き

若輩者による親孝行の一つとして、実父母や義母さんにヤマブシダケを食べるよう勧めたい。認知症予防に効く成分が含まれるためだ。ヤマブシダケはそれ自体に特別な香りや味はないが、スープなどの汁物として味を染み込ませて使うことが多いとか。中国ではフカヒレ、ナマコのいりこ、熊の掌と並ぶ"四大山海の珍味"とされている。それを謳い文句に、好き嫌いがはっきりしてきた両親たちを釣ってみよう。食をめぐる親孝行は頭脳戦だ。

"Xデー"への備え

実父と義母さんは2018年に大きな手術を経験したが、年齢相応に元気だ。実母もちょこちょこ風邪などを引くが深刻な事態にはなっていない。いずれもボケているようには思えず、特に実父母は、お互いを認知症扱いするなどし、口がまったく減らない。

義母さんは義父が先立ち、心細い面もあるようだが、海外旅行に出かけるほど覇気がある。茶目っ気もあり、口数も衰えない。もちろん、年齢を重ねるごとに少しずつ状況が変わってきてはいるが、本人たちの"ボケ申告"はとても信じる気にならない。

とはいえ、寄る年波には勝てない。いつか本当にそういう時期が来るだろう。年齢からして予防も無意味かもしれない。ただ、それに怯えて元気を失ってほしくない。ヤマブシダケを食べて対策しているということで、両親たちが前向きなままでいられるようになれば良い。

必殺の表現

「年を取ると量を食べられなくなるので、値段が高くても質の良いものを少量食べたい」ー。定年退職した会社の先輩はしみじみ語る。一般にもよく耳にする言葉だ。実のところ、こうした状況はヤマブシダケを食べるよう促すには、すこぶる都合が良い。

ヤマブシダケは四大山海の珍味で、中国では宮廷料理の食材として珍重されたという。この表現っぷりが好き嫌いを口にするようになった両親たちの心を動かすだろう。それ自体に特別な香りや味がないので、一緒に使用する食材の味がヤマブシダケを気に入るか気に入らないかのカギになる。

ここでお口に召さないようであれば、続けて食べる可能性はないため、調理は、奥さんに一肌脱いでもらうことにしよう。油を吸いやすいので調理の際には注意してもらう。ヤマブシダケはスーパーで手に入りにくいと聞いたが、そこそこ手に入りそうだ。

戦端開く

認知症予防研究協会によると、ボケ予防にはヤマブシダケをはじめ、大豆、玄米、ヤマブシタケ、青魚の4食材が効くらしい。いずれも脳を若返らせる成分を含み、ヤマブシタケは破壊された神経細胞の修復・再成長の促す。大豆は脳の細胞膜を柔らかく保ち、玄米は脳の酸化を抑えるという。青魚については、脳を構成する脂肪成分を質の悪いものから良いものに置き換える成分があるそうだ。

大豆、青魚は身近な食材のため、あえて促すまでもなく、きっと今でも定期的に食べているだろう。玄米は健康に良いということは知っていても、白米に慣れ親しんだ今では、「何を今更」と苦笑を浮かべた実父母や義母さんらの表情しか思い浮かばない。一方、ヤマブシダケは相対的になじみが薄そうだ。知っていたとしても、四大山海の珍味だなどと言葉を尽くし、興味を引こう。これから両親ら先人たちに食をめぐる頭脳バトルを仕掛ける:

「さあ、オレたちのゲームを始めよう!」(アニメ『ノーゲーム・ノーライフ』の主人公「空」風)

(写真〈上から順に〉:FBIと容疑者の頭脳戦を描いた映画『ブレイン・ゲーム』=シネマズ・プラス、宮廷料理の食材として珍重されたヤマブシダケ、クックパッドに列挙されたヤマブシダケのレシピ=りす、アニメ『ノーゲーム・ノーライフ』の主人公「空=写真左」)風=心に残る言葉)

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