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自由に使える3万円、どう使う?

好きに使って良いよと急に言われ、3万円を手渡されたらどう使う?

こう自分に問いかけたが、即座に答えが出なかった。本当に欲しいものに使いたいという気持ちにとらわれ、頭の中が整理しきれなくなったから。ところが、ノンフィクション作家・高橋秀実氏は一味違う。プレジデント・オンラインに載せたコラムで、同様の問いに「迷わずピアスを買う。もちろん妻への贈り物」と、きっぱり。何だか、とってもカッコイイ。

新たな発見

自問のきっかけは、先日アップしたコンテンツ「新たなブーム到来の予感 体の中にマイクロチップ」。2万6000円(200ユーロ)で、身体にマイクロチップを埋め込んでくれる店を紹介したが、埋め込み手術にかかる約3万円が自分にとって高いか、安いかを知りたくなったところに出発点がある。

自由に使える3万円の自分なりの使い道を考え、手術に使うのとどちらにお得感があるかを比べた先に、その解があるはずだ。ところが、欲しいものなら幾つも挙げられるが、3万円という枠を設定されると、途端に頭が回らなくなってしまう。そんな自分に気づいたのは新しい発見だ。

自分を捨てるという発想

高橋氏も当初、何も思いつかない。「使い道をしばらく考えるために、とりあえず貯金するという手もあるが、それでは贅沢というより倹約になってしまう」と迷ったようだ。ただ、ここからが違う。早々に思考の迷路から抜け出し、3万円でできる"極上の贅沢"について考えた。この頭の切り替えの速さに惚れ惚れしてしまう。

高橋さんによると、贅沢の真髄は自らの収支感覚を飛び越え、自分を捨てるところにあるんだとか。その考えに沿って、高橋さんは奥さんにピアスを贈ることを選ぶ。「私にとって妻のご機嫌ほど重要なものはない。彼女がご機嫌であれば、世界が明るく輝くわけで、そのリターンは計り知れない」。自分を捨てることで見返りを得る発想が面白い。

ピアスを選んだのにも理由があると高橋さんはいう。「ピアス(あるいはイヤリング)は、指輪などと違って1000円単位のものが主流なので3万円となると贅沢の部類に入るといってよい。ちょっと勿体ない感じもするが、それでこその贅沢」。なるほど、言い得て妙だ。ちょっと勿体ないと本音が見え隠れするのも、建前っぽくなくて良い。

さらにピアスには身を守る効用があると続ける。「世界中の国々で、耳から精霊が入り、耳に魂が保管されていると古来信じられている。確かに人間を惑わすのは言葉で、言葉は耳から入る。私などはしょっちゅう失言を繰り返しているので、ピアスをつけてもらえばその害も防げる」。なかなか含蓄のある口上で、ピアスをもらった奥さんも喜ぶことだろう。

"あぶく銭"

そこで気づいたことがある。そもそも3万円もの小遣いを急に手にすることはほとんどない。働いた対価として得た資金ではないことが前提であれば、パッと使い切ってしまっても後悔の度合いは小さいはず。予定していない突然の収入は"あぶく銭"、そう思えば、スムーズに頭が働きそうだ。

そこで周囲に聞いてみる:自由に使える3万円があれば、どうする?

出るわ出るわ、旅行のアイデア。宿は安めで良いから料理を贅沢したいとか、移動は少し費用を足して飛行機にするとか。えっ!?それって、すでに3万円を超える話になっているよね。それにコレ、仮定の話だからね。実際にそんな金ないから。という顛末で、この話の火消しは実に大変だった。

おかげで、3万円の使い道は依然思いついていない。

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