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映画「ウエストサイドストーリー」感想

※以下、映画本編のネタバレ有。また、別作品「ロミオとジュリエット」のネタバレも含まれてます。

良い部分もあれば引っかかる部分もあるなーという感じ。ストーリーはロミジュリが着想元ということで、ほぼロミジュリ焼き直し。
150分はちょっと長かった。まあ1900円の価値はあったかなとは思う。
あと久しぶりに字幕映画を見て、私の英語リスニング力が中学生以下レベルなことが判明した。

良かった点①歌とダンスが上手

なんといってもこれ。
話に多少引っ掛かりがあっても、歌もうまいしダンスもうまいのでぼーっと見ていられる。覚えている限りで羅列すると。
開幕直後のダンスシーンは久しぶりに男性の力強いダンスを見て、長い手足がひらひら舞っているのが楽しかった。ダンスパーティーのシーンはアニータが格好良くて素敵だった。銃の奪い合いの所は煽りが強くて面白かった。相手を落ち着かせる気あるのかトニー。煽ってるようにしか見えんぞ。
アメリカのいいところと悪いところを交互に言いながら町を踊りまわるところ、掛け合いもビジュアルも楽しかった。まあ、都会の厳しさに打ちのめされて田舎最高!俺たちの故郷最高!になる男性と、貧困でも煌びやかな都会にしがみつきたがる女性という、ありふれた悲しい話でもあるけれど。
主役二人の掛け合いは綺麗だった。マリアが掃除の仕事しながら歌い踊るところとか、はしゃぎっぷりが可愛くて好き。
こう並べてみると、映画ならではの演出が効いて、映画にしかできない画面をつくれているダンス&歌唱シーンが好きなんだな私は…。広い街中を、小物を活かしながら踊りまわり、いろんなアングルで見せる感じのやつが好き。サカモトデイズ(ジャンプ連載中の漫画)のバトルシーンに通じる楽しさ。

良かった点②舞台美術がオシャレ

昔のニューヨークが舞台。まあアメリカの風景とか正直よく知らんのだけど、開発中の都会の治安の悪い街、がオシャレに顕現していて素敵だった。解体中のまま放置されてる雰囲気の建物とか、マリアが住んでる団地っぽいごちゃついた建物とかめちゃくちゃ良い。
ロミジュリだと、外から2階のジュリエットの部屋まで直通の超無防備な謎階段(梯子)が無機質な非常階段に置き換わってるのも良い。

良かった点③アニータが素敵

登場人物のなかで一番心情が理解できた。それに歌もダンスも格好良くて素敵。手足が長くて骨格がゴージャスで、パワーと気品が同居してる感じ共感と憧れ、どちらも持てる。
暴力的な恋人の妹に対して、すごいお姉さん感出してくるのも面倒見いい人なんだなあと思う。

良かった点④チノがかわいそう

みんなに認められたくて必死になってるのに誰にも認めてもらえないという悲しい人。あんまり出てこないけど、彼が歪んでいく流れはとても分かりやすくて良かった。
銃持ってるとはいえ、まだ何もしてないのにアニータに殺人犯にされたうえにみんなそれを信じるとかね…。マリアだけ「彼はそんなことしない」みたいなこと言ってくれるけど、まともにチノを見てないから出る台詞だしね…。最後にバレンティーナが寄り添ってくれたのがせめてもの救いか…。

良かった点⑤所属で服の色が分かれている

異人種間の対立の話なのだが、非常に申し訳ないことに、ぱっと見どっちがどっちか分からんので、服の色で分けてくれて大変助かった。これがなかったらだいぶきつかった。おそらく場面ごとで登場人物が着ている服の色には全て何かしら意味があるんじゃないかと思われるが、さすがに一回見ただけだとそこの意味を拾うのは難しかった。

引っかかった点①ハッピーな雰囲気に反してものすごいバッドエンド

良い点とするかどうか悩んだんだけど、良い意味でもやもやするということで…。これ、最終的にはどっち側もこの町から追い出されることが序盤から確定していて。本当に無益な、何の意味もない争いなのが冒頭から示されている。で、争いの結果相互理解が深まった、とかそういうことでもない。亀裂は深まった感すらある。
まさに「争いは何も生まない」をそのまま表現した作品なのかなあと。ただそれを素直に表現すると物凄い重苦しい、見るのがしんどい作品になるので、ハッピーな歌と踊りと演出でラッピングして世に出したのではないか…と感じた。

引っかかった点②ダンスシーンの行儀のよさ

ダンスシーンは見応えあってよかったんだけど、バレリーナ的な優雅な回転をする部分だけ育ちの良さを感じて妙に面白かった。特に冒頭の男性陣の回転。そんな優雅にくるくるするキャラじゃないじゃん君ら。

引っかかった点③全体的に露出が多い

別に本人がいいならいいんだけども。
冒頭のアニータとか、上からのアングルだとお胸全部見えそうでヒヤヒヤした。
いや、別に本人がいいならいいんだけども。(2回目)

よく分からなかった点①性的マイノリティ的な雰囲気の人

ジェット側になんかそれっぽい、仲間内から馬鹿にされている感じの人がいてちょくちょく存在感を出していた。が、結局どういう人なのか全然わからなかった…。おそらく、字幕の文字数の関係でだいぶ情報落ちてるんだろうな…。英語は全然分からんかったし…。

よく分からなかった点②みんなで警察に尋問?された後の警察署?の場面

「俺たちいい子!」から始まって精神病院ごっことかして、「俺たち悪い子!」になるシーン。シーン通してなんらかのメッセージを社会に訴えようとしていた雰囲気は感じたものの、どういうメッセージなのかは全然わからなかった。
唯一、戻って来た警官が部屋めちゃくちゃに散らかされて気の毒なことだけが理解できた。呆然とする警官の前で急にみんな落ち着くの、突然正気に戻る感じで結構好き。

ロミジュリより良い点①分かりやすい対立構造、現地人VS移民

ロミジュリでまず初めに生じた違和感が、「2つの家が争ってる街ってなに?」だった。まあ、そういうもんなのね、で流せるレベルではあるんだけど。これが「現地人と移民の縄張り争いで揉めてます」に変更され、めちゃくちゃ分かりやすくなっていて良かった。すんなり飲み込める。

ロミジュリより良い点②登場人物の社会的階層が低い

これも分かりやすくなって良かったと思う。
ロミジュリで常にうっすらある、「この世界すごい治安悪くない?」という違和感が、「舞台は社会的下層に属する人々の世界です」と最初に示されることで消滅した。

ロミジュリと共通の引っかかり①主役2人が恋に落ちる理由が不明瞭

なんで愛し合うようになったの?」に明確な理由がなく、一目惚れとしか言いようがないのは両作品共通。このせいでラブストーリーに感情移入できなかった。ただ、どちらも感情移入しなくても楽しめるものではある。
あと、恋に落ちた後のトニーのマリア連呼はちょっとくどかった。なんかロマンよりストーカー的な偏執を感じてしまった。

ロミジュリと共通の引っかかり②人殺しからのベッドイン

ロミジュリだと、ロミオがその場の勢いでティボルトを殺すところで一気にロミオから気持ちが離れたところがあった。「あなたって勢いで人殺せる人なのね…こわ…」っていう。ティボルトは最初から壊れてる分、「あーとうとうやっちゃったかー」って感じなんだけども。
トニーは最初から暴力性をもっている人(前科有り)、と示されてる分多少唐突感はマシだったけど、やっぱり「結局殺すんかい」的な気持ちの離れ方はあった。で、見てるこっちは作中一番引いてるのに、マリア(ジュリエット)はそんな相手と寝るので作中一番相手に接近するという、感情のベクトルが私とマリア(ジュリエット)で完全に反対向いちゃってる現象が発生する。
これのせいで、私の中でラブストーリーとしてはちょっとなあ、という感じになってしまっている。


我ながら結構色々書いたな…
まあこれだけ書くことが浮かんだなら見た甲斐はあったということで。


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