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SECOND CHANCE ~せっかく転生したのに、気づいたらもうオッサンだった……~ 第3話

第3話 「勇者アクシウスとの出会い」

~第2話 「少年と少女の約束」の続き~


さらに月日は流れ、俺とトリアは15歳になっていた。
そして1ヶ月後には、目標としていたロストクリムゾングランドの調査団募集が開始される。
オレたちはあれからも学校に通いながら、修行を続けていた。

オレは類まれなる身体能力と肉体の頑強さを活かして格闘術や武器での戦闘術を中心に、トリアは生まれながらに才能があった破壊魔法と召喚魔法を中心に、時には別々に、また時には一緒に互いを高め合っていった。

トリアはその才能を見込まれて、魔術師ギルドシルビア支部にも迎え入れられ、そこでも様々な魔法の知識や技術を教わっているようだった。

「トリアの魔法は本当に強烈だなぁ。これなら来月の調査団の募集、合格は間違いないな!」
修行を終えて水を飲んでいるトリアにオレがそう言うと、彼女は少し照れくさそうに笑った。

「えへへ、ありがとう。でも私なんかまだまだだよ」
そう言って謙遜しているけど、彼女の魔法技術は相当なものだし、その才能も本物だ。

「コウくんも合格間違いないね! だってそんな威力のパンチ打てる人なんていないよ、あはは」
そう言って笑う彼女。確かにオレの身体能力と肉体の頑強さは、既に人外の領域に達しているかもしれない。

「まぁな。オレも合格は間違いないと思うし、あとは一緒に行けることを祈るだけだな!」
オレがそう言うとトリアもうなずいた後、少し不安げな表情をする。

「……でも調査団の募集には世界中から凄い人たちが集まってくるんでしょ? コウくんの身体能力は唯一無二だけど、魔法に関しては私なんかよりすごい人ばっかりだと思うんだよね……」

そうなのだ……実はこの調査団には既にかなりの人数が集まっているようで、志願者はすでに千人近くに膨れ上がっている。

調査団ではそれぞれの専門分野ごとに班を分けることになるようなんだけど、その分野も様々だ。
戦士や騎士、学者などで構成されている他、中には魔術師ギルドから選ばれた数人の魔術師たちからなる「魔法班」もあるらしい。

まぁトリアはこうやって心配しているけど、彼女なら絶対に大丈夫だろう。
この年齢でこれだけの才能を発揮している魔術師なんて、そうはいないはずだ。いたらもっと噂が聞こえてきているだろう。

オレがいろいろと考えていると、視線を感じた。
ふと振り返ると、トリアがこちらを見て微笑む。
その笑顔に思わずドキッとしてしまう。

「どうしたんだよ? そんないきなり笑って……」

「えへへ……なんかね、こうしてコウくんとずっと一緒に居られるのが嬉しいんだ」

それを聞いたオレは、さらに嬉しくなった。オレもまた、トリアと一緒にいられることが幸せだと思うから。

「オレもだよ」
オレは恥ずかしくて顔を背けながら、そう言った。

「あ! もうコウくんってば、また照れてるの?」
そんなオレを見てトリアが笑う。

「う……うるさいな!」
オレがそう言うと彼女はますます楽しそうに笑った。

最近のトリアは、以前にも増して美しくなったと思う。可愛らしさも残しつつ、女性らしさも増している気がする。
そんな彼女を見ていると胸の鼓動が早くなるのを感じた。
そんなオレの気持ちに気付くはずもなく、彼女は楽しげに笑う。

「さぁ! 修行も終わったし、今日は久しぶりに一緒に遊ぼうよ!」
そう言ってオレの手を引く彼女の笑顔を見て思うのだ。
(この笑顔を守りたい……)
と。

そして同時にこうも思った。
(いつまでもこんな日が続いて欲しいな)
そう願わずにはいられないオレだった……。


それから数日後のことだった。
募集試験まであと数週間に迫っていたオレたち。

そのオレたちの前に、旅の途中でシルビアに立ち寄ったという冒険者たちが現れた。
なんと彼らは、勇者アクシウスとその一行らしい。

勇者アクシウスの噂はオレもよく耳にしていた。
たった数人のパーティーで、魔物の群れ1000体を狩ったという伝説に始まり、魔王の側近を1人で倒した伝説、魔界の一部に乗り込んで制圧した話など、その伝説には事欠かない。

「いやぁ……まさかこんな田舎町にも勇者様がいらっしゃるなんてな!」
オレが興奮気味に言うと、トリアも目を輝かせて言う。
「うん! 私、本物の勇者様って初めて見たよ!」

勇者、という響きだけでなんだかカッコいい。
一目見たいと思い、トリアと共に彼らが宴を開いているという酒場を覗いてみることにした。

酒場の中に入ると、すでにかなりの数の人たちが集まっているようだった。勇者とその一行は彼らを目当てに集まった大勢の客たちに囲まれて、その姿が隠れてしまっている。

「お客さんたち、すまないが今日はここまでだよ。勇者様もお疲れなんだから、今日のところはひとまず帰ってくれ!」
酒場のマスターらしき人が大声でそう言うと客たちは文句を言いながらも帰っていった。

そしてようやく人の波が引いていき、彼らの姿が見えるようになってきた。

まず目に飛び込んできたのは銀色の鎧を着た青年だった。その青年は金色の髪を後ろで束ねており、端正な顔立ちをしていた。
歳は20代前半といったところか。圧倒的な存在感を放ち、彼が勇者であることは誰が見てもわかるだろう。

彼の横には、これまた銀色の鎧を纏う美女が立っている。透き通るような白い肌に長く美しい金髪を持つ彼女の姿は神々しさすら感じる程だ。年齢は勇者と同じくらいだろうか?

その横に立つのは白いローブを纏った美少年で、紫色の綺麗な髪と瞳が印象的だった。彼は聖職者……なのだろうか。

他にも屈強な肉体が服の上からもわかる強面の男性。彼は武闘家や格闘家だろう。

「あれが……勇者アクシウス」
オレがそう呟くと、トリアは目をキラキラさせながら言う。
「すごいね! 本物をこの目で見れるなんて!」
オレとトリアがそんな話をしているうちに彼らの周りの人だかりも少なくなっていた。

すると、なんと彼らの方から話しかけてきたのだ。
「やあ君たち。何か用かい?」

そう言って微笑むのは勇者アクシウスだ。その微笑みの眩しさに思わずドキッとする。

「あ、いえ……すみません、勇者様なんて初めて見たから思わず……」

オレが照れながら言うと、もう一人の男性が言う。
「ふふ、そうか。初めまして。君たちは冒険者を目指しているのかい?」

そう聞いてくる彼にオレは首を横に振って答えた。
「いえ、オレ達は今度の調査団に応募するつもりなんです!」

オレの答えに、勇者アクシウスは笑いながら言った。
「……それは奇遇だね。実は僕たちも調査団に応募する予定なんだ。君たち2人とも合格するといいね」

「ありがとうございます! あ、オレの名前は……」
オレが自己紹介しようとすると、勇者アクシウスはニコリと微笑んで言った。

「知っているよ。君のような身体能力の持ち主はそういないからね」
まさかオレのことを知っていたなんて驚きだ……勇者ともなれば、やっぱり色んな情報を集めているんだな。
そんなことを思いながらも、自己紹介をしていなかったことを思い出して慌てて続けることにする。

「あ、オレはコウです! そしてこっちが……」
「ト、トリアです!」

オレに続いて自己紹介をする彼女に、勇者アクシウスは優しく微笑んで言った。
「コウくんにトリアさんだね。僕は勇者アクシウスだ。そしてこっちは……」

それからオレ達はしばらく彼らと会話を楽しんだ後、家へと戻ることにした。


次の日からオレは修行の合間に、魔法や格闘術の勉強にさらに力を入れた。

そしてあっという間に、調査団の募集試験の前日になったのだった。


~続く~

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