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自作100文字創作集

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これまで書いた100文字小説、詩集です。 1つ5秒で読めます。良かったらどうぞ。
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#超ショートショート

足跡【自作ショートショート㊻】

足跡【自作ショートショート㊻】

トラックには大小様々な足跡がひしめいていた。白線の手前にとりわけ強く踏みしめられた足跡があった。何度も力を込めて踏みしめられたように、地面を抉るその足跡は、スタートラインの手前にはっきり残っていた。

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第四十六作目。
人が何か一歩踏み出す時には、踏み出してからよりも、踏み出す直前に、最もエネルギーを必要とするのかもしれないという仮説を表現しました。

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好み【自作ショートショート㊺】

頭と尻尾どっちから食べるのが好きだい?さっぱりした尻尾から食べるのも乙だけど、頭からが王道だよねえ。たい焼き屋の親父、今日はやけに饒舌だ。あれ、親父の目こんな丸かったっけ。口はこんな尖ってたっけ。歯はこんなに。

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第四十五作目。
どの魚類よりも長く地上で生きている個体TAIYAKI。彼らは町のどこかに

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ホットミルク 【自作ショートショート㊹】

コーヒーが好きだけど、早く眠りたいからホットミルクを飲むようにしている。味はしない。気まぐれにコーヒーとミルクを混ぜてカフェオレを作った。眠りたいと眠りたくないの狭間。さあどっちに転ぶか。

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第四十四作目。

ホットミルクは眠り易くするもので、コーヒーは眠りにくくするもので、相反する意味があることが面白いなと思い、詩のような形でまとめました。

以下は

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トナカイさん[自作ショートショート㊸]

笑い者になっても主役を立て続ける真っ赤なお鼻のトナカイさんのおかげで、サンタさんは遠方までプレゼントを届けることができる。笑い者になれるトナカイは強い。そもそも、人を笑わせることは立派な才能だ。

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第四十三作目。

真っ赤なお鼻の〜♪です。

ではまた。

あれ!?私って、、[自作ショートショート㊶]

「あれ!?私って収入少なすぎ!?フォロワー少なすぎ!?」ラッピングバスが通り過ぎた。他人と比較しても仕方がなかろう、と笑っていたらもう一台通り過ぎた。「あれ!?私って幸福度低すぎ!?」男は考えこんでしまった。

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第四十一作目。
比較否定論へのアンチテーゼです。
比べることもあるさ

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アリとキリギリス[自作ショートショート㊵]

黒い群れはアリさん。毎日、足を使ってあくせく。目立つ緑色はキリギリスさん。特技を磨き個性を光らせる。それぞれ異なる才能を持っている。アリもキリギリスも電車に揺られてガタンゴトン。今日も明日もガタンゴトン。

-----------------------------------------------------------第四十作目。
ホワイトカラー、ブルーカラーと言う概念があります。それをもじ

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透明人間[自作ショートショート㊴]

私が優秀であることは、定量的に証明されていると男は言った。なるほど確かに、男の功績は数字で明らかだ。しかし、どうしたことか。男は透明だった。男の積み上げた数は男の外部にあるから目に見えるが、男は透明だった。

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第三十九作目。
これまでの結果や経験は、自身のアイデンティティを形作

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次世代へのバトン[自作ショートショート㊱]

託すことは、与えること、そして手放すことかもしれない。男はそう思った。歳はそう離れていないようだ。続ける、辞める、諦める、様々な選択肢の中、託すことを選んだ人がいる。ベビーカーが男の横を通り過ぎていった。

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第三十六作目。
次世代にバトンを繋ぐという考えがあります。
誰かがバト

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意味[自作ショートショート㉟]

意味を研ぎ澄ませていたら、意味が摩耗してしまった。理由にしても同じことだった。手のひらに残るのは激情のみだった。男は手のひらを見つめて気づいた。いつだって、己を突き動かすのはそれで充分だった。

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第三十五作目。
サブテーマは刀鍛冶です。

ではまた。

やる象[自作ショートショート㉞]

「やるぞう。」小さくそう呟いた。そうしたら横にやる象が立っていた。やる象はパオーンといななき、長い鼻を器用に使って僕を背中に乗せてくれた。地平線の向こうまで見えそうな景色が西日に照らされていた。

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第三十四作目。
絵本的世界観シリーズ、シマウマ、ハシビロコウに続き今回は象です。

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盾と矛[自作ショートショート㉝]

コンクリートに舗装された道路の傍らには一対の盾と矛が無造作に転がっていた。どちらが強いのか、道ゆく誰もが一瞬頭をよぎったが、すぐに歩きスマホで去っていった。

そう、この時代、武器など取らない方が利口なのだ。

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第三十三作目。
戦いと攻撃は性質が違う気がします。
戦いは面と向か

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ボリューム[自作ショートショート㉜]

「自分は薄っぺらい人間だが」が口癖の男だった。その前置きの後には決まって、傷一つない宝石のような言葉が出てきた。彼は雄弁だった。雄弁に似合わぬ枕詞は死ぬまで外れなかった。彼は厚みのある人生を送れたのだろうか。

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第三十ニ作目。
高校の時英語の長文問題で、self-defende

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望み[自作ショートショート㉛]

はっきりと撃鉄が落ちる音が聞こえた。握りしめた拳を一瞥したのち、親指を緩め、人差し指と中指をピンと立てた。拳ではない。彼の怒りを形取るにはこの形状が最適だった。彼の人差し指が男の眉間を指した瞬間、銃声が響いた。

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第三十一作目。
ぶっぱなーす、です。
書いてて思いましたが、完全

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コップの水[自作ショートショート㉚]

足りない。およそ半分ほど注がれている透明なコップを眺めながらそう思った。半分、も、入っているとは到底思えなかった。

コップの中では自分の流した汗、涙が静かに渦を巻いていた。足りているとは思えなかった。

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第三十作目。
半分も半分しか論と見せかけて、もう一捻りしてまっせ的な作品

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