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1人だったら研究者になっていない。研究者の斜めの関係をつくりたい。石川由希先生、石川麻乃先生

太田先生にご紹介いただき、双子でお二人とも研究者の石川由希先生、麻乃先生(以下、ゆき先生、あさの先生)にインタビューさせていただきました。

ショウジョウバエの行動進化とイトヨの生活史の進化

—どんな研究をしているかお聞かせください。

ゆき先生:私は、動物がどうやって進化してきたのか、どういう脳の回路や神経基盤で進化してきたのかを研究をしています。ショウジョウバエを材料として扱っています。

ショウジョウバエは、小さいながらも種ごとに行動が違ったり、好みが違ったりします。いろいろなショウジョウバエを比べることで行動がどんな風に進化してきたのかを理解しようとしています。

あさの先生:私は「生活史」を研究しています。例えば、生物が一生の間にいつ繁殖して、いつ成長するのか、など、どのように生物の暮らし方が変化してきたかという生物の生活様式の進化の研究です。

研究材料はトゲウオ科のイトヨという魚です。進化生物学のモデルと言われている魚です。

氷河期以降に、海から淡水に進出していって、池や川、湖などそれぞれの場所で、色んな色、色んな形になっていて、似ている場所だと似ているように進化しています。

原因となるようなDNAの違いが細かく同定できるようになってきているので、それをモデルにして、生物がどう進化してきたかをDNAレベルで明らかにしています。

イトヨのいいところは、メダカのように遺伝子組み換えがしやすいことです。原因の遺伝子などの仕組みが分かれば、実際にその遺伝子の違いを再現して、目の前で何が起こるか見ることができます。

オンラインであさの先生、ゆき先生にインタビューさせていただきました。

逆のテーマで研究をしていたかもしれない

—ありがとうございます。過去の記事を見ていて「今の研究対象は虫と魚に分かれていますが、昔は虫を一緒にやってました」という記事を見つけました。どちらから「そろそろ同じ材料をやめよう」と言ったんですか?どういう感じで分かれたのでしょうか。

ゆき先生:小学校、中学校、高校、大学、博士号を取得した研究室まで同じ場所にいました。

私は、大学の卒業研究の時から昆虫を材料にして、行動の研究をしていました。あさのは昆虫の生活史の研究をしていました。

私は行動の研究を深めるためにはどういう材料がいいのか、あさのは生活史の研究をするにはどういう材料がいいのかを探して、ポスドクになる時に、お互いにいいと思う材料に巣立っていきました。

あさの先生:卒業研究の時のテーマって、みなさん、分からないなりに決めますよね。実は、所属した研究室の先生がテーマを3、4つ提示してくれた中から、私たちが最初にやろうと決めたテーマはお互いに逆だったんです(笑)。

ゆき先生:逆だった逆だった(笑)!

あさの先生:最終的に、私はアブラムシの生活史の研究をして、ゆきはシロアリの行動を研究したんですが、最初は、私がシロアリの行動の研究をする、ゆきがアブラムシの研究をする、と決めていたんです。でも、先生の部屋のドアをノックをする前に、「なんか違う気がするな~」となりました(笑)。

ゆき先生:「一旦戻って話そうか」みたいな感じになりました(笑)。

あさの先生:部屋が8階だったから考え直す時間があったんですけど、もし1階だったら...もしかしたら逆の研究をしていたかもしれないですね(笑)。

—え~!なぜ思いとどまったんですか!?

ゆき先生:うーん、二人で「なんか違う気がするな~」と(笑)。

あさの先生:「逆にする?」って話し合いました。結果、よかったのか、悪かったのか... 。結局、同じだったのかもしれないですけど(笑)。

—「行動と生活史でどっちの方が向いてると思う?」と話したんですか?

ゆき先生:う〜ん、向いているかとかではなく、本当にやりたいのは逆だと思ったのかもしれません。不思議な感じです(笑)。

あさの先生:それが最初の分かれ道ですね。

それまでは小学校から大学まで同じ学校にいて、大学では同じ生物学科でした。しかも生物学科はひとクラスだったので、先生たちからすると、ワーキャー言う双子が同じところにいて、迷惑な状態だったと思いますよ(笑)。

研究室内で飼育中のイトヨの稚魚

思春期の友達は別々、コミュニティが重なった大学での共同生活

—過去のお話も聞かせてもらえたらと思います。生物に興味を持ったのは、家族でアウトドアやキャンプなどにたくさん行っていたからだとお聞きしました。もちろん納得感もあるんですけど、お互い同じ進路に行くことに抵抗感はなかったですか?

あさの先生・ゆき先生:ははは(笑)!

ゆき先生:ずっと双子で同じだったと思われるかもしれませんが、思春期は友達が別々でした。小学校から高校まで、クラスは別々で、共通する友達はそんなにたくさんはいなかったです。部活は一緒でしたが...なので、コミュニティはちょっと違ったんですよね。

あさの先生:でも、顔が似てるからお互いの友達はもう片方をちょっと親しく知ってる気持ちだったようです(笑)。

ゆき先生:私も、「あさのの友達めっちゃ話しかけてくるな~」みたいな感じでした(笑)。

大学に入って2人で暮らし始めました。大学では同じクラスだから友達も共通していて、その頃からすごくよく話すようになりました。

あさの先生:研究室も「一緒に行こう」と言う感じではなかったんです。ただ、同じ大学で、自分のやりたいことと研究内容が一致する研究室は限られますよね。

それで「この研究室がいいな」と思ったら、お互いにそこがいいなと思っているんです。でも、相手がいるからといって諦めたくはないんですよね(笑)。

最後は意地になってて...1ミリも譲りませんでした(笑)。

ゆき先生:うんうん(笑)。

あさの先生:同じラボに行くのはちょっとどうかなとは思ってるけど、だからといって自分が引くほどじゃないと思っていました。

—めちゃめちゃおもしろいです!中高大の、どの時期でも構いませんが、めっちゃ喧嘩したエピソードってあるんですか?

あさの先生・ゆき先生:してましたね(笑)。でも、原因は些細なことですよ。

ゆき先生:お風呂掃除をどちらがやるか、とかです(笑)。日々の些細なことで決定的なものではないですね。

あさの先生:実家にいた時は、喧嘩しても両親がいい加減にしなさい、と止めてくれるのですが、大学に入って二人で暮らしていると、そうやって止めてくれる人もいないので、どこかのタイミングでお互いに収めないと日常生活が送れなくなるんですよね(笑)。

なので、だんだん妥協して喧嘩がなくなってきました。

—夫婦みたいな感じですね。

あさの先生・ゆき先生:そうそう。共同生活ですよね(笑)。

あさの先生:二人しかいないので仕方ないって感じでした(笑)。

—お家では進路や研究のお話もしてたんですか?

ゆき先生:お互い興味や関心が似ているし、同い年だから、進路などの問題や決断の時期が同じなので、いろいろな問題を共有して解決したり、情報を交換したりしていましたね。

あさの先生:中学高校時代も、テスト勉強で出そうなところを一緒にまとめて問題を出し合ったりしてました。

ゆき先生:あれは我ながらずるかったよね(笑)。

昔から基本的にいろいろなことを一緒にやっていましたね。大学に入ってからより仲良くなった感じです。

あさの先生:今も実家帰った時や、そうでない時もLINEとかで研究の話もします。夜に研究や学生のこととかを話したりしますね。

ゆき先生:最近やっているおすすめの解析方法とかの情報の交換もしていますね。あさのがやっていることは、いざとなれば聞けばいいやと思っている節もあります(笑)。

—めちゃめちゃおもしろいですね〜。

あさの先生:それから、去年まで私は国立遺伝学研究所(遺伝研)に所属していたんですが、その所属研究室にゆきが実験しに来たりすることもありましたね。

ゆき先生:そうそう。あさのが東大に異動した後に、私が遺伝研に実験をしに行くと、「あれ?石川さん東大行ったんじゃなかったの?なんでいるの?」ってみんなが混乱します(笑)。

—おもしろいです!!

ゆき先生:遺伝研の廊下で業者の方に「こんにちは〜」って挨拶されて、「これはあさのだと勘違いされてるんだろうな〜」と思ったこともありましたね(笑)。こちらは間違われても気にしてないので、いいんですけどね。

—もう慣れているんですね。

あさの先生:生まれてから、ずっとそうですからね(笑)。逆に、双子という立場を上手く利用させてもらったことも多かったです。

ゆき先生:「顔が二枚ある」みたいな感じです(笑)。なんだかんだで友達や顔見知りが増えるので、困ったときに頼れる、情報を交換できる友達がいることで、色んなハードルが下がりますよね。

みんなの集まれる場所をつくりたい

—お二人の中でそういう関係があるから、コミュニティをつくろうと思われたのですか?

ゆき先生:一昨日、開催した生態進化発生コロキウムのことですね(インタビューは12月29日に実施させていただきました)。

毎年年末に開催している研究会なのですが、私たち2人とも飲み会が好きで、友達づきあいの延長みたいな感じで始まった会です(笑)。

あさの先生:年末に忘年会とかをやるじゃないですか。そうすると、誰かと話すたびに、お互いにどんな研究をやっているかをいちいち聞く、ということが繰り返されるので、その繰り返しはなんか無駄だなって思ったんです。

ゆき先生:なので、昼過ぎくらいから、お互いに今何やっているかを一旦話す研究会をやって、そのあと夜から飲み会に入ろうという企画を始めました(笑)。

あさの先生:この会を始める最初のモチベーションとして、自分自身がポスドクとして遺伝研に行ったことで大学から少し離れたので、自分が元々いたコミュニティとの繋がりがなくなった感じがしたところもあります。

ゆき先生:確かに、私にも似たところがあるかもしれません。

あさの先生:私はドクターからポスドクになる時期に、研究材料を昆虫から魚に変えたこともあって、自分でコミュニティを作っていかないと、大学のときにあった研究まわりの友人関係が途切れてしまうんじゃないかって思ったんです。

その時に、どこかにみんなで集まれる場所を作っておいたら、自分も嬉しいし、友達も嬉しいんじゃないかと思っていました。

ゆき先生:私もそうですね〜。

私も研究材料をシロアリからショウジョウバエに変更して、神経科学のラボに初めて入ったので、それまでいた進化生物学や生態学から少し離れてしまいました。

ポスドクで移った先の大学の人間関係も狭かったので、自分の中で「誰か友達欲しい」という欲求がありましたね(笑)。

自分が発表すれば研究のモチベーションも高まるし、古くからの友達の最新の成果も知れて、新しい友達が何やってるのかも知れる、そんな場所が欲しくて作ったのかもしれません。

えーと、最初はどこでやったんだったっけ?東大?

あさの先生:そうそう。東大。

ゆき先生:東大に先輩の研究者がいたので、お願いしたら場所もすぐに借りられて、「やろうよ〜」って言ったら初年度からぞろぞろ人が集まってきました。次の年からも、新しい人がどんどん参加してくれて、そこから友達が広がったりしましたね。

最近では、出版会社に勤めている方が来て下さったり、あと学生さんなどの若手も気軽に発表してくれる場になったりしてますね。

あさの先生:学生から「卒研のテーマを相談したいから5分だけ時間ください」とかもありましたね。でも、聞いてる人はみんなコメントしたいので、結局5分じゃ収まらないんですよね(笑)。

ゆき先生:その後の忘年会で、色んな分野の人がその学生さんを捕まえて「さっきの話だけど、もっとこうしたほうがいいよ」って言い合うんです(笑)。

私たちがやることは、人を集めることだけなので、少ない労力で続けられるのがいいところですね。

あさの先生:忙しくても、私とゆきでお互いに補完しながら進められるのもいいことです。持続できるくらいの少ない負荷でやって、今後も毎年集まれたらいいなと思っています。

ゆき先生:今年は、はじめましてがコロキウムだった学生さんが学位取得の年になっていて感慨深かったですね〜。あの時から9年経ったんだ~って思います(笑)。

—今年9回目ですか?

あさの先生・ゆき先生:そうですそうです!

—来年記念すべき10回目!盛大にやらないとですね!

ゆき先生:そうですね!去年(2020年12月)は、コロナの影響でウェブセミナーが多かったこともあり、研究発表はなしにして、オンラインの忘年会だけにしました。

今年(2021年12月)は前半は東大でオンサイトで研究発表をして、2時間後くらいにオンラインで飲み会しました。オンライン飲み会には遠くからでも参加できるので、繋がりを保つという観点では意味があるのかなと感じました。

ノアサガオの中で繁殖するカザリショウジョウバエ

研究を楽しむ空気感を大事にしたい

—コミュニティからどんどん発展していっている事例があればお教えいただきたいです。

ゆき先生:研究で、ですか...うーん…。

—いつもこの質問をしたくなってしまうのですが、「権利や色んな問題でパパッといかないんだよね〜」ってみなさん仰っています。

ゆき先生:確かに、本当のコラボにつながる事例は少ないですし、実際そこにあまり価値を見出していないのかもしれません。むしろ、異分野の人同士が触れ合って、「こういう考え方もあるんだ」と感じる場になればと思っています。

—そこは完全に差別化しているんですね。

ゆき先生:そうです。例えば、同年代で進化の研究をしている人同士でも、魚を研究している人と、虫を研究している人が、ガチでコラボすることは難しいですよね。でも、逆に材料が違うので、技術を教わっても同じ仕事にはならないので、スキルのシェアはしやすいんです。

私も、あさのの所属していた遺伝研の研究室に実験しに行けたのは、コロキウムにあさののボスが来てくれていて、既に仲良くなっていたからだと思います。そういうメリットはありますね。

あさの先生:共同研究というよりは、学生さんがポスドク先を探す、つてを探す場として使っているように感じます。

—めちゃめちゃいいですね!

あさの先生:今回も、Twitterでコロキウムを知った若い学生さんが「自分の大学には魚の研究をしてる人しかいないけど、哺乳類の勉強をしてみたいと思い、哺乳類に詳しい方がいると聞いて来ました」って言って、来てくれていました。

ゆき先生:えらいよね。オンラインだと発表の後に直接詳しい話を聞くとかできないけれど、今回はオンサイトだったから質問もしやすくてよかったですね。学生さんにとっては色々と聞けるいいチャンスよね。

あさの先生:いわゆる一般的な研究会や学会は、淡々と研究成果の説明をすることが多いですが、コロキウムでは、もっとエピソード感を出して話してもらっています。

ゆき先生:私たちも結構野次を飛ばします(笑)。「いいぞいいぞ〜!」「その実験アツい!やりたい!」みたいな(笑)。空気がワイワイしている感じです。

本来、研究の楽しさって「それおもしろい!」みたいなところからきているはずなんです。なので、その空気感は大事にしています。

—その空気感めちゃめちゃいいです〜!

研究者のコミュニティって、他にも多いんですか?生物とか進化系ですよね。物理系とか工学系とか...?

あさの先生:どうなんでしょう?いろいろな学会の「若手の会」とかはあるみたいですけどね。学会の中で若い学生さんたちが交流する場を作るのが難しいから、学会がわざわざそういう場を作っていることが多いと聞きますね。

私たちは何といっても飲みたいのが一番の動機なのですが...(笑)。

—絶対そのほうがいいと思います!コミュニティってそういうものですよね。目的を意図してつくるんだけど意図しすぎないというか...

ゆき先生:そうそう。学会に参加することは学会で顔を売るという意味がありますが、コロキウムに来ても学会に顔は売れない(笑)。友達しかできないです(笑)。

義務感ではなく楽しむためにする

—コミュニティを自分から立ち上げて大変だったことはありますか?

ゆき先生:立ち上げるのは大変じゃなかったですが、やっぱり続けることが大変ですよね。続けすぎると辛くなってきて、辛い中続けると、意味が薄れていく気がするんです。

やりたい人がやりはじめて、やりたくなくなったらやめる、といったように、コミュニティがポコポコできてはなくなってくのもいいと思っています。

あさの先生:主催者が代替わりしてまで頑張って続けようと思うと、前のコンセプトをどう継続するべきなのかとか、何年まで続けないといけないといった「仕事感」が出てきてしまいますよね。

ゆき先生:せっかく楽しくやってきたのが義務みたいになってしまうと続きません。

あさの先生:大変なことをなるべく減らして運営した方が、細く長く続きます。私たちの場合は、学生さんがちょいちょい顔を出せるくらいの規模で、あまり大きくしすぎず、義務感をなるべく排除するようにしています。

ゆき先生:会計も報告書もありません。企業や大学から協賛を取ろうとすると大変なので…。

あさの先生:大きいのは学会に任せればいいんです。なるべくミニマムな規模で自分で立ち上げれば、自分でやりたいようにできるし、やめたい時にやめられるので一番いいと思います。

研究会やコミュニティを作るのは、学生さんにとっても、自分やそのコミュニティのコンセプトを考えるいい機会になると思います。先輩がやっていたからではなくて、自分はどうしたいのかを問われますよね。

上司でも友達でもない斜めの関係の先輩

ゆき先生:もうなくなったんですけど、進化発生学分野の若手の会として「エボデボ青年の会」という会があって、私たちはその2代目の幹事をやっていました。

そのエボデボ青年の会で、同じ業界だけど同じラボではない先輩たちに、「お前は何がしたいんだ、どういう風に考えてるんだ」って問われたりディスカッションする場が良かったんですよね。

自分の研究を今後どう展開したいのか考える時に、自分のラボだと狭い範囲の話になってしまうし、大御所の先生と話すと怖いし...ちょっと上の他のラボの先輩方が仲良くしてくれたことがすごく良かったんです。

そういうことをもっと簡単な形でできたらいいなっていうのがありました。

そう考えると、今のコロキウムでは自分は逆の立場に立っていますね。これからドクターをとる若い学生さんに「このあとポスドクどうしたらいいのか」と聞かれて、例えば「ワークショップ企画しなよ」とか「顔売っていけ」とか、そんな色んな話をするような場所になっています。

—ありがとうございます。コミュニティの話から少しずれるのですが、相談して、影響を受けた方はお二人一緒なんですか?それともお互いに違うのでしょうか。

あさの先生・ゆき先生:たくさんいますけど、それこそ前回このインタビューを受けていた太田さんとかです(笑)。

—太田さんは、めっちゃぶっ飛んでました(笑)。

あさの先生:理研の倉谷滋先生の研究室に、太田先生や、今、東大の入江先生などがポスドクとしていらっしゃって、飲み会では、そんなイケイケの若い先輩たちに囲まれて「お前何やりたいんだ」ってよく問い詰められました(笑)。

最初に囲まれた時には、自分がやりたいことを明確に言えなくて、「自分のやりたいことも言語化できてない自分がいる...」とショックでしたね。それで、自分で勉強したり考えたりしては、また先輩たちに話しにいってましたね。

ゆき先生:会うたびに言われてたもんね(笑)。

—わかります〜(笑)。めちゃめちゃ素敵な方でした。

あさの先生:あの世代が、私たちのお兄さん世代で、色んなことを教えてもらったり、一緒に考えたりしてくれました。本当に勉強になりましたね。そういう意味では影響を受けた先輩は、私もゆきも同じかもしれません。

—飲み会とかも一緒にいらっしゃったんですね。

ゆき先生:「お前ら双子、元気がいいな」「あさのはどうするんだ、ゆきはどうするんだ」って可愛がってもらいました。

あさの先生:実際、太田さんが海外でポストをとっている背中を見ていて、開拓するってこういうことかって思います。今でも「この人はこんな風にステージをあがっていくんだな」って感心させられます。

ゆき先生:すごいよね。

あさの先生:その時にできた斜め上の先輩たちにはずっと「こういう生き方があるのか」って影響を受けています。

ゆき先生:ちょっと前をずっと走ってくれているのが嬉しいんです。

あさの先生:若い頃、学生の頃にできた繋がりが、今も影響しつづけてるというのがいいことだと思っています。今の学生さんも、若い時にそういった繋がりを持てると、一生の財産になると思いますね。

—僕、学生の時、そういう人に出会わなかった気がしています。

あさの先生:出会わないと辛いというか、面白みが少ないかもしれませんね。

最近気をつけているのは、多様性です。忘年会がメインで年末に開催していることもあって、帰省がてら、企業に就職した社会人も顔を出してくれるんです。

—研究職の方も色々いらっしゃいますもんね。

あさの先生:一度、教育系のモノ作りの会社に就職した友人に話してもらったこともあります。学生さんには色んな道があるんだよって知って欲しいです。

ゆき先生:9年前にコロキウムを始めた時より、私たちもだんだん年を取ってきて、「下の世代にこういうキャリアプランを見せたい」って思いが、徐々に混ざってきていますね。

あさの先生:色んなキャリアの方々、学会で話してもらうことはちょっと難しいですが、コロキウムなら手軽なんですよね。

ゆき先生:土原さんもきてくださいね。

—ぜひぜひ。僕もかなり行きたくなっています!!

あさの先生・ゆき先生:来年、是非やりましょう(笑)。

シェアで分野を融合、拡張していく

—最後に未来のこととかもお聞きしたいです。若手の学生に多様なキャリアプランを見せてあげたい、斜め上の関係を作ってあげたいというのがありましたが、ご自身はどこを目指しているのでしょうか。

ゆき先生:難しいですね…(笑)。楽しく研究できたらいいなってことが、広い意味での目標です。

もう少し具体的に言うと、今、神経科学と進化生物学と生態学の真ん中あたり、融合したところを研究しています。それがすごく面白いので、なんとか形になるような研究がしたいです。

—他の人や分野を繋げることが人生の軸としてあるんですね。

ゆき先生:私、一個の専門分野では勝負できないんですよね。ひとつの分野に入り込むとできないことや、分野と分野の真ん中あたりにしかない面白さがあって、あさのも私も飲み会が好きで、友達もそれなりに多いので、自分ならそういう研究ができるんじゃないか、面白いんじゃないかって思ってやっています。

あさの先生:私は、例えば、ある遺伝子の変化によって進化した生物が本当に生態系の中でどういう働きをしてるのか、生態系全体への影響を見てみたいという夢を持っています。

分子と生態系を繋げて見られれば、自然界の中で、進化がどう起こるのかがよりリアルに予測ができるかもしれません。進化の予測ができれば、次のフィールドが広がっていきます。

研究者によると思うんですけど、私は一人でいたら研究者になっていないと思うんです。研究者っていう人間たちが魅力的で、そんな人たちと話している中で「こんなに楽しい人生があるんだ 」って思ったんです。

ちなみに、私もゆきも修士の時に就職活動もしてみたんですよ。

—え!そうなんですね。研究者一本かと思っていました。

研究者仲間の生き方が一番面白そうだった

あさの先生:研究者一本で来たと思われがちなのですが、途中まで結構真剣に就活していました。もちろん研究は面白かったんですが、その後の道が厳しいと言うのもわかっていたので...。

博士課程に進んだら、ポスドクになっても、30歳になっても、どこにいるのかわからない、定職に就かない状態になると思ったので、ちゃんと就職して、楽しい人生が送れるんだったら、お金ちゃんともらえたほうがええやんって思ってました(笑)。

ゆき先生:意外と真っ当なんですよ(笑)。

あさの先生:ただ、就職活動してみて、会社がそこまで魅力的なコミュニティに見えなかったんです。ビックサイトにいるおじ様とかお兄様、お姉様方をつかまえて、「会社にいて、すごく楽しい時はどんな時ですか?」と聞きまわっていました。

—ははは(笑)!

あさの先生:何社か良いなって思うところもありましたが、大半の方が面白そうな話をしないんですよね。それに比べ、太田さんとかは悩みながらワーワー言いながらもやってる姿が楽しそうで、もし許されるなら、その中で一緒に研究者として人生を歩んでいくと面白い人生になるかもって思ったんです。

ゆき先生:それで「これはやってみるしかない」と思いました(笑)。

あさの先生:「一度きりの人生ってみんな言うけど、こういうことなのかな、就職しちゃうと後悔するぞ」って思いました。その時に、誰も仲間がいなかったら研究者になっていなかったでしょうね。

—めちゃめちゃおもろいです!!

研究って面白いなって思える場所でありたい

あさの先生:だから、みんなに「就活したらいいよ」って言っているんです。あのくらいの年代の時にしか、「あなたの人生何やってきたんですか」って大人に聞ける時期はないと思うんです。

大学生はその特権を持っています。半年から1年くらい研究は止まるかも知れないですが、それ以上のものを得られると思います。

ゆき先生:色々悩んだ結果、ドクターに行きたいんだったら覚悟も決まるし、やるべきこともわかってきますよね。

あさの先生:なので、学生さんには就活してほしいし、色んなものを見てほしいです。

ゆき先生:そうそう。外の世界を見てほしい。

—僕も一度外に出て、研究者の人達とお話するのがめちゃめちゃ楽しいので、「こういう関わり方もあるんだ」ってその当時知ってたら良かったなって思います。

あさの先生:そうなんです。土原さんは、いわゆる「営業」「開発」「経理」みたいな典型的な形ではない仕事をされていますよね。そういう生き方があるんだってことを学生さんは知らないんです。そんな生き方も若いうちに知っておいて、自分の進路選択に生かしてほしいです。

ゆき先生:学生さんには、全員研究者にならなくてもいいから、ちょっと研究に足を踏み入れて、修士くらいまで楽しくやって、「楽しかったな、論理や自分で調べる能力とか、学べることはあったな」って企業に旅立って行って、ふとした時に「あの時面白かったな、変な先生いたな」って思い出してもらえると嬉しいです(笑)。

広い意味では大学や研究業界がそういうわいわいした場所になって欲しいってことですね。

あさの先生:時々飲み会に来てくれてね(笑)。

ゆき先生:身近な夢(笑)!

—そのサイクルが次々生まれていくフェーズですよね。

ゆき先生:あさのは自分のラボを持ったから、ついにそのフェーズですね。私も早くラボを持ちたいですね。

あさの先生:でも、ゆきは既に結構学生さんを指導してる経験があるんです。

ゆき先生:そう、私は助教から名古屋大学に入ったので、今のボスの下で学生さんの指導をしています。あさのはしばらく学生の少ない研究所にいたから、今年から学生さんとはじめましてなんです。

—学生さんへの接し方とかもまた双子で共有ができますよね。

あさの先生:いいでしょ。

ゆき先生:お得なんです。

—たくさんお話していただき、ありがとうございます。

あさの先生・ゆき先生:研究の話をあまりしなかったですけど、参考になりますかね。

—記事も含めて色んな人が見ていただけたらいいですし、「こういう楽しい方たちいるんだ、こういうコミュニティあるんだ」って知っていただけることに価値があります。

ありがとうございました。

あさの先生・ゆき先生:ありがとうございました。


先輩研究者の皆様の悩んだこと、どうやって乗り越えたか、成功の裏側などをどんどん発信していきます。
次回もお楽しみにしていてください。

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