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映画と車が紡ぐ世界chapter101

バタフライエフェクト トヨタ セリカ 1800Gt-ts TA64型 1982年式
The Butterfly Effect Toyota Celica 1800Gt-ts TA64 1982


”バタフライ・エフェクト”という花屋に 
カノジョは務めていた

Snap!

「きゃっ!」
リンドウの花に向けていたシャワーが 
突然のフラッシュで 空いっぱいに広がり ほんのり虹が浮かんだ

「ごめなさい! 
 綺麗な花が沢山並んでいたので ついシャッターを切ってしまいました」
白いTシャツに坊主頭の男が言った

「いえ大丈夫です 
  私こそ 大げさに叫んでしまって・・・恥ずかしい・・・」

どこまでも 淑やかなカノジョ
そこで男は 少しだけ甘えて 花と君の写真を撮りたいと申し出た
Noとは言えない性格なのだろう 
カノジョは少しだけ困惑した顔を見せたが 
申し出を受け入れた

「この紫の花は 何ですか?」

「トルコキキョウ 9月の花です 花言葉は”優美”」
条件反射のように説明する
どうやら 花の話になると 前のめりになってしまうようだ

「こちらの黄色い蝶のような花は?」

「それはビオラですね 花言葉は”誠実”です」

「なるほど どちらも 貴方を指しているようですね!」

男のポロリと発した言葉に にっこり笑うカノジョ
それは 最前に見た リンドウのような笑顔だった

そんなカノジョに礼を言うと 男は路地を右に曲がった
そこには 1982年式 トヨタセリカ1800GT-TSが停まっている

助手席の戻った男は 運転席の男・・・僕に言った

「ほら 写真を撮ってきたぞ!
 残念だけど カノジョ 右手には サファイヤの指輪はなかったよ
 今更 カノジョの人生を狂わせちゃ いけないよ
 もうあの娘は 別の人生を歩んでいる」

カメラの画面には 肩まで伸びたロングストレートの髪を 
カチュウシャで抑えた女性が写っていた 

変わらないな・・・

明日・・・ 僕は 仕事で日本を発たねばならなかった
もうこの国に帰ることはないだろう 
そう思ったとき 
もう一度カノジョにプロポーズしようとした しかし・・・
カノジョは 
もう 僕が渡していた切符を捨ててしまったようだ・・・ 

「そうだな・・・ 」

Jiroは僕の肩に そっと手を置いた 
「お前はいい奴だよ 俺の友なんだから! またいい出会いがあるさ!」

Jiroの慰めが 
ケセランパサランのようにふわりと 空中を彷徨う中 
僕はGT-TSを 発車させた 

さ よ な ら・・・

ビオラに水をあげようとして 屈むカノジョ
すると
ネックレスにつけられていた 
サファイヤの指輪が 襟元からこぼれ出た

「あら 素敵な指輪ね 彼氏から?」
年配の女性客が言った

「えぇ・・・ これは約束の切符なんです」
カノジョは ロイヤルブルーの原石を見つめた

サファイヤの石言葉は”誠実”
私は ずっと あなたを待っている
花屋の仕事は 
水をたくさん使う
だから こうしてネックレスのペンダントにしている

いつも あなたを感じられるように・・・

いつ迎えに来てくれるの・・・
カノジョは フッとため息をついて 空を見上げた

♪Adele - Someone Like You♪

バタフライエフェクト 
ほんの小さな出来事・・・
もし 彼が渡したのが イヤリングだったら 
彼は カノジョの想いに気付いただろう

彼にはエヴァン(Ashton Kutcher)のような能力はなかった・・・

アマゾンを舞う
1匹の蝶の羽ばたきが 遠く離れたシカゴに大雨を降らせるように
ほんの小さな出来事が 
時間とともに 巨大な結果を導く 

GT-TSが発車したとき 
ボンネットにいた モンシロチョウが フワリと飛び立ち
リンドウの前に立つカノジョの掌に舞い降りた  

「あらっ モンシロチョウ!!」

バタフライエフェクト・・・ 
小さな 小さな 出来事が・・・
彼らのstoryの続編を紡ぐのか それは モンシロチョウだけが知っていた


※9月19日 トーマス・ブレーク・グラバーが長崎・大浦に
    グラバー商会を設立しました グラバー氏の夫人ツルは 
 オペラ”マダムバタフライ”のモデルと言われています

※ 映画バタフライエフェクトに1982年式セリカ 1800Gt-ts が登場します

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