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年賀状

 最近はすっかり年賀状を書くことは無くなってしまった。高校生、大学1回生くらいまでは年賀状を書いていたのだが、それ以来1枚も、出しても1枚か2枚くらいしか書かなくなってしまった。そして無職になって以来、この季節になると、新卒入社1年目の年末のことを思い出すのだ。

 新卒入社1年目の年末、僕はふと思い出したのだ。この国には年賀状という文化があることを。何年も年賀状を書いてこなかった僕は、クリスマスをかなり過ぎるまで年賀状の存在を忘れていた。入社1年目の新人が会社の人、せめて同じ部署の人達に年賀状を出さないことは、いくら僕でも失礼極まりないことはわかった。失礼どころではない。無礼であろう。年賀状は、確かクリスマスまでに出さないと、元日に届かないシステムだったはずだ。クリスマスを過ぎるまで年賀状の存在を忘れていた僕は、その時点で礼を失していたわけである。僕は大いに焦った。

 しかも殆どの同僚の住所を知らないことに気がついた。おそらく同期は事前に聞いて回っていたのだろう。僕だけが出遅れてすっかり取り残されてしまっている状況だった。このままでは部署で干されてしまう……そう考えた僕は年賀状の作成に大急ぎで取り掛かることにした。年が終わる3日前の出来事である。

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