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わたるんの映画感想文たち

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映画について好き放題書いた感想文たちです。作家に想いを馳せるのが好き。
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ひとの居場所は、ひとの中に(ミュージカル『この世界の片隅に』感想文)

ひとの居場所は、ひとの中に(ミュージカル『この世界の片隅に』感想文)

前日譚

何としても行かねばならぬ、と思った劇だった。
アンジェラ・アキが作曲であるというニュースがまず第一に衝撃的であったこと。アンジェラ・アキといえば『手紙』で、中学時代の自分はなんとこの歌に救われたことか。
もうひとつ。
昨年、『千と千尋の神隠し』の舞台版を見たくて、先行販売に臨んだが開始時刻にアクセスするや否や急にロードされなくなり、PCとスマホとiPadの三機で応戦したにも関わらず惨敗を

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重なる影は濃くなる筈だ、と (映画『PERFECT DAYS』レビュー)

重なる影は濃くなる筈だ、と (映画『PERFECT DAYS』レビュー)

社会の中でスポットライトを浴びるわけではない人たちが、木漏れ日に照らされているような、そんな映画だった。
変わらない "ような"ものがあって、そこに刻一刻と形を変える光が当たっては消え、当たっては消えてゆく。
社会の中でスポットライトを浴びないなんて普通のことで、でもそこには平均できるようなものなんてなくて、全部ありふれてはいない。街行く人、お昼ご飯を公園で食べる人、踊るホームレス、銭湯の常連のお

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映画感想文『tick, tick...BOOM!』

映画感想文『tick, tick...BOOM!』

名作ミュージカル『RENT』の裏側にあった人生。

時限爆弾がチクタクいっているような、僕らの人生。友達のことも、恋人のことも、自分が本当にしたいことも、生計を立てる時間に奪われていく。今にも爆発しそうな爆弾を抱えていると、余裕が持てない。だから、いろんな人を傷つけてしまう。

生きるということは、他者や現実やプレッシャーが僕らの首元にナイフを突き立てているかのようでもある。だから焦る。時間が、な

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