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竹ざる

高校を卒業後、一人暮らしを始めるにあたって実家からいくつかお下がりの調理器具をもらって行った。
子供の頃は家族7人で同じテーブルを囲っていたので、その分鍋やらフライパンやらも大きいサイズのものばかりがあった。

初めての一人暮らしで、もっとかわいらしいものを使いたい気持ちがあったわたし。「場所取りそうだな〜」と苦い顔をしていたら、大は小を兼ねるからと、母親に言われるがまま大きな道具たちを段ボール箱に詰めた。

その時から使っていたザルは、ごく普通にどこでも見かける何の変哲もないステンレス製のざる。
ただ少し形がいびつになっていて安定性に欠けていたり、やっぱり大きすぎてシンクはいっぱいになるし、しまうのも干すのも場所を取りすぎてしまう。もう少し使い勝手のいいものが欲しいなと思っていながら、母親が言っていた大は小を兼ねるという言葉も頭から離れず、かれこれ5年くらい使っていた。

その後、結婚してから夫と遊びに行ったIKEAで、水切りカゴが安く売られていた。
エナメル質で頑丈そうなザル。足の高さもあって、まさに今これを買わねば、ザルを買い換えるのはいつになってしまうのだろう..と思い、まだ使えるものではあったけど、えいや!と買ってしまった。

ただこれが、今度は高さで場所をとってしまったのである。重さも意外とあるので、足に落としたりぶつけたりすると結構痛い。
あんまり後先考えずに買い物なんてしちゃいけないな、と深く反省した覚えがある。
しかし、使い勝手が悪いわけではなく、シンク内で使うには大きさも高さも程よく使えたものなので、以降それはずっと使っている。

そして最近、家庭菜園や手仕事に熱が入り始め、カゴやザルの出番が増えてきた時。またしても、もっと使い勝手のいいものが見つからないかなと思い始めた。
むやみやたらに探し回ったところで、これだというものが見つかることはなく、いつかどこかで見つけられたらいいなあくらいの感覚ではあった。

そんなある日のこと、月に1度立ち寄る近所の雑貨やさんへ足を運んだ時、いつもはあまり注目しない角っこの壁際に目が行った。
そこにザルとカゴがいくつかぶら下がっていたのを見つけたので近くまで寄って見てみると、これは・・!と、まさにビビっと来るものと出会ったのである。

タグを見ると、people treeから発売されている竹ザルであった。
(その雑貨屋さんはフェアトレードを推進していて、その店オリジナルのものだけでなく国内外問わず品揃えにこだわりがある素敵なお店なのである。)

大きさも程よく竹なのでとっても軽い。2個セットなので、大は小を兼ねるどころか大も小もあって同時使いもできる。わたしが求めるザルのイメージにピッタリハマったのである。
これは是非、わたしの人生を共に過ごす道具たちの中に取り揃えたいと思い、家に迎え入れることにした。

これだと思って選んだものは、やっぱりなんだか使っていて心地が良い。

引っ掛けておけるので干すのも場所をとらず、さりげなくぶらさがっている存在感も愛しいものだ。
調理の時に使うだけでなく菜園に何かを摘みに行く時にも使ったり、作ったおやつを入れて置いておくのにも丁度良い。
ざるでこんなに嬉しくなるのかと不思議な気持ちを覚えつつ、大事にしたいものがまた一つ増えた。

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