食べもの日記。

食べるよりも、食べるものを作る過程が楽しくなってきたこの頃。 食べ物に纏わる日々のよし…

食べもの日記。

食べるよりも、食べるものを作る過程が楽しくなってきたこの頃。 食べ物に纏わる日々のよしなしごとを綴っています。 たまに脱線あり

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最近の記事

金柑の木

日中の暑さは相変わらずで、セミもまだまだ元気に鳴き続けている。 ただ、夕方から朝方にかけてはもう冷房もいらない程に涼しい日も増えた。 それに、庭に佇む金柑の木が少し前に一斉に花を咲かせてからというもの、沢山の虫たちが忙しなく飛び交い、蜜を吸って、或いは運んでいたのに、もうすっかり羽の音も白い花々も見えなくなった。 もう実が着く頃なのかなと近くに寄って見ると、花の咲いていたほとんどが青々しくかわいらしい実に代わっていた。 木の周りを通る時、毎回頭のてっぺんを勢いよく横切っ

    • オオカミの口

      スコーンを焼いた。 実は最近まで、スコーンはやたら手がかかるイメージを持っていたから、前向きに作ろうと思えないでいた。 過去に作ったことが2,3度あったものの、あれはレシピがよくなかったのかわたしの腕がなかったのか、納得のいく形のものが出来た試しがなかったのだ。 けれども最近、本場仕込みのブリティッシュスコーンのレシピを見る機会があって、あれ?そもそも材料も手順も少ない?なんてことに気が付いた。 しかも、出来る限りグルテンを発生させないために捏ねる作業もなく(というより捏

      • すいかのグラニータ

        とっても大きなすいかを一玉買って、半分に切って冷蔵庫にしまっていた。 この夏に、ゆっくり時間をかけて食べていこうとワクワクしながら。 ある日半玉分を取り出して、机に置いたまま包丁を取りに行って戻ったら、どういう訳かすいかがひっくり返って落ちていたのだ。 半端に崩れた断面をきれいに切って均し、またひっくり返ってしまわぬよう冷蔵庫にしまった。 悲しさと虚しさと闘いながら、切り落としたぼろぼろの部分を、どう食べようか考えた。そのまま食べるには、虚しさに打ち勝てる気がしなかったの

        • クレームブリュレ

          卵黄をたっぷり使った甘い甘いクリームをじっくり蒸し焼きにして、仕上げに砂糖をまぶしたら、蓋をするようにパリッと焼き上げる。 一見かしこまった佇まいでありながら、食べた人の心をとろけさせる不思議な力を持っているクレームブリュレは、誰かと深く語らう時間に、傍らに置いておくのに相応しいスイーツだと思う。 スプーンの先で、こんがり香ばしく焼かれた表面を決して強くはない力で少しずつ砕き割る。 ようやく割れたならそれだけでほんのり穏やかな気持ちが芽生え、その下に隠れているクリームも出

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        • 菜園帳
          5本
        • ごはん帳
          3本
        • おやつ帳
          7本
        • 雑記帳
          5本
        • 道具帳
          2本
        • 手仕事帳
          6本

        記事

          白湯

          温かい飲み物は、深呼吸を思い出させる。 正確には、温かいよりも熱めなくらいが、わたしにとっては丁度良い。 沸かしている時の水面のぐらつきも、カップに注ぐ時に立ち昇る蒸気も、眺めているだけでコリ固まった心身をほぐしてくれる。 お湯が沸き立ったら大きめのマグカップにたっぷり注ぎ、一口啜ればお腹の底まで蒸されるような感覚に満たされて、もっと隅々まで届くようにと呼吸が深まっていく。 1日を始める最初の1杯に、熱い白湯を口にする。 寝起きのコリ固まった体に染み渡り、浅くなっていた呼

          かしわごはん

          祖母が用意する食卓に、しばしば登場した"かしわごはん"。 それを炊き込みご飯とも呼ぶことを知ったのは、小学校の給食の献立を見る様になってから。 さらに大人になってから、かしわごはんと呼ぶ郷土料理が北九州の方に存在することを知った。 共働きで帰りの遅い両親に代わり、平日は毎日祖母が夕食を用意していた。 中学校に上がって部活で忙しくなるまではお手伝いする日もあったので、かしわごはんのレシピも教えてもらっていた。 創味のつゆで濃い目に味付けして、水を多めに柔らかく炊いたごはん。

          ふかし芋

          ほくほくのお芋が食べたくなった時。 おやつにちょっぴりお腹に溜まるものが欲しい時。 だけど、お腹のことも労りたいとき。 そんな時、決まって作るおやつは、ふかし芋。 通年手に入りやすいじゃがいもはもちろん、さつまいもが美味しくなる頃には、毎年沢山作る。 芋の種類によっても芋それぞれでも味や食感が違うのが楽しくて、そのままはもちろん味付けも無限の可能性を秘めているので、何度作っても飽きが来ないところが魅力的。 寒くなるころに旬を迎えるさつまいもは、凍えた体を内側からゆっくり溶

          朝ごはん

          週に1回は、朝ごはんをサボりたくなる日がある。 ひどく疲れたり夜更かしをしたわけでもないのに、とにかくどう頑張っても寝起きからエンジンがかからないのだ。 それでもお腹はすくし、寝るまで元気に過ごしたいから朝ご飯は食べておきたい。 だからそんな時は冷凍庫にしまってあるおもちを温めてお雑煮にしたり、余っているご飯でお粥をつくったり、準備も食べるのもできるだけぼーっとしながらできるものを用意する。 温かいごはんができたら、少し冷ます間に沸かしたてのお湯でお茶をいれて、一口一口

          レモングラス

          贈り物をする時、しばしばハーブを小さな束にして添えることがある。 ラベンダーやローズマリー、バジルなんかは香り高く、花も飾って楽しめるので喜ばれることが多い。 しかしこの時期、受け取った側がどう使おうか悩むので贈り物に添えるのは少し迷うものの、花壇の端っこでそれはそれは元気に育っているハーブがある。 レモングラスだ。 果物のレモンの旬は冬なので、レモンが気軽に手に入る季節は真反対。夏はハーブの力を借りてレモンを楽しもうと思ったのがきっかけで植えることにした。 葉っぱをちぎれ

          夏場の台所にて

          台所の窓を開けると、モミの木がこちらを覗き込む。 家の高さと背丈がほとんど変わらないので、日陰にはなるけれど風通しが特に良くなるわけでもない。 けれど彼らが立ち並んで風を防いでくれるから風雨が入ってくることもなく、家の前は車通りも人通りもほとんどないので、何か作業をする時はいつも捗って仕方がない。 だから毎朝、ごはんの支度が一段落つく頃に沢山の蝉の声が鳴り響いていることに気がついて、ようやく安堵する。 つい漏れ出てしまうため息は、朝の忙しなさに一区切りついたからか懐古的な

          夏場の台所にて

          竹ざる

          高校を卒業後、一人暮らしを始めるにあたって実家からいくつかお下がりの調理器具をもらって行った。 子供の頃は家族7人で同じテーブルを囲っていたので、その分鍋やらフライパンやらも大きいサイズのものばかりがあった。 初めての一人暮らしで、もっとかわいらしいものを使いたい気持ちがあったわたし。「場所取りそうだな〜」と苦い顔をしていたら、大は小を兼ねるからと、母親に言われるがまま大きな道具たちを段ボール箱に詰めた。 その時から使っていたザルは、ごく普通にどこでも見かける何の変哲もな

          Banoffee pie

          久しぶりに本屋さんへ立ち寄ったら、あらゆる国のお菓子が掲載されているレシピ本を見つけた。 立ち読みで済ませるつもりが、大好きなスイーツから聞いたことも見たこともないようなお菓子まで実に様々なものが載っていたので、つい買ってしまった。 暇を見つけるとパラパラめくっては、これ作ってみたいな〜なんてものに付箋を貼って、気付けば本は付箋だらけになっていた。笑 おやつのメニューには当分困らなさそうだ。 つい先日、近所のドラッグストアでバナナが割引棚に沢山積まれていた。 全くきれいな

          泡沫

          初めてサイダーを飲んだ日。多分、小学生の頃。 友人の家に遊びに行ったら、おやつのお菓子と一緒に用意されていた。 炭酸ジュースは幼い頃の私には少し贅沢で、飲むたびにちょっぴり大人になった気分だった。 初めてビールを飲んだ日。多分、大人になりたいと思っていた頃。 白桃サワーのような、甘いお酒しか飲めなかった私。 誰かに教わった訳でもないのに、苦いビールを飲めてこそ大人だと思っていた。 炭酸をグラスに注ぐと、絶えず泡がぶつぷつ浮かび上がっていく。 友人の家で飲んだサイダー、夏

          夏夜のお掃除屋さん

          今の住まいは、街から少し離れて山間部に所在している。 だから夜になると、虫達が明かりを求めて窓に体当たりをしてくる音が、家のあちらこちらから聞こえてくる。 家の中でも沢山の虫を見るけれど、幾種類もの蜘蛛も見かけられる。使ったとてきりのない虫除けは撒かずに、彼らに任せることにした。 窓を閉めていてもどこからか何かが入ってきている様な、半分屋外のような家なのだ。 そんな環境で毎日本当に沢山の生き物を見かけるので、自然界の営み的なものはもう想像に難くない。 日が暮れ始めると、扉や

          夏夜のお掃除屋さん

          副産物と副菜

          先日お隣さんの畑から、小さな大根を沢山いただいた。 堆肥が多すぎてぼけてしまい、葉っぱだけが元気に育ってしまったのでまた土を作り直すのだそう。 それでも食べれるくらいに育ったものはいくらかあるから、好きなだけ持って行って良いよと声をかけていただいたので、お言葉に甘えて収穫させていただいたのである。 その大根を何に使おうかなと考えていたら、つい先日梅を干した後の梅酢をとってあるのを思い出した。 副産物と副菜。何だか素敵な組み合わせ。 箸休めを作るのにうってつけな、細くて

          青じそジュース

          冬に旬を迎えるレモンでシロップを作るように、季節の香りを瓶に閉じ込めて、ゆっくり味わうのが大好きだ。 今年は青梅シロップ、それにカルダモン、シナモン、クローブを加えた青梅とスパイスのシロップ、梅酒、黒糖梅酒、夏みかんの果実酒が仕込んである。季節が移ろいでいくのとともにじわじわ熟成されていく様子を見て、棚を覗き込むたびに胸が高鳴る。 先日、近所のおばあさまにお手製の赤紫蘇ジュースを少しお裾分けいただいたことがあった。 おそらく人生で3,4度目に飲む赤紫蘇ジュースであったけれ

          青じそジュース