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金柑の木

日中の暑さは相変わらずで、セミもまだまだ元気に鳴き続けている。

ただ、夕方から朝方にかけてはもう冷房もいらない程に涼しい日も増えた。
それに、庭に佇む金柑の木が少し前に一斉に花を咲かせてからというもの、沢山の虫たちが忙しなく飛び交い、蜜を吸って、或いは運んでいたのに、もうすっかり羽の音も白い花々も見えなくなった。

もう実が着く頃なのかなと近くに寄って見ると、花の咲いていたほとんどが青々しくかわいらしい実に代わっていた。

木の周りを通る時、毎回頭のてっぺんを勢いよく横切っていく羽音に「ごめんよ」と声をかけたりして、菜園にお邪魔させてもらっている気持ちになっていた日々が、既に懐かしい。

花の蕾もまだあちらこちらに見られたので、まだまだ増えるのだと思うともっと冬が楽しみになる。
暑さが過ぎ去りカラフルなお野菜たちに別れを告げると、もの寂しくなる秋冬の庭。そこに金柑の木が、庭の真ん中で暖かな彩りをそっと添えてくれる。

今年の冬は金柑を使って何を作ろうかな、なんて考えながらトマトの苗とゴーヤの蔓を手入れしていた夕暮れに、ひんやりした風が頬を撫でて、いつもよりもちょっぴり、寂しさを感じた。

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