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しくじり体験から学んだ、情熱をかけられるプロダクトの話

■はじめに

アスエネ株式会社でプロダクト統括/Chief Product Officer("CPO"、最高プロダクト責任者)をしている渡瀬(@wataset)です。

アスエネでは「次世代により良い世界を」をミッションに掲げ、脱炭素社会を実現するためのプロダクト開発を進めています。

社員紹介の記事もぜひ、ご覧ください。

この記事にもある通り、Climate-Tech(気候変動テック)は魅力ある、かつ、未来の世界を支える領域で、まさに「次世代により良い世界を」を実現するコトに向き合えるものです。

今回、プロダクト開発に情熱をかけることの僕の原体験と、大事にしている「価値開発」について書こうと思っています。

■20代でサービスを解散した体験

私は、振り幅をすごく意識しています。
価値に向き合うことも、人間的魅力も、その人の振り幅で決まると思っていて、自分が少しでもたくさんの情報にアクセスし、仲間と結びつき、多面的に物事を判断できるよう意識的に振り幅を広げる動き方を意識しています。

その背景にあるのは、前職のリクルートで「20代でサービスをクローズ」した失敗体験です。

2012年当時、私はリクルートでRecoCheck(レコチェック)という位置情報サービスの事業責任者をしていました。

このとき、2つの課題がありました。
1つは「位置情報」で「位置を特定するためのGPSの電池消費が激しい」という課題。もう1つは、今では当たり前の「通知(赤くアプリアイコンに数字がつくプッシュ通知)」をどうにかビジネスにつなげられるか、という点です。

1つ目の電池消費の課題は、アプリよりもCPUレベルで解消できないかと考え、モバイル向けCPUの世界シェアNo.1のQualcomm社と協業を進めました。また、2つ目の、"通知をビジネスにする"ことは「通知から行動変容するか」という実証実験を行うことを推進していました。

具体的な例を言うと「ニューヨーク中に2,000個の位置特定ツールを置き、プッシュ通知したら行動ログがどうなるか」、「場所や移動方法に応じて、近くにあるオススメの観光情報を通知したら、人は動くのか」を検証していました。
結論で言うと、「通知で、人が動く。それは事業になる。」を立証でき、多くのファクト・ファインディングスを得ました。

NYの街中を歩いて、実際に通知がきた瞬間

未知の事象に問いを立てる、新規事業の面白さを最初に感じた体験だったと思います。

また、世界で最先端の技術を、No.1プレーヤーたちと一緒に、ヒト・モノ・カネを動かして、ビジネス検討・事業開発した体験は、以後の事業開発の大きな転換地点になりました。

ただし、このときの成功はあくまで「実証実験の成功」であり、「RecoCheck事業としての成功」ではありませんでした。「位置情報に基づいて興味コンテンツを通知したら、動きやすい」数字的な立証であり、事業の市場性やマネタイズ規模を立証するものではありません。

「位置情報をマーケティングでマネタイズ」することは、別の事業で活用され収益化しましたが、自事業は単独ビジネスとして昇華できず、結果として終了することになりました。

自分の事業を終了すること、チームを解散する悔しさ、一人一人にその旨を伝える責任者としての未熟さを痛感しました。責任者としての覚悟が必要であり、1回1回の意思決定や時間の使い方が、考え抜けているかを猛烈に意識する機会になりました。

感情を排して合理性でPDCAを回しているか、それを24時間365日やりきっているか?本当にロスはないのか?そもそも、判断やデータに対するリテラシーは意思決定するチームが見合ったレベルで持てているか?今も、常に意識しています。

■プロダクトを考え抜くこと

この失敗の原体験から「全方位であること」を意識するようになりました。近視眼的に直近の課題にとらわれるのではなく、全方位に。自分が次に事業を作るならば、展開に向けたヒトが揃っていて、会社の資産(モノ)を活用でき、投資(カネ)を受けるに値する市場性のある事業を作ろう、と。

あの失敗体験による強烈な意識があったからこそ、リクルートの受付SaaS事業の社内起業が成功したと思っています。
立ち上げた事業では、営業、マーケ、開発、運用などの全方位でやってたなと振り返ると感じます。最初の顧客になった「俺のフレンチ」様や外食No.1店舗数の「すかいらーく」様などの法人から1店舗経営のお蕎麦屋さんに初期営業をやり切り、市場検討のプランニングから実際のマーケティングプロセスを設計し、リクルート初のSaaS/Airシリーズで最初の有料化起案、顧客定着の各種施策も、最前線で走り抜いてきました。

最初からすべての知見を持ち合わせていたわけではないので、事業推進・トップ営業・マーケティングマネージャー・経営企画など、みなさんに叩き込まれて、学んでいきました(当時の諸先輩方には金言を多くいただきましたmm)。現場に対峙しながら、指導をもらえる恵まれた環境だったと思います。現場や一次情報に自分が触れ、その上で多面的に判断するノウハウを、高速に回した時期でした。

不確実性の高い状態でも、過去のしくじり体験が視座を引っ張り上げてくれました。前回のように何かの1つの係数だけにとらわれて見誤らないように、全体が最大化するにはどうするか、他方の足を引っ張るような仕組みにならないか、を意識して毎日全力で反復横跳びをしているような日々でした。

ゼロイチでプロダクトをデザインしたりリリースしたり、なにもかもファジーな状態でやることを「アート」、それらが一定の先行指標を示してから再現性のある方法でエグゼキューションしていく過程を「サイエンス」と呼ぶ機会が多いと思います。自分の中では、まだ「アートをしきっていない」のかもしれませんが、ほぼ論理的に実行してきたと思っています。ゼロイチのプロダクト開発も、考え抜くことが最も重要だと思っています。

私が、価値開発で一番大事にしている要素は、分別が付くことです

分別が付かない状態を良くないとし、分かることと分からないことを把握する。分かっていればそれぞれに対して最適な打ち手を考えることができます。分からないことは、その中で最大のリスクをどれと置くか把握し、リスクが計算できるようにする。それにより、成功の可能性を高めるための話に集中できる(KSFが限定できる)構造になります。
※KSF = 重要成功要因。Key Success Factor。

この積み重ねを、一番早く行うこと、多面的に行うことがプロダクト成長の要素だと思っています。

日々、事業開発やプロダクト開発を行なっている方からすると「一番早く行うこと」と「多面的に行うこと」は相反する要素(時間を要すること)じゃないかということは、まさにその通りです。そのための工夫が必要です。私の工夫は、結論から言うと1つです。

「一番早く実行する機構」と「多面的に理解する機構」を分けることです。
当たり前の例ですが、あるサイトのPV数を200%にしてほしいというお題があるとします。PVを作る要素は、構成要素が複数かつ絡み合うので、どのセグメントの何のパラメータに絞って考えるか決めないといけないところです。

間違っても複数のパラメータを動かせると考えてはいけません。(一気に動かすと、どれが良かった要因か分からなくなるのは周知のことですしね。)

検証する機構と、全体整理する機構を、分けて最短で登るように取り組む。これを再現できるよう組織化して進めるのが、強い組織だと思います。

プロダクト開発は、機能の美しさ(使い勝手)、合理性、開発のスピード、品質や永続性を、かけ算で求められるものです。1人の机上のアイディアだけで決まるものでなく、むしろ「使う人やシーンに思いを馳せられているか」、「市場規模や優先順位は間違えていないか」、「仕組み化されたものが、後世に負の遺産になっていないか」を全方位的に考え抜いたもの、論理的に説明できるものこそ、本質的だと思っています。

プロダクト開発の価値最大化に向き合うために、一次情報にアクセスし、仲間と結びつき、多面的に物事を判断することを大事にするという振り幅を広げることを大事にしているのは、これらの理由です。

■情熱をかけるということ

最後に、「プロダクトを考え抜く」ことを、組織として強めていくための観点を2つ紹介します。

<フラットな組織>
私はプロダクト開発本部の統括ですが、そもそも組織を牽引していません。

変な発言にとられるかもしれませんが、牽引というのを、おこがましいと思うほどです。エンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャーにとって、いかに心地よい状態を作り出すかという考えで、私は働いています。
みんなは、その瞬間の課題に一番の最適解を出すように向き合っています。私よりもよっぽどイノベーションを生み出していると思っています。

私ができることは、3つです。みんなが最大限バリューを発揮できる環境を作ること、悩むときに壁打ち相手になること、プロダクトのちょっと先の未来を考え抜いて方向性を整えること。
肩書きもあくまで「係」でしか無いと思っていて、みんなの意見を聞いて、プロダクトのちょっと先の未来を考え抜く。フラットな組織で、お互いが尊重しあい、健全な議論こそ、大事だと思っています。

<青春の時間を使うに値する場所を作る>
2点目に、私は「その仕事が意味をなすか」を観点に仕事を選んでいます。

青春の1秒を使うなら、嫌だと思うような仕事は一切やりたくありません。
それは、組織のみんなだってそうだという話です。選択はみんなが持っている権利ですしね。
今、自分が解決したい課題は何か?生きた証を残すなら、何のために働きたいか?という問いがあったら、”今いる世界に対して価値ある仕事をしたい”と思っています。

その1つのテーマであり、世界規模のテーマとして気候変動があります。良いチームで、青春の大事な時間をかけて、日本No.1、世界を視野にビジネスを立ち上げて成功させたら、俺たち最高にカッコいいよね!と胸張って笑い合えると本気で思っています。

幸い、資金調達も大きく実施でき、ステージが整いつつあります。
アスエネ、シリーズBで総額18億円の資金調達

イケてるプロダクトを、みんなで青春をかけて作っていきます。
本気でそれができる環境を、作っていきます。

アスエネはまだ社員が数十名の規模で、オーナーシップを持って能力を発揮できる余地がたくさんあります。話を聞いてみたいな、と興味が湧いたらカジュアルな面談でもOKなのでぜひご連絡ください。
(渡瀬は、座ってる白Tシャツです。)

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カジュアル面談(meety)はこちら。


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