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文化系学生のキャリアサヴァイバル(仮)

タイトルに書いたようなことにずっと関心があった。

チャーリー(鈴木謙介)さんの「文化系トークラジオLife」ではないけど、ざくっと、芸大(美大、音大)系の学生や、あるいはそれ以上に総合大学に設けられた芸術系学部・学科の学生が、そこで学んだ知恵や技術を生かしたキャリア形成をどのように行っていくべきか、的なことです。コロナ禍を経て、働き方が激変する現在なら、在宅環境やオンラインを生かした文化系ならではの起業もありえるだろうし。

といいつつ、自分は総合大学の法学部出身なので、いきなり外れているけど、それなりにこのテーマに対する当事者性があります。

(1)学生の頃、音楽しかやっておらず、いわゆる「就職活動」をしない方法でなんとか自分の文化活動に近しいことで仕事に就けないかともがいていたこと。
(2)そういった自らの「文化」にまつわるキャリア変遷を記述し、他の実践者の事例研究を、かつて『コミュニティ難民のススメ 表現と仕事のハザマにあること』にまとめたこと。
(3)縁あって今年から大学教員となり、まさに総合大学のなかの芸術系学部(具体的には近畿大学文芸学部文化デザイン学科)で学生と接していること。

これらがその当事者性の理由です。

(1)に関しては
当時、周りにこのことを相談できる教員も友人もいなかったなぁと思い出す。僕の場合は学部で言えば、国公立大の法学部でかなりお堅く就職(公務員も多し)する人が多く、しかし学部を超えてサークル(軽音楽部)の仲間でも、基本は4年生になったら就活(氷河期だったけど!)をしてゆくのが大半だった(もちろん僕と同様、かなり独自のキャリアを築いた面々も一定数いる)。自分は当時かなり迷走しており、ウェブ系やメディア系の専門学校や大学院のパンフレットを取り寄せつつ、目の前のバンド活動は忙しく、またそんな迷走に輪をかけるように、本来の多動な性格を忠実に反映するかのような大事故(原付で車と衝突して全治3ヶ月の右大腿骨骨折)をおこし、就活の大事な時期をベッドで過ごすという始末。なので、大いに諦めがつきつつ、そのあとはいわゆるフリーター兼ミュージシャンになって数年を過ごすことに。当時は、「バンドやっている」ということが「それで売れるよう頑張る! →    売れなかったらフリーター続ける! →    30になったら諦めて就職!(または家業を継ぐ!)」みたいな暗黙ルートがまかり通っており、実際よく共演していた先輩バンドのメンバーがこの脱退したと思ったらすっかりスーツ着てお客さんとして会場に現れるなんてのはザラでした。とにかく、「こういう生き方、仕事の仕方もあるで」というキャリアモデルが全然思い付かず、それはやはり大学を経て数年待たねばならなかったのです。

(2)に関して
拙著の詳細はここでは述べませんが、僕自身のキャリア変遷は、まさにジャンルも、就労形態も、土地も「難民」状態でやってきた。
●ミュージシャン 兼 アルバイト(環境調査会社の調査補助員) →   ●音楽を軸にいろいろやるアーティスト 兼 契約社員(印刷会社のDTPオペレーター) →   ● アーティスト 兼  NPO法人スタッフ(芸術系NPO cocoroomでディレクター) →   ●アーティスト 兼 宗教法人スタッフ(浄土宗 應典院で大阪市文化事業の担当ディレクター) →   ●個人事業主(事編kotoami /企画演出、文筆業)兼 大学非常勤講師(神戸女学院、立命館、京都精華など)兼 大学院生(滋賀県立大学大学院) →    ●個人事業主(東京にオフィス移動) 兼 大学特別研究員(大阪市立大学都市研究プラザ) → ●個人事業主 兼 社会福祉法人特別雇用職員(品川区の指定管理事業のディレクター) →   ●個人事業主 兼 大学専任教員(近畿大学)←いまここ!!
といった感じ。2002年に大学を卒業して、今年で丸20年経ちましたけど、当時を思えばまさか自分がNPOやお寺や福祉施設で働いたり、ましてや大学の教員になるなんて思ったこともなかった。でも、なんとか自分の表現をすべての活動の軸として保ってきたところはあるし、それがあるからこういうキャリア変遷ができたと言える。
しかし、これは「教えれる」話ではない。たまたまこうだったというのがもちろん正直なところ。でもでもしかし! こういった「キャリア変遷」自体を様々な事例を読み解きながら研究することで、ある共通項は見えてくるのではないかと思っているのだ。それを「コミュニティ難民のススメ」では、「表現と仕事のハザマに立つ」というお題を頼りに、自分とほぼ同世代の人を取り上げてきたが、これを「文化系」、かつ、いまの現役学生にとってキャリア変遷のリアリティをまだ感じやすいであろう「U35」くらいに絞って調査するのは、面白いかもしれない。

(3)に関して
学科の同僚教員にこのことを相談したら、それで必ず食えているわけではないけど自分の「表現」とそれと絶妙に絡み合う「就職」を兼ね合わせながら社会人を送っている学生がいることも知る。ちなみにこの学科、2016年にできたばっかりなのでまだ卒業生が3回期分しか出ていないが、基本的に多くの学生は幅広い業種の会社に就職している。全然それでいいんだけど、一方で、ゼミの学生と話していると、「やっぱり就活しないといけないっすかね・・・」とモヤモヤ相談してくる学生も一定数いるので・・・。そのときにせっかくこういう学部・学科なのだから「オルタナティブな道もあるよ/未知数だけどこういうのから関わってみるのはどう?」と言ってあげられる状況をつくれたらなぁと心底思うのです。でもそれには、先行する事例がそれなりの数、揃っていることが大切だと思う。それをどういう風に集め、教員同士でシェアし、キャリアデザインの「希望的別案」として学生に対してストックしておけるか。その収集や公開のやり方自体(モデルになる人をゲストとして呼んで授業に絡めてオムニバス化するか、フィールドワークをやりまくるのか、本や映像、ラジオなどのメディアにまとめて出版・配信するのか)なども考える必要あり。

少しずつこのことに興味ありそうないろんな大学関係者や僕が知っているモデル的卒業生に相談している過程です。課題は「文化系学生」の定義、要はどこまで絞るか。と同時に先行して僕のなかであがっている彼女ら彼らの共通項は

・非営利性(的活動)をキャリアのなかで一回でも通過する
・個人の表現と、その技術を転用した就社を兼ね合わせるプロセスがある
・やりたいことが多すぎて、まぁまぁ混沌としている
・「お金」よりもまずやりたいこと、実現したい世界観が漠然とでもある
・私生活の変化(転居、結婚、出産など)に応じて、より生活と仕事を地続きにする感覚を強化する
・クリエイションとマネジメントを厳密に区別しない

など。仮説です。
このアクションに興味がある方は、お気軽にご連絡ください。先は長いので!

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