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2021年6月 クリエーターズマーケットに出店してきました(名古屋旅日記)。

 前回の横浜のイベントの際にはコースター小説を6000枚持って行き、大量に売れ残るという大失態をやらかしたので、今回は控え目に1000枚ほどにしておきました(前回は2日間で約500枚の売り上げでした)。

 で、コースター小説は419枚、透明小説は52枚という結果に相成りました。前回よりも売り上げ枚数は下がりました……が、いえいえ、ひっそり目標としていた2日間の出店料分は回収ができたので、その後の名古屋観光の足取りは軽やかでした(旅費に関しては自分の楽しみも兼ねているので、あまり気にしてません)。

 何より、さまざまなご縁に恵まれたので、本当に参加して良かったなぁ、としみじみ(このへんについては後日別の記事で紹介できたらと思っています)。

 さて、備忘録も兼ねて、いくつか気になったり、思いついたり、教わったりしたことを箇条書きで記しておきます。

・1枚25円のコースター小説を、10倍の値段=1枚250円と勘違いして、財布を取り出した方が、2名ほどおられました。つまりその値段でも買いますよ、ということです。その他にも「安すぎる」という意見をちらほらいただきました。
 そもそもこの価格設定「俺だったら、この値段じゃなきゃ買わんなぁ」というところから来ています。アート作品に対する価格というよりは、一編の掌編小説にどこまで払えるか、という感じです。巷の書店で販売されている短編集を文字数/価格で考えれば、まぁ、そんなおかしな値段じゃない。
 しかし売り上げが全てではないけれど、上記でも記した通り出店料等を回収できたかどうかでモチベーションはだいぶ変わるので、もう少し価格を上げてもいいのかなぁ、とも思っています。さすがに1枚250円はやり過ぎだけれど、せめて高くしたとしても子供でも買えるくらいの1枚50円あたりで(横浜で小さな女の子ががま口から出してくれたお金を今でも憶えています)。
 まぁ、でも、コロナが収束するまでは、今の価格を貫こうとは思います。

・上記と関連して、もう少し価格の高い商品を置いてもいいのかなぁ、と思いました。単に価格をつり上げるという意味ではなく、材料費から考えても高くても妥当と思える作品を。

・この小説×アート作品の販売で、生活できないだろうか。今ははるかに遠いとも思える目標が、イベントを通じてそっと顔をのぞかせました。

・陳列しているコースターを一枚だけ取るのに、手こずっている方が結構いらっしゃいました。何かしら改善が必要だなぁ、と。

・note始めた頃に書いた自己紹介で、自分のことを小説をアートにしているだなんて「中途半端」と評していました。その頃は「中途半端」という単語をどこかしら尖っているというか、異端児的な誇らしげな意味合いで使っていましたが、中途半端って割と的を射ていたのではないかと、深夜のホテルではっと目が覚めて思いました。
 小説とアートで言えば、自分が先に手を出したのは小説です。なぜアートをやりだしたのかと言えば、友人の個展を見て「小説とアートって、おもしろそう」と思ったからです。でも、そこをもっと掘り下げてみると──(たとえどんなに面白い! と思える小説が書けたとしても)自分の小説に中身がないことを知っていたから、アートじみたことに逃げようとしたんじゃないか、と気づきました。だから単純に文章だけで勝負しようとするのではなく、奇抜な、人目を引くようなやり方で小説を飾り立てるようになっていたんじゃないだろうか、と(ついでに言えば、だから作品の価格も高くはしないのではないか)。
 けれど、今は、それでいいんじゃないかと思っています。結局のところ、どう足掻こうとそれが自分だし、どのような経緯があろうと、小説×アートって、やっぱり面白いと思えるし、好きです。まぁ、自画自賛もあるでしょうが(他人が似たようなことをやっていたら「文章で勝負しやがれ」ときっと思うことでしょう)。

 さて、長々と書き連ねましたが、まだまだ続きます。むしろこっちが本番です。えぇ、馬鹿みたいに長い名古屋の旅日記の始まりです。販売の話は少しばかりで、主に名古屋を旅した話をつづります。今回もはりきってどうぞ。

 6月26日(土)

 朝。東京を発つ。
 一週間前まで緊急事態宣言だったということもあって、新幹線車内は空いている(開催が一週間前だったら、参加できたかどうか危うかった……)。何はともあれ、久々に遠くへ行きます。天気はあいにくの曇りで、富士の山も見えないけれど、一路西へ。
 ようやく遠出での販売です。行商です。寅さんです。コロナの影響でずっとできなかった旅商いです。本当に長かった。
 無論、旅を楽しむため朝から駅弁です。品川の駅弁「貝づくし」なるものを食らう。ホタテやらアサリやら、シジミの山椒煮やら大変美味でした。これはまた食べたいな。

 そんなこんなで一時間半程度で名古屋駅に着。駅構内の名古屋めしの弁当売り場(手羽先やら、卵サンドやら)の前を通り、本当に遠くに来たんだと実感して、そんなことで涙腺が緩む。本当に、長かったよ……。これでまた中止になっていたら、一体どうなっていただろう……(実は昨年も参加予定だったけれど、イベント自体が中止となってしまいました)。
 さて「あおなみ線」に乗り換えて、港湾部へ。何やら工業地帯っぽい景観が窓の外には広がっております。そうしてやってきましたポートメッセなごや。巨大なイベント会場です。開場一時間半前に到着して、30分ほどで設営完了。というか、入口の外にはすごい行列。開場まで暇なので、外のフードコートをぐるりと巡って、愛知県のブランド牛、知多牛バーガーなるものにチーズ挟んでもらって、木陰のベンチでもぐる。肉汁たっぷりで美味い。

 販売は前回同様、読書しながら店番をしてお客さんが来たら簡単にお声掛け。まったく売れない時間帯があり結構気落ちしたりしつつも、昼過ぎには下さい頂戴が連続して、モチベーション回復。閉場が近くなり、人足が落ち着いた夕方は、今回隣り合った『アルパカの兄弟さん』とお喋り(HPはこちら。何だかじっと見つめ合ったり、話し掛けたりしたくなるオブジェを作られています)。たくさんのことを気づかせてくださり感謝感謝です。というか、11時から何も食べてないから腹減った。

 さて、割と意気揚々で会場をあとにします。帰りの電車は、出展者の皆々様がぎっしりと乗り合わせて密な上に窓ガラスの開かない車両だったけれど、まぁ皆さん静かでした。というわけでようやっと名古屋を楽しめます。夜の名古屋駅に戻って、駅ビルの上層階にある中華料理屋へ。全国の感染状況の足を常に引っ張っている東京都民なので、事前にちゃんと感染症対策がされている店舗を調べておきました。なおかつ、美味しいと評判の店を!

 ラーメン。半炒飯。餃子。腹減ってたし、久々の遠出ということもあって食らいに食らいます。も少し味にインパクトが欲しかったけれど、満足満腹です。あとは名古屋のビル街を適当に歩いて、ホテルへと向かいます。

 ビルの合間に佇む鳥居。足を止めます。木々が生い茂って、ひっそりとした小さな社殿。境内の一部だけライトアップされていて、何だか怪しい雰囲気もあるけれど、一礼して足を踏み入れます。そうしたら、また一つライトが灯りました。柳里神社。よろしくお願いいたします、と手を合わせます。とっても時代を感じさせる神社でした。
 その後も繁華街から外れた道筋を歩いて、ホテルに到着。施設は古いけれど、部屋は改装されていて新しめです。よぅがんばったと自分を労って、ベッドに転がります。その後ぼんやりしつつも、人が少ないだろう時間帯を見はからって地下の温泉大浴場へ(都市部のホテルなのに温泉があるのです)。貸し切り状態の広々湯船で脚を伸ばして、あぁ、いい心地。ほんと、ここまで長かった。

 6月27日(日)

 6時半に朝食会場へ。こちらのホテル、温泉だけが名物じゃなく、朝食バイキングも何やかんやの賞をもらうくらいに評判、なのだけれどコロナの影響でバイキングもできず、今は升弁当形式で、その他牛すじの土手煮やら、きしめんやら、主要な名古屋めしはおかわりし放題ですよ、と。ただマスクと、ポリ手袋必須であります。ご飯をお替わりして、お茶も飲みたい、最後には牛乳も、てな具合で両手をふさいだ状態で朝食会場を行きつ戻りつしつつ、「腕が二本しかない人間とは、不便なものだな」と虫みたいなことを思う。
 で、美味かった。特にきしめんのつるんとした食感と、やさしいお出汁の味がたまりませんでした。そういや、手羽先味のふりかけなんてのもありました。

 さて、クリマ(クリエーターズマーケット)の開場は11時。荷物は現地に預けてきています。旅の荷物も連泊なので部屋に置きっぱです。お腹もいっぱいです。というわけで身軽になって、ホテルをあとにします。せっかくの遠出。旅をしないわけがありません。
 てくてくと大通りを歩いて栄駅に向かいます。リュックに入れてある販売用の釣り銭が、じゃらじゃらと音を立ててうるさいです(さすがにこれは会場に置いてけない)。というか名古屋は基本的に道路が広いです。短い横断歩道というのが少ない。これは戦災だか火災で延焼を防ぐ目的でこうなったのだと本で読んだ記憶がうっすらある。そして街の変遷の様子が書かれていそうな案内板みたいなのも道路に設置されているが、何ぶん少し時間に余裕がないので、黙々と歩き続けます。

 地下鉄に乗ってたどり着きたるは神宮西駅。はいそうです。名古屋といえば熱田神宮です。草薙の剣です。元々神社好きだし、奉納されている神器がRPGでよく見かける名前の宝剣ってめちゃ熱いです。
 さて、駅を出ると早速、小規模な鳥居が。奥に柵で囲われたちょっとしたスペースとお社。そこから奥には行けません。熱田神宮の摂社末社でしょうか。下知我麻(しもちかま)神社、旅行安全の神様だとか。当然、お参りです。
 再び熱田神宮の外周に戻り、鎮守の杜にそってぐるりと歩いて行けば、そびえ立つは大鳥居。正面入口の鳥居じゃなさそうだけれど、一礼して参道へと足を踏み入れます。車道からの走行音が遠のき、視界が緑に覆われていきます。あぁ、この感じだなぁ。
 本殿に向かう前にまずは境内を散策して、摂社末社(摂社と末社って、境内の小さな神社を指す言葉ってのは知ってるけど、この二つの違いって何だろう)にもご挨拶。疫神を祀ったといわれる朱塗りの南新宮社にはしっかりと頭を下げる。境内を柵もなくぶらついている鶏に吠えてもらって、巨大な灯籠を見上げて、さぁいよいよ神宮へ参拝です。
 とはいっても、いつも通りの二礼二拍手一礼です。ただ静かな気持ちで手を合わせて参りました。

 その後も境内を散策していい頃合となったので、バスに乗り込み、電車に乗り換え、二日目のクリエーターズマーケットにやってきました。今日もすごい人が開場待ちしています。というか、旅の前は三日間すべて雨マークがついていたのに、今のところ曇りはあっても雨は降っちゃいません。いい感じです。

 二日目は、初日よりは若干売り上げは減ったけれど、それでもあまり暇な時間はなかったように感じています。売れ行きに関して言えば、コースターということもあって、ドリンク関連のタイトル(コーヒー、紅茶、喫茶店)が売れやすかったような印象。透明小説は手に取ってみて初めてその仕掛けに気づき、小さく驚きの声を上げられるお客さんが結構いらっしゃいました。

 さぁて蛍の光が流れました。
 正直に言えば、出店するまでは「コロナでぼろぼろになった俺のモチベーションを、どうか取り戻させておくれ……」と、やや人任せ気味に思っておりました。けれど見事、たくさんのご縁に恵まれて、やる気をいただく結果となりました。本当に二日間、ありがとうございました。
 周囲の皆様にもご挨拶をして、きれいさっぱりとお片付けをして会場をあとにします。いやいや、本当に参加して良かった。そしてそしてこれからは、本格的な観光だ! うまいもの食べるぞ! 休むぞ! 寝るぞ!
 と、意気揚々、7時過ぎに名古屋駅に戻ってきて、よし今夜は味噌かつだ、と事前に調べておいた店に趣くも、コロナの影響で7時ラストオーダーだぁ? うぉぉ、早くも番狂わせ。どこもかしこも7時で閉店の札を下げている。腕には半分近くになったとはいえ、重い荷物(コースターやら)を抱えている。感染症対策が甘そうな店には行きたくないし、野郎、コロナ、駆逐してやる!
 もうあったま来たので、名古屋の駅前通りを彷徨いつつも入口からカウンター席の仕切りが確認できた、料亭な感じのたっかそうな店に入ってやった。鰻だ! ひつまぶしだ! 大青鰻を丸々一匹つかったというひつまぶしだ!(青うなぎって何やと思って今調べてみたら、鰻の中でも高級な種類のうなぎのようで) 酒も呑むぞ! 名古屋の地酒をください! まん延防止でもう出せない!? 仕方ありません。炭焼きとタレの焦げるの匂いがたまりません……。

 で、もう、めちゃくちゃ美味かったよ……。おひつの中をしゃもじで十字に四等分してお椀に盛って、まずは鰻丼として。外はややカリカリと焼けていて、中はふわふわとほぐれていきます。次は海苔、わさびの薬味をまぶして。そうしてお出汁で浸して、名古屋のひつまぶし……。最後はお好みで、ということで、迷わずタレを絡ませただけの鰻丼を頬張ります(やっぱり慣れもあるせいか、シンプルにいただくのが一番美味しいと思いました)。お会計の際にも「大変美味しかったです」と感想を女将さんに伝えるほどでした。うな善、というお店。美味です。

 その後も荷物を抱えながらホテルに向かうのだけれど、もう「美味かった……美味かったよ……」とため息交じりの独り言を繰り返す始末。後ろからOLさんの足音が近づいてきたときは、さすがに口をつぐんだけれど、本当の本当に……。やっぱり、旅先の鰻って良いです……。
 その後、酒が飲めなかったから、コンビニで何か買って行って部屋飲みでもしようかと思ったけれど、何だか間抜けな感じがしたので、喉を澄まそうとミネラルウォーターだけにしておきました。そうしてまたまた貸し切り大浴場で身体を休め、ぐっすりと眠りにつくのでした。おやすみなさい、うなぎ。

 6月28日(月)

 朝食はまたホテルでも良いと思えるほど美味かったけれど、まぁ、旅に来て同じものを食べるのも何だかもったいない気がしたので、調べておいた近所のおにぎり屋さん「多司」にてくてく。というか晴れてる! 少し前の天気予報では雷雨とされていたけれど、こりゃ観光日和です。
 で、一つ百円ちょいなのにめちゃくちゃ大きなおにぎりを四つも買って、部屋に戻ってきました。えび天はもちろん、小えび天、さけに、たらこ。どれも美味しかった。こんなん近所にあったら通いますわ。しかし四つはやりすぎました。三つで充分でした。

 チェックアウトして、重い荷物を預かってもらい、名古屋のシェアサイクルサービスで自転車を借りようとすぐ近くの川べりの貸し出しステーションまで歩いて行くとすべて貸し出し。ので、スマホで地図を確認しつつ別のステーションまで歩いて行くと、一台だけ残ってました。その場で会員登録して、今日は青い自転車で名古屋を巡ります(これ、めっちゃ便利だよね)。
 が、名古屋ってどこ行けばいいのだろう。とりあえずど定番で名古屋城へと向かいます。幹線道路、車道と歩道の間にガードレールで左右を囲われた自転車専用レーンがあることに感動する。何の仕切りもなくて危なっかし自転車レーンは見たことあるけれど、完全に独立しているのは初めてです。

 愛知県の護国神社で、多分人生初の茅の輪を8の字を描く感じでくぐったりしつつ名古屋城下に到着です。500円。さすがに自治体が管理している施設だけあって、感染対策は万全の構えです。天守閣は工事中のようで上れないみたいだけれど、人もそれほどいなくって(まぁ平日の昼間だし)、道も広々していて、何だかのんびり歩いて巡れそう。しかし陽射しを浴びながらマスクで自転車を漕いだせいか、やたらに喉が渇く。水を飲み飲み、石垣の精巧さにうっとりしつつ、本丸御殿なる長い広い木造りの建物へ。意図せず柱なんかを傷つけてしまう例があるとのことでリュックもロッカーに預けます。
 ここはどうやらお城のお偉いさんとの謁見の場だったようで、畳敷きの間がいくつも続きます。位の高い人の部屋になると、どんどんと装飾が絢爛になり、ぎらぎらと眩しいくらいで。天井の升の一つ一つにも細緻な絵が描かれている。欄間がギラギラとけばけばしい。こんなん落ち着かんよ。
 でも、とっても興味深かったのが、襖や壁の絵には花鳥風月が多い中、当時の民衆の祭事なんかが描かれているのが、やたらと自分の目を引きました。部屋の装飾を過多にする、っていうのは、町の庶民たちとは暮らしが違うんだぞ、っていう意識のあらわれなんだと勝手に思っているのだけれど、そこの題材に民衆の暮らしを選んでいるというのは、どういう気持ちの働きなんだろうと、考えながら御殿内をゆっくりと巡っていました。
 その後も城の門や庭を散策し、ベンチで休んだりしつつ、城下の金シャチ横町なら飲食店街へ。12時前。少し早いけれど、まぁ平日で人も少ないし、繁華街で食べるよりは安心できるかなと、昨夜食べ損ねた味噌かつのお店へ。美味しいは美味しいが、あぁ、やっぱり舌が慣れているのかなぁ。ソースをかけたくなりました。

 さて、新幹線の時間までまだ余裕があります。あとはどこを見て回ろうかと考えたけれど、うん、やめにしました。城下の木陰で休むことにしました。マスクを外して、うとうとします。思えば多分、これがしたかったんだろうなぁ。

 というわけで、あとは駅から新幹線で東京へと帰るだけだったので、いつもより短い馬鹿みたいに長い旅日記は以上でございます。
 クリエーターズマーケットの運営の皆様、出店者の皆様、そして来場者の皆様、ありがとうございました。とっても楽しかったです。次もまた参加できたらいいなぁ。そのときには作品をもっと増やして、そんでもって何を食べよう、どこへ行こう。
 それでは、またいずれ。アイお世話!

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