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『鬼手仏心の経営』に学ぶ“三方善し”

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「鬼手仏心」で“脱・家業”経営へ
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アルケア株式会社の代表取締役会長・鈴木訓夫さんは、
次のように語ります。

「鬼手が真の仏心によって生かされる時、​
仏心は鬼手によって永遠の輝きを放つ」​

創業者である鈴木さんの父の言葉であり、
“世の中の役に立つものをつくり出していきたい”
という想いの込められた漢字四字。

元々は医療の心得として使われてきた言葉で、
「外科医は手術のとき、残酷なほど大胆にメスを入れるが、
それは何としても患者を救いたいという温かい純粋な心からである」
というような説明が、大半の辞書に書かれています。

医療機器等の販売で国内シェアを拡大してきた企業ならではの言葉。

鈴木さんは、
《鬼手》とは「利益(マネー)」、
《仏心》を「理念(マインド)」
として置き換えています。

世の中のためになる製品を作るのが《仏心》であり、
顧客からお金をいただいて儲けるのが《鬼手》。

鬼手(利益:マネー)最大49%​
仏心(理念:マインド)最小51%​

という比率が望ましいと鈴木さんは言います。

この比率は、心理学における「私欲」と「公欲」の関係にも一致しており、
自分のメリット(私欲)と相手のメリット(公欲)の比率が
49対51くらいの人に対して、私たちは人間的信頼を感じやすく、
そうした人が長期的に成功しやすいと言われています。

つまり、相手のほうが少しだけ得が大きいくらいが丁度よいということ。

それは個人でも組織でも同じ。

そのことをしっかり理解されているからこそ、
鈴木さんはアルケアを“家業”から“企業”へと
大きく発展させることができたのだと思います。

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「強い」と「良い」を並立させる経営
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鈴木さんは、企業の存続を決める基本条件は
次の2つであると書かれています。

(1)市場競争に勝ち抜くこと →必要条件
(2)顧客・社会に支持されること →十分条件

そこでアルケア株式会社は
「強くて良い企業」を目指すことを基本方針としています。

「鬼手仏心」でいえば、
《鬼手》=利益であり「強い企業」
《仏心》=理念であり「良い企業」

ここでいう「強い」とは、(1)の必要条件に当たり、
次の4つの要素を兼ね備えた「強靭な企業」ということ。

①いかなる環境変化にも柔軟で、素早く適応する力
②いかなる経済環境の変化にも耐え得る強靭な財務基盤
③高い付加価値創造力
④高い生産性

利益や資本の大きさ等の財務面はもちろん、
組織の構成員が持つ質的・量的な能力の総和によって決まります。

そして「良い」とは、(2)の十分条件に当たり、
“顧客・社会にとって良い存在”であるということ。

そうした世の中に価値ある存在となって初めて
本当に「社員が幸福になる」企業として成長していけます。

社員一人一人が「良い仕事」を行い、
それによって「良い待遇」を受けられ、
仕事を通じて「良い仲間」に巡り会い、
自分たちで「良い社風」を築いていこうと協力し合える。

それを実現するためにも、
顧客、社会、社員にとって「良い存在」であるという
“三方善し”の考え方
が不可欠となります。

鬼手と仏心のバランス。
組織としての私欲(利益を得たい)が強すぎてもいけないし、
公欲(世の中のためになりたい)だけでも組織が成り立たない。

それが「鬼手仏心」という言葉の意味にも繋がると解釈しています。

「病院の利益のために治療します」

と言われたら信用できないと思いますが、

「患者さんの元気になる姿を見るのが嬉しいから治療する。
病院の経営を続けるためには利益が必要。
そうすれば、働く医師やスタッフたちにも還元できる」

そのように“三方善し”を語る病院の経営者なら
より信頼できると思います。

「強さ」だけを追い求めていないか、
逆に「良さ」だけを追い求めていないか。

“顧客のために”と言いながら、
自分たちの利益ばかりに目を奪われていないか。

本当の意味で顧客目線になったとき、
私たちは取るべき《鬼手》と持つべき《仏心》が見えてくる。

“三方善し”にも繋がる「鬼手仏心」の経営について、

まだまだ読み込みが足りませんが、
9月にMRS読書会で発表予定でもあるため、
これを機にしっかり理解を深めていきます。


★★MRS読書会のご案内★★

・日時 9月11日(日)8:00~9:00(予定)
・ファシリテーター : 吉野
・課題図書 :『鬼手仏心の経営』
・開催:Zoom
・内容:前半に解説、後半にディスカッション

気になる方はご連絡ください!

出典:『鬼手仏心の経営』鈴木訓夫・著(日本経済新聞出版社)




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