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出目金と水草

出目金と水草

夜、ふと侘しくなり、出鱈目な詩を求めんばかりに筆をとり、朗らかな空想に耽る。

枯葉だって最後は赤やら黄色やら快活な顔して落ちていくじゃないか。落葉はされど淋しく風はぬるい。

人は皆、利己的に他者を救出せんと発奮するんだ。皆さん本当に自己愛に満ちていらっしゃいます、私も例に漏れずとも。我利我利君。

ニヒリズムというものはつまらんね。あれは愛の乞食がやるものだ。悲しいよ。そういう人は誰かに抱きし

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鴎が鳴く

鴎が鳴く

我らの心は泡沫に 安寧はされど微かなり

典雅かな風がふわふわり 運河を撫ぜる 夏は長い

この心とは裏腹に 日々の生活 宙ぶらりん

一日千秋 尋ね人 篤実な此の地にありありて 海鳥は今日も空眺む

愛らしき想いを疑わず 小さき御手に包まれて

沿岸沿いをガタンゴトン とろめく御目 眺む男

千尋の紺 柔和な雲 嗚呼そい伏せまほしう

今尚漂う潮風は 我を運びて労りて 奥歯の影に昆布の香り

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薄紅の頬

薄紅の頬

春の早朝は翠の匂い 私の心は浮遊し 絡繰の果て 空想の彼の地

亭午、あの華の香りを嗅ぐ 春の吐息

穏やかな優しい心にする香りである

櫻の花は上品だね そめいよしの この名前すら気品があるよ

薄紅 清楚可憐 静謐なる少女 

香り薄し それも良きかな 優美なり

顔を熱らせながらの善行 少女が席を譲る

平静を取り繕い 厳粛な顔 しおらしい

つつましい老夫婦 しわくちゃ笑顔 仁愛か

我々

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厳島

厳島

嗚呼、いつくしや厳島

二度目の逢瀬は 杪冬に 枯れた紅葉 憐憫の情

紺の海に千の真珠が落ち 斜陽が皆を照らしだす

熟れた柿の実 目尻の皺 揺蕩う乳房 牡蠣の如し

嗚呼、美しや厳島

いと艶やかな その肌に 醜い愛撫 果たしては

含羞恥辱の狂宴か 我らは正に白痴なり

我の心ここに在らず 

嗚呼、悲しきかな厳島

あの子の恋慕は何処へやら

離れる度に醒めゆくわ

寒風沁みる首元に 卑し

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最後の貴婦人

我愚者、偶然の上に生きる

囂々たる霹靂が胸中へと落ちる

浮世の渦の中に暫時私はいたはずである

無意識に下唇を噛んだ 

涙を堪える為ではなかった 束の間の断罪 

線香を六本

祖母の葬儀へ参列の為に東京を旅立つ

厳寒の地にあった祖母の肌は新雪のようだ

髪でさえ龍の髭のよう

流麗でうら寂しい

かず子さん心配なさらないで 日本の貴婦人はついさっきまで彼女の闘争の中にいたのよ 

貴方の

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愛詩

愛詩

どうか忘れてくれるな 貴方はいま ただ寂しい

大きな孤独に包まれて 木枯らし通る秋の道

どうか忘れてくれるな 貴方は人が恐ろしい

優しさにさえ懐疑して 鬼面の影を友にみる

どうか忘れてくれるな 貴方は誰より優しい

自分の悲しさ顧みず 凍える人を温める

どうか忘れてくれるな 貴方は静かに強かだ

慟哭にいつも人気はなく 雨垂れの様に綺麗に滴る

どうか忘れてくれるな 貴方は気弱で美しい

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ノスタルジア

ノスタルジア

忘れましたか たまゆらの日々 温泉地 

上流にかかる太鼓橋 

その上で 僕らは皆目を瞑り

優しい陽を浴びました 可憐な微笑み 微風と

往来の会話朗らかで 川の流れもしおらしく 

私の心は和むばかり 河原の砂利の音 水切りと

靴にかかった無邪気な雫 小さな蕾が川に落ち

川は些か垢抜けた 少女みたいな野良猫に

僕らは愛想尽かされて 善の笑顔が溢れたな

思わせぶりなあの態度 彼の娘と同

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