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「最高の試合とは」 4年・渡邊恵太

 リーグ戦も19節まで終了し、残る試合も僅かとなっている。最近まで、青々と茂っていた東伏見の木々も葉を落とし細い枝をあらわにしている。落ち葉を掃いている人、ボールを磨いている人、部室を掃除している人、ケアル(ケアルーム)での練習前のたわいもない会話、トレ室で筋トレに励む人。こんな光景を見るのもあと少しと考えると少し寂しくなってくる。

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 今シーズンは色々あった。新型コロナウイルスにより、2ヶ月ほどの活動休止。その間はずっと実家にいて、こんなに長く実家で過ごしていいものなのかと悶々としたことを覚えている。そんな時期でも部活を動かし続けようと、zoomでミーティング、zoomでトレーニングをみんなでしていた。同期とは就活の面接対策で毎日zoom。実家にいても結局部活。部活の同期と繋がっていた。
 活動再開が宣言され、東伏見でみんなに会えた日。当たり前だが、すごく幸せだと感じたことを今でも思い出す。

 そんなこともありながら、今はもうリーグ戦は19節が終了し、佳境を迎えている。自分たちのシーズンがもう終わろうとしている。


 審判員としても今シーズンは色々あった。
 昨年の部員ブログでは、審判は辛いことばかり、楽しいと思ったことはほとんどないと書いていたと思う。正直、審判人生(そんなに長くはない)の8割は辛いことであると思う。でも、今シーズンは胸を張って「楽しい」と言える。 

 それはなぜか、自分が思い描いていた審判像に近づけているからだと思う。

 自分が審判を本格的に始めたきっかけは、サッカーの審判に不満を抱いていたからである。(資格を取ったのはとりあえず高校時代に部活で取らされたからであるが、昇級しようと思ったきっかけである。)

 「え、どういうこと?」と思う方もいるかもしれない。そう、自分はいわゆる「やんちゃな選手」であった。審判の判定に文句を言い、自分がファウルだと思ったのに笛を吹いてもらえなければ審判に文句を言いまくる。ベンチでも、判定が少しでもおかしいと思えばとりあえず文句。文句言いまくりの選手であった。

 そんな自分であったのだが、自分が審判をやった方が上手くできる。自分が審判をやれば、自分のように不満を抱くような選手を少しでも減らすことができる。そしてより多くの選手が納得して試合ができる。円滑に試合が進むと勘違いし、審判員を本格的にやろうと思ったのである。


 だが、大学1.2.3年と辛いことしかほとんど記憶にない。審判をやっては文句を言われ、選手に迷惑をかけてしまった自分の不甲斐なさに腹が立ち、選手にとってどの試合であっても大事な1戦、審判員という立場で関わる以上、試合を円滑になおかつ選手が不満を抱かずに試合が終わることが重要であると考えていた。しかし、そんなことは初心者審判員の自分には遠い夢物語であり、全くもってできることではなかった。

 フェスティバルのような試合でさえ、めちゃくちゃ荒らし、イエローカード6枚、レッドカード2枚。挙げ句の果てには、副審をやってくれていた選手から「お前ちゃんとやれよ。」「審判やめろよ。」と言われる始末。言われたことに腹が立つ以前に自分の不甲斐なさに腹が立ち、悲しくなり審判のモチベーションも下がる日々。そんなこんなで審判をなんとか続けていたある日、ア式蹴球部の審判部創設に携わり、日々の活動をア式蹴球部と共にしたことが転機であった。ア式蹴球部という高いレベルでのサッカーに触れることができ、その中で日々の紅白戦や練習試合、選手から色々なフィードバックをもらい、自分で映像を見て考え試行錯誤し、自分が上手くなることが選手のため、チームのためになると思い日々審判力を向上させようと考えた。

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 そんな日々を過ごし今シーズン。2級審判員になることができ、関東大学2部の主審、アミノバイタルカップの主審など今まで経験したことのないようなレベルの高い数多くの試合を担当することができた。前期には毎週末流通経済大学に足を運び試合を行う日々。そんな審判漬けの中で、あるチームの選手に「今日もよろしくお願いします。」と言っていただき。顔を覚えてもらえていた。(多分、今シーズンだけで主審副審含めて5試合はやっている。)また、別の試合でも「今日は主審じゃないんですか!? 主審やってくださいよ。(笑)」といった言葉もいただいた。別の試合では、あるチームの監督さんに「いつもありがとうございます。よろしくお願いします。」と言っていただけた。ものすごく嬉しかった。
 今までは、自分の力不足で選手やチームに迷惑をかけフラストレーションを抱かせてしまっていた。しかし、今シーズンは上記のような選手の言葉、監督さんの言葉を聞いて少しでも審判を気にせず、気持ちよく試合をしてくれた人がいたと思うと嬉しくてたまらなかった。自分が上手くなった嬉しさというよりも、審判という存在が目立たず、試合をフェアで楽しいものとして成立させることができたことが嬉しかった。



 最後に、自分が大切にしているサッカー競技規則の精神で締めたいと思う。
「最高の試合とは、競技者同士、審判、そして競技規則がリスペクトされ、審判がほとんど登場することのない試合である。」


 今シーズンも残り数試合、審判員として「選手のため」に最大限の力を尽くして頑張っていきたいと思います。


 長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。



渡邊恵太(わたなべけいた)
学年:4年
学部:社会科学部
出身校:静岡高校


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