見出し画像

【宇宙ビジネス最新動向解説】スペースデブリ問題に対する新たな取り組み「Space Traffic Management(宇宙交通管理)」。政府主導の宇宙インフラ整備にも見えるスペースXの存在感とは!?【ワープスペースCSOが語る:SmallSat Symposium 2024 前編】

 ワープスペースCSOの森は、2月6日〜8日に、アメリカ合衆国カリフォルニア州のマウンテンビューにあるコンピュータ歴史博物館(Computer History Museum)にて開催される、小型衛星事業者向けのイベントSmallSat Symposium 2024に参加しました。主催は、人工衛星関連の幅広いニュースを扱うメディアであるSatNews社です。
 SmallSat Symposiumは、マネージメントや産業の現場に携わる方々が多く参加します。本稿では現地参加した森へのインタビューを基に、小型衛星市場の最新動向としてチェックすべき「STM(Space Traffic Management 宇宙交通管理)」について解説します。
(後編はこちら
(昨年度開催のSmallSat Symposium 2023の記事はこちらです。)

SmallSat Symposium 2024にて講演するリチャード・ダルベロ氏。

 近年、宇宙を利用する産業がすさまじいスピードで発展している一方で、人工衛星とスペースデブリの衝突リスクは日に日に増加しており、無視できないレベルに到達しています。そうした背景から、SmallSat Symposium 2024では、米国宇宙商務局長、リチャード・ダルベロ氏が持続可能な宇宙開発のためにはSTMへの取り組みが重要であることを強調しました(*1)。米国宇宙商務局は宇宙物体の管理を規制するSTMの役割を、アメリカ国防総省(ペンタゴン)から引き受けています。

(*1 【SPACE NEWS】Space industry urged to take a broader view of sustainability)

 リチャード・ダルベロ氏は、

衛星群で埋め尽くされる地球低軌道の利用が制限されないように、軌道の効率的利用と公平性を踏まえ、オープンソースのプラットフォームを作成する。そのためのパートナーとして、スペースX社を選定した。

と発表しています。

 スペースXは既にStarlink衛星をおよそ6000機ほど打ち上げており、その衛星コンステレーションの運用のため、強力な自動回避プログラムのノウハウを持っています。スペースXは2月12日にも、初期のバージョンのスターリンク衛星100基を、制御された降下操作により軌道から外す計画を発表しています(*2)。その際、他の事業者との活動を調整するため、スペースXは降下するスターリンク衛星に関する位置情報と予測情報を共有し、衝突リスクがある場合にはスターリンクの側が軌道制御により衝突を回避する想定です。こうした衛星コンステレーションの運用に関するリスク管理ノウハウが、米国宇宙産業局によるSTMには重要だと考えられたようです。

(*2 【Via Satellite】SpaceX Details Plan to Actively Deorbit 100 Starlink Satellites)

これを踏まえて森は、

今回、政府側がパートナー企業を選定した形になっているが、実際には政府がスペースXに教えを乞っているように見える。まるで15世紀に銀行業で財をなし、ローマ教皇庁の管財人となったメディチ家のようだ。

と分析します。従来の宇宙ビジネスでは、民間企業は政府からお金を融資してもらい事業に取り組むことが多くありました。今回の件を通して、改めてスペースXの影響力の大きさが伺えます。

 メディチ家はローマ教皇庁の管財人経てローマ教皇そのものを輩出した家系ですが、スペースXはそれに続く覇道を歩むのか、今後の動向に注目です。

(執筆:中澤淳一郎)


この記事が参加している募集

イベントレポ

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?