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【宇宙ビジネス最新動向解説】近年のモバイル通信市場でのトレンド「Direct to cell」総まとめ【ワープスペースCSOが語る: Mobile World Congress 2024 後編】

 ワープスペースは総務省による2023年度のSBIR推進プログラムに、衛星光通信ネットワークにおける互換性および相互運用性を持つ光通信モデム及びルータの開発の案件が採択されております(*1)。宇宙機器開発全般の傾向として、地上でも用いられている民生品の転用(商用オフザシェルフ:COTS)が重要です。そうした背景を踏まえ、、地上の通信機器の動向を把握するため、ワープスペースCSOの森は2月28日〜29日に、バルセロナにて開催される、携帯電話をはじめとする地上のモバイル通信に関する世界最大級のイベント「MWC(Mobile World Congress)」に参加しました。
(*1 【ワープスペース】ワープスペース、2023年度のNEDOの研究開発型スタートアップ支援事業「SBIR推進プログラム」に採択)
 後編である本稿では現地参加したワープスペースCSOの森へのインタビューを基に、衛星通信プレイヤーの最新動向について解説します。
 前編の記事はこちら

 今回のMWCにて森が特に注目したトピックは、衛星通信のプレイヤーのプレゼンスです。近年のモバイル通信市場でのトレンドである、大容量、低遅延、多接続な5Gやそれをさらに超えるBeyond 5Gの実現のためには、衛星間の高速通信技術や衛星と地上のモバイル端末を接続する「Direct to cell」構想など、宇宙空間での通信技術の発展が欠かせません。そのような業界の構造により、地上のモバイル通信市場にて、上記のようなサービスを提供する衛星通信事業者の存在感が着実に大きくなってきていると森は語ります。

 SpaceXのStarlink衛星とauスマートフォンとの直接通信サービス(*2)や、Iridium Communicationsはモバイル通信技術関連企業のQualcommの協業による「Direct to cell」事業(*3)などが特にフィーチャーされています。その他にも、Starlink衛星による地球低軌道でのコンステレーションによる高速通信や、GSO衛星を用いた衛星通信サービスを展開してきたIntelsat社などの数多くの衛星通信事業者が存在感を強めています。

(*2 【KDDI】~空が見えれば、どこでもつながる~)
(*3 【Via Satellite】Satellite-to-Cell Partnerships, Tech, and Regulatory Issues Take Center Stage)

それを裏付けるように、衛星通信大手からニュースペースと言われる新興企業まで、数多くの衛星通信事業者がモバイル通信事業者との協業を発表しており、今後もこの傾向は加速していくことが予想されます。

楽天グループの楽天モバイルも、AST SpaceMobileとの協業により、モバイル端末との直接通信を展開予定です。
2023年3月時点での「Satellite Direct-to-Cell」市場の動向(*12:筆者作成を修正)

 これらの衛星通信市場と地上モバイル通信市場については、過去のワープスペースのNote記事(*12,13)にもまとめてあります。こちらも併せてご覧ください。

(*4 【CNBC】Iridium, Qualcomm end satellite-to-phone partnership)
(*5 【Fierce Wireless】Lynk Global moves closer to reality with BICS deal)
(*6 【T-mobile】First SpaceX Satellites Launch for Breakthrough Direct to Cell Service with T-Mobile)
(*7 【Salt】First SpaceX Satellites with Direct to Cell Capabilities Launched, Paving the Way for Satellite-Powered Phone Connections for Salt Subscribers in Switzerland)
(*8 【KDDI】スペースX、スマホとの直接通信が可能な衛星の初打ち上げに成功)
(*9 【ADVANCED TELEVISION】Globalstar gaining from Apple deal)
(*10 【Inmarsat】Viasat Completes Acquisition of Inmarsat)
(*11 【楽天モバイル】楽天モバイル、AST SpaceMobileとの衛星と携帯の直接通信による国内サービスを2026年内に提供を目指す計画を発表)
(*12 【ワープスペース Note】【SATELLITE 2023】米国最大級のカンファレンスで見える通信衛星業界の新展開とは)
(*13 【ワープスペース Note】【WSBW 2023】止まらないNew Spaceの進撃。MEOを巡る衛星通信事業にも新展開か)

(執筆:中澤淳一郎)


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