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人の手を通して、完成するもの

#一人じゃ気付けなかったこと

#あの会話をきっかけに

これらのハッシュタグを見て、書いておきたいなと思った言葉がいくつもある。 それは実際に人に言われたこともそうだが、歌詞や映画、本に漫画......数えきれないほど影響を受けている私は自他共に認めるスポンジ気質のようだ。 WARP & WEFTのS曰く、鵜呑みにしやすい、のでもあるが、そこは素直と言って欲しい。 納得できない物事にはそもそも同調しないので、分別は出来ていると思う。

さて、今回はその中でも10数年を共にしてきている友人の言葉を1つ挙げたい。

「洋服は買った時が完成じゃなくて、自分で着て完成させる」

なるほどなぁ、とうなづいた。 ちょうどその頃はリジッドデニムを一から履き込んで育てていくのが私たちの中で流行っていた。ここで言うリジッドデニムとは、糊付きでワンウォッシュもされていないパリッパリの状態のデニム生地を使ったジーンズのことだ。 シルエットによっては、硬さがあるせいで、しゃがむととはや鬱血するほど。

しかし、その所作は、膝裏の可動させることから、同じ部位に顕著な経年変化(エイジング)を与えてくれる。 ジーンズ好きから「ハチノス」と呼ばれる味を生み出すわけだ。 この名称はそのまま、蜂の巣の形状に似ていることから由来する。 そして、着れば着るほど、全体的に色がフェードしていき、当初のインディゴブルーからアイスブルーへと変化していく。

生地の硬さ、色の落ち方、自分だけの時間を感じさせる、その各所の経年変化のことを友人は言っているのだと思う。

これはつまるところ、こうも解釈できるのではないか。 新品の状態で陳列されている製品はあくまで展示品あるいは作品としてそこに在り、用途があるのならその物として完成される。 服なら、誰かが着て初めて服は服として完成される。 そういう理屈だ。 

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前回の記事で紹介した「nonnative(ノンネイティヴ)」のジーンズだ。 よろしければそちらもぜひご覧いただければと思う。

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春秋冬と着続けている「nuterm(ニューターム)」のシャツと「Babour(バブアー)」のワックスドジャケット。 シャツは「THOMAS MASON(トーマス・メイソン)」社の上品な生地を使ったものだが、その時のテーマに合わせてわざわざアームを取り付け、ハンドで縫っているなど非常に芸が細かいし、バブアーに関してはワックスドジャケット持ち前の撥水性で全天候対応できることに加え、特性上だろうか通常のコットン生地よりも防寒性があり、私はこの中にポーラテックのフリースなどを着て真冬を凌いでいる。

このように、うんちくあれど勝手ではあるがモノ視点を考えたら、着て、使ってが全うだろう。 コレクション化されているギターや革靴に対する思いも、同じだ。

家だって空気の入れ替えをしているといないとでは、老朽化の進み方が違うと聞いた。 意外なことに、換気しているほうが長持ちするらしい。 人間で言うところの呼吸なのだと思う。 

余談だが、友人は最初はA.P.C(アーペーセー)を好んで穿いていたがデザイナーや生産地の変更に伴い、色々とトライしていた。 一周して今はYAECA(ヤエカ)のジーンズを愛用しているらしい。 リジッドデニムではないが曰く「ちょうど良い」のだそう。 「ちょうど良い」って抽象的だが、ものすごく重要だ。 それにパックTを着て、ジャックパーセルなんて履けば、なんとも格好良いのだから正直少し嫌になってしまう。 それにしたっていつも、買い物には慎重だ。学生時代に纏っていたものも、今でも持っているし、納得をして買っている、というのがわかる。

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憧れのブランドを買って着て、はい終わり。という買い方は個人的に、あまりしっくり来ない。 もちろん理解はできる。 今なら買って売って買って〜のサイクルが手軽にできるから、最新の服を楽しむハードルが低くなるという点においては合理的だ。 それでも私は、買い物は慎重に選んで、長く使っていきたい。 その買い方についての話は、今度はWARP & WEFTのIが関わってくることになるのだけれど、またのご機会に話せればと思う。

とにもかくにも、買ったものを丁寧に使い続ける責任が「買い物」という行為には、もれなくついて来る。 

友人の言葉は、今だに私の買い物基準の一つになっている。

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