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私的アンサンブル論(ポップス歌ものバンド編2 コード、オブリガート)

普段何を考えて演奏しているのか人それぞれだと思うが、個人的に気をつけていることを記していく。
ここでいうバンドは、ボーカル、ドラム、ベース、ギター、キーボードの編成とする。

現在私の仕事の大部分を占めるポップスの歌ものは、テクニカルな部分ではそこまで高度なことを求められないが、アンサンブル的には高度なバランス感覚とセンスが求められる。いくつかの観点から分析する。第二回目はコード、オブリガートについて。

ポップスに於いて演奏する際に最も用いられるのがコード譜なのだが、クラシックなどで用いられるおたまじゃくしのいっぱい書いてある、いわゆる「書き譜」に比べるととても情報が少ない譜面であり、演奏するにはコツがいる。気をつけていることは大きく分けて2つ、「メロディとの親和性」そして、「ギターとの役割の棲み分け」である。

メロディとの親和性

楽曲に於いて最も重要なのはメロディであるが、これを際立たせるか邪魔してしまうかは紙一重だ。私自身も常にトライアンドエラーで、丁度いいところを探り続けている。
コードで伴奏する基本として、トップノート(一番上の音)を何の音にするかには常に気をつけねばならない。ここでは参考曲として、童謡の故郷を用いる。wikipedia情報で申し訳ないが、原曲はGメジャーのようだ。
楽譜は面倒なので載せない。
メロディの最初の音はG、コードはGメジャーだ。この場合、メロディの音をトップノートに持ってくると収まりが良くなることが多い。左手でG、右手で下からB,D,Gと押さえる。
そのあとコードはD7になるが、基本的にはクラシックの和声法を踏襲して、共通の音はステイさせる。GとD7の共通音はDなので、D7の右手はC,D,F♯となる。細かい解説は面倒なのでしない。

まとめると、「メロディーの開始音をトップノートにして、あとはクラシックのルールに沿ってヴォイシングを変えていく」ということだ。

だがしかし!、ポップスのコードはテンションコードのオンパレードな曲も少なくなく、基本を守ろうとしすぎると大変弾きづらくなってしまう。
テンションコードはサウンドしやすい押さえ方がある。

これとか


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これとか

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ってわからないか笑
私はコードは独学なので(というかポピュラー音楽の特定の師匠はいない。聴いて、見て、盗むスタイル)名盤と言われる音源を適当にジャンル関係なく聴いたり、仕事を通して学んでいった。すると、どのプレイヤーも大体同じヴォイシングで弾いていることに気がついた。いつもどう押さえるのか言葉で説明したことないが、3rdか7thに親指を置いて、小指を親指から長7度の音程(半音下の1オクターブ上)になるよう置いて、人差し指と中指を隣り合わせてなんかいい感じになるところに置くといい感じの音が鳴る。
あとは闇雲に笑 増三和音。減三和音。
結局はパズルで、ノーマルなコードに、b9th,9th,♯9th,11th,♯11th,b13th,13thをいいサウンドがするように重ねればいい。
まあそんなことは既に世の中に情報が溢れているので僕が説明するまでもないが、テンションコードが来た時は、そのコードが一番サウンドするヴォイシングで弾くことを優先し、尚且つメロディにぶつからない音を弾くことを心がける。結果的にトップノートにメロディの音を持ってくることが多いが特に取りづらいであろう♯9th,♯11th,b13thあたりはマストと言ってもいい。そういう時は自分で五線に音符を書き込む。
あとは第一展開形、例えばC/Eの押さえ方だが、クラシック的にはルート以外には3rdの音を使ってはいけないルールがあり、それを無意識に守ることが多いが、守らないこともある。原曲がそうなっていなかったり、その方が曲にハマる感じがしたり…そこはセンスである。あと、何も書いていなくも9thの音を足して弾く(E,C,D,Gのような形で)場合が多い。大体ちょっと洒落っけのある曲では足した方が雰囲気が出る。それもセンスである。

ギターとの役割の棲み分け

基本的には「片方が細かく刻んでいたらもう一方は長い音符を弾く」で問題ない。
曲調によってピアノが引っ張った方がいい曲、ギターの方がいい曲があり、主導権がどちらにあるのかをお互いに認識していることが大切である。乱暴に言えば、バラードはピアノ、ロックと16ビートはギターである。いや、そうでもないかも。結局はアレンジ次第で、どんなサウンドが求められているかを理解して、自分の役割を全うする事だ。全部2分音符で弾くのがベストなサウンドなら、それを貫く事。技をひけらかしていいところを見せようとするのは、エゴ以外の何物でもない。
プロデューサーなどから「もっと暴れろ、目立て、弾きまくれ」と言われればその限りではない笑
プレイヤーはそういう場面では所詮駒だ。自分の意見は胸にしまっておこう。

オブリガート

これが一番難しい。基本的にはメロディとメロディの隙間を埋めるものだ。いくつかパターンがある。
1、技を見せるかっこいいフレーズ。純粋にカッコよければいい。

2、オブリの直前のメロディを受け継いだフレーズ。メロディと同じリズム、音形で。または逆行で(メロディが上行なら下行)

3、オブリの直後のメロディを呼び込むフレーズ。メロディと同じリズム、音形で。または逆行で。

4、メロディに対して対位法的に重ねるフレーズ。簡単に言えば、メロディが動いていれば長い音のフレーズ、動いてなければ細かいフレーズを重ねる。

5、他のプレーヤーが放ったキャッチーなオブリ(ドラムも含む)に乗っかったり、次の小節でリズムだけを引き継ぎコードに合うように変化させたフレーズ。

他にもあると思うが、パッと思いつくのはこんなところだ。
オブリは思いついたもん勝ち、主張の強い人勝ちな面がある。やりすぎはウザいが、やらな過ぎもつまらない。センスだ。
間違いなく言えるのは、メロディをモチーフにした方が曲の統一感が出る事、その曲の自分の役割をしっかりとこなした上でやる事。オブリをやる余裕がなければやる必要はない。安定したテンポ、リズムで弾くことが最優先だ。

まとめ

いろんな音楽、仲間から吸収して、センスを磨くべし。メロディを軸に構築すべし。自分のスタンスをはっきりと。曲をリスペクトする事。他人をリスペクトする事。オブリは思いやり。
そういう考えを持った人同士での演奏は最高に幸せです。



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