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法務庁特別審査局調査員・佐伯
ごった返す人々の放つ臭気。汗と熱気がいっしょくたになった猥雑さ。芋飴は公定価格の五〇倍の値段がついている。
闇市の飯屋で、一杯五円の肉入りうどんをその男はすすっていた。
「稼いでるんだろう? なんでこんな場末で食ってる」
「こういう場所のほうがその国の日々の暮らしがわかる」
流暢な日本語でダニエル・リーが答えた。そんなもんかね、と佐伯は言った。
妙なもんだ。佐伯の生きてきた世界では敵
葬斂者 つま先立ちから歩みにて
魂の重さは大銅貨三枚分。
落屑した皮膚や、抜け落ちた髪を掻き集めれば、達しえぬ数字ではない。
「『彼女』は真の強者だった」
おり敷いた騎士がいう。血に錆び、打擲され歪んだ板金鎧。兜には刺剣に突かれた孔が穿たれている。腰に下げた龕灯の青白い光に照らされ、面具に顔が浮かぶ。
鼻も頬肉も削げた髑髏があった。
「『彼女』は戦場に死に場所を求め、しかし強者だった故に渇望した死をついぞ手に入れら
イン・プレス・イリーガル
東欧の酒はぬるくてまずい。
頬張った肉もゴムのようだ。噛んでも噛んでも硬いままで、無理やりに酒で流し込む。外国人向けのホテルといえど、この程度のクオリティとは。
私は不満とともに嘆息する。
視線で周囲を伺う。閑散としたレストラン。客も少ない。欠伸交じりで暇そうな給仕。これではろくに外貨も稼げまい。
共産圏のひなびた小国。防諜機関のレベルもさぞ低いだろう。
秘密情報部に依頼されセー
化生、人心を知らざれば
ぬるい雨が降っている。
全身ずぶ濡れになってすら、俺の肉体を、魂を焦がす炎は消えはしない。憎悪と憤激。哀切な痛み。痛覚のひとつひとつが内部から焙られる、そんな錯覚。俺は馬鹿馬鹿しいことを考える。もし俺が業火の中に潜むサラマンダーなら、炎の苦痛を感じずにすむだろうことを。爬虫類じみた怪物ならば、人間のように痛みに苛まれもしないだろうことを。
でも俺は人間だ。人間だから、常に過去に纏わりつか
スマイル・アニマル・マテリアル
胸が重苦しくて目を覚ましてみれば、すねこすりと猫が乗っていた。
すねこすりなんだからすねを擦れ、最近同居している猫に挙動が似てきてやがる。俺がベッドから起きあがると、二匹は迷惑そうにどく。どこかで極楽鳥が鳴いている。喉の乾きを癒そうと冷蔵庫に向かい扉を開ける。ウィンティゴと雪女が密会していたので一言謝って見なかったことにする。
世界はいきものに溢れている。
好奇心に取り憑かれた何者か