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月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
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#マレーシア

【読んでみましたアジア本】ねっとりとまとわりつく空気の中であえぐ女性たちを描く:賀淑芳・著/及川茜・訳『アミナ』(白水社)

「純真なアジアの人たち」

かつて、このような主旨の形容を使ったコメントを受け取ったことがある。そのコメント全体の文脈が、わたしの原稿に対する批判だったのか賛同だったのかはもう覚えていない。わたしの目はその表現に釘付けになった。

もし、それが観光PRのコピーならまだわたしもやり過ごせていた。だが、わたしの書く記事への感想として堂々とそういう表現を使ってくる人はいったい何を見てそう思っているのだろ

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【読んでみましたアジア本】東南アジアを青銅器時代から21世紀までをくまなく網羅した一冊:古田元夫『東南アジア史10講』(岩波書店)

日本人がアジアの歴史を振り返る時、さまざまな感情が湧いてくる。知っていること、知らないこと、何を自分が知っているのか、何を知らないのかということでさえ、考えてみようとすると心臓がどきどきしてくる。

もちろん、そんなことはない、そんなことは気にしない、そんなことを気にする必要はない、という人もいるだろう。だが、どんな態度を取ろうとも、アジアの歴史を掘り起こす時、日本の存在は「不在」ではいられない。

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【読んでみましたアジア本】「ピープルズパワー」はいかにしてドゥテルテを生んだのか:見市建、茅根由佳・編『ソーシャルメディア時代の東南アジア政治』

書名を見ればピンとくるだろう、今回ご紹介するのはいわゆる大学の先生たちによる学術研究論文集である。わたしがいちばーーーん、苦手とする種類の書籍だ。

苦手とする理由は、とにかく研究者の書く文章は仲間内でのシェアを考慮して書かれており、また仲間内で知られている条件をもとに「オレの見解では」をアピールするのが必須なので、その学者がどんな位置にあるのかはあまり興味なく、総体論を知りたい一般読者は読んでい

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