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【本物の”偽電気ブラン”】 BARノスタルジアに行ってみた

人類皆兄弟姉妹。嫌いな人はいないであろう。
森見登美彦の傑作『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』
その作中で登場する「偽電気ブラン」はフィクションではなかった。夜は短しでも幻の酒と評されるこの偽電気ブランは実在したのである!!

1. どこで飲めるのか

京都河原町通沿いに位置するBAR 「ノスタルジア」
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地下にあり、小説の世界にきている様。

2. 味

味は言葉では表現できない。『夜は短し歩けよ乙女』登場する黒髪の乙女の言葉を借りるとする。

偽電気ブランを初めて口にした時の感動をいかに表すべきでしょう。
偽電気ブランは甘くも無く辛くもありません。
想像していたような、舌の上に稲妻が走るようなものでもありません。
それはただ芳醇な香りを持った無味の飲み物というべき物です。
本来味と香りは根を同じくするものかと思っておりましたが、このお酒に限ってはそうではないのです。
口に含むたびに花が咲き、それは何ら余計な味を残さずにお腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。それが実に可愛らしく、まるでお腹の中が花畑になっていくようなのです。
飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくるのです。
…ああ、いいなあ、いいなあ。
こんな風にずうっと飲んでいたいなあ。…

天才的かつ暴論的表現である。
お酒が持つ魔力のようなものを幻想的に掻き立てさせられる。しかし全く味についてはわからないどころか、無味の飲み物と言っている。
天才的に暴言的妄言である。

是非確かめて頂きたい。ちなみに森見登美彦氏はお酒が弱いらしく、すぐ顔が赤くなるが、それでも偽電気ブランはストレートで飲むそう。

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素晴らしいお店でした。
ぜひ皆様一度足をお運びになって。

3. 森見登美彦が仕掛けたフィクション

森見作品は基本的に京都が舞台だ。特に左京区と河原町周辺。京都大学生の青春の街だ。作品では魅力的な店やものが次々と出てくる。

下鴨幽水荘
猫ラーメン
朱硝子
夜の翼
暴夜書房
へそ石
などなど…

それぞれに一応のモデルはあるらしいが、モデルはモデルでしかない。
フィクションの世界とこっちの世界は重なるようでねじれの関係でしかなかった。
本物を体験しても何かが足りない。
モデルとなったお店や土地を巡り森見ワールドを実感しようとする。最高の気分になり世界に一瞬入り込んだ、、、気分になれる。
だけど欲望の渇きは決して潤わない。

ああ、樋口先輩。
ああ、黒髪の乙女よ。
ああ、愛しき小津よ。
ああ、矢三郎よ、弁天よ。
ああ、森見登美彦よ。


森見登美彦の表現した世界は決して辿り着くことができない理想郷。
あそこまで現実的に幻想的な日常を描いた作家は今までにいたのだろうか。
決して届かないからこそ理想は理想であり続ける。
森見ワールドは人間の一生をフィクションと捉えたもの。

森見ワールドと現実をごっちゃ返して楽しむのは危険な戯れである。
混ぜるな危険、危険であるぞ。




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