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2020をピークに日本を後進国化させないための、IRとスキー場の話

前から言っているのですが、IR(統合型リゾート)とスキー場(スノーリゾート)にめちゃくちゃ注目しています。

以前、こんな記事もシェアしました。

菅長官「今後のカギは統合リゾートとスキー場だ」

これが、個人的にとてもアツい。観光立国としての日本という国の未来を考えたとき、この2つがキーになると私もまさに感じはじめていたからです。

今年に入って、仕事を通じてIR(統合リゾート)関係に詳しくなり、ちょうどものすごく可能性を感じていました。一方でスキー場やスノー産業については、業界にタッチしはじめてからはまだ1年ほどですが、プライベートでもずっと興味をもっている領域です。何度かnoteでもスノーリゾートについて書きました。

東京五輪のある2020年を終えて、その先の日本にとってIRとスキー場がどう大事になりそうなのか、いま私に見えている世界をシェアします。

もはや後進国の日本。2020の先、どうなる?

少し前に孫さんが「日本は後進国」とぶった切っていました。

» 日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう|Newsweek日本版 2019.08.27
» 「この数年で日本は発展途上国になった。結構やばい」孫社長がAI分野で指摘|Engadget日本版 2019.07.18 

日本は「かつて豊かだった」のではなく、もともと貧しかったのだ。事実、日本の労働生産性の順位はこの50年間ほとんど変わっていない。昔から傑出した技術大国であったという自らの「勘違い」に向き合わねば、日本経済はトンネルを抜けることはできない。
このところ日本社会が急速に貧しくなっていることは、多くの人が自覚しているはずだが、一連の状況はすべて数字に反映されている。(中略)日本はもともと貧しく、80年代に豊かになりかかったものの「再び貧しい時代に戻りつつある」というのが正しい認識といってよいだろう。

これはAI分野の指摘でしたが、「日本は後進国」については、私自身も海外から帰国すると感じることがあります。

このSDGs時代にビニール袋やストローが無限に配られるし、クレジットカードもタッチ決済もあまり使えない。手書き×印鑑がまだまだ正義で、手渡しや郵送じゃないとできないことがたくさんある。

日本は大好きだし素晴らしい国だけど、ガラパゴスじゃ済まされないレベルでさまざまな面で世界とずれている。。


最近まわりには、海外移住を考えている人が多いです。

テクノロジーを使いこなせる優秀な人ほど海外に流れていきますが、「日本円を稼いで海外に落とす」というチートスタイルをやる人が増えたら、ふつうに考えて日本終わりますよね。

今は五輪というビッグイベントが控えているからすこし気が紛れているような感じがあるけど、このままだと2020以降ほんとにヤバい後進国になってしまうのでは……という危機感があります。

リモートワークが機能するのも、景気のいい日本経済あってこそ。私は海外に逃げるんじゃなく、自分が生まれ育った日本のこと、真剣に考えたいなと思っている派です。

2025に向けたIR=統合リゾート誘致計画

2020の後の日本は、インバウンドで観光立国になろうとしています。

そのなかでひとつ莫大な政治とカネが動いているのが、「IR=カジノを含む統合型リゾート」

日本にもついにカジノができるのかい?くらいの認識の人に説明すると、2017年にIR推進法(通称:カジノ法案)が制定され、2025年頃を目安に、国内で3つまでIR施設がつくられることになっています。

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見たほうが早いと思うので、、これは大手オペレーターのMGMリゾーツが大阪に出している構想案。王道な感じでかっこいい。

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横浜はこんな感じ。横浜の港らしさが出ていますねー。

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北海道・苫小牧にはハードロック社が提案していて、巨大なギターがあったりと、だいぶ異次元。テーマパークのように楽しげです。

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ちなみに個人的にイチオシなのが、モヒガンエンターテインメントが北海道・苫小牧にて提案している、「自然と共生し四季を感じられるリゾート」。この案、通ってほしい。


「国内に3つまで」なので、これらはまだ構想案の段階(公式画像をお借りしています)。3枠を巡って、うちの県にはどんなIRが良いかねぇ〜と外資オペレーターから提案を募ったりして、各自治体が整備や法的なことを進めているのが今です。

有力候補地は、大阪・夢洲、北海道・苫小牧、長崎・ハウステンボス、和歌山・マリーナシティなど。私の地元である神奈川・横浜も名乗りを上げて、若干炎上していましたが。建設地が決まるのは2022年頃の予定です。

IR=カジノと思われがちですが、カジノが占めるのは施設全体のたった3%に過ぎません。シンガポールのマリーナベイサンズなどがわかりやすい例で、巨大な建物にレストラン、ホテル、コンベンションセンター、シアターなどが入っていて、その最上階などにカジノがあるのが「統合型リゾート施設」という形態です。

メインターゲットは外国人観光客。とくに「中国人富裕層」は大きな割合を占めることが見込まれていて、ビジネスカンファレンスに参加したあとにカジノで交流……みたいなリッチな客層も狙っていたり。

ギャンブル依存症が心配されたりもしていますが、パチンコとかとは全然違うもの。もっと大きな、上流のものを見据えた構想です。

インバウンド客はIR施設からスキー場へ流入する

中華圏をはじめとした海外の富裕層がIRに押し寄せるのはおそらく間違いないのですが、彼らにとって圧倒的に魅力あるデスティネーションになりつつあるのが、日本のスノーリゾートでもあります。

18-19冬に「爆滑り」というキーワードが話題になったように、最近は中華圏からスキー場に来る観光客が急増しています。そして2022年には、北京冬季五輪も控えている。

スノー業界では当たり前になりつつある話ですが、中国は国策として氷雪旅行(ウィンタースポーツ)を推進していて、ウィンタースポーツ人口を3億人にする計画をしています。

これがどのくらい異次元の数字かというと、日本のバブル期におけるウィンタースポーツ人口で1,700万人ほど。映画『私をスキーに連れてって』が公開された1987年で、これですからね。3億人は凄まじい人数。

IR施設ができる2025年ごろには、中華圏のスキー産業が今よりも格段に盛り上がっているはずです。この両者の状況をみると、IRからスキー場へのインバウンド観光客の流入は必至に思えます。

とくに東京・横浜・大阪などから3〜4時間でアクセスできるスノーリゾートには、IRとセットで楽しむ観光客が殺到しそう。ちなみに、IRは通年リゾートなので、今どこのスキー場も力を入れている「グリーンシーズンを含めた通年観光戦略」は、この視点で見ても正しい方向性だと思います。

スキー場の整備=通年リゾートとしての充実化?

先ほどの記事では、

統合リゾートとスキー場を整備するだけで年間1000万人は訪日客が増える

と菅官房長官が明言していました。2018年の1年間の訪日客は3000万人だったので、1000人増えれば25%増ということ。1000万人の外国人観光客がやって来てくれると、ざっと単価15万円と考えても、うまれる消費は約1.5兆円の計算になります。

そしてIRの予算を見てみると、2019年9月に成立した横浜市のIR誘致予算は、約34億円。桁が大きすぎて正直よくわかりませんが、1.5兆円の見込みにたいして横浜だけでこれなので、莫大な予算が動いていることはわかります。

でもそれで考えると、IRとスキー場がカギと言っているわりには、スキー関係事業者はどこもお金がなくて困っている。。老朽化が進んで廃業するスキー場、経営が立ち行かなくて閉じるスキー場周辺の宿、飲食店、ショップ、山のようにあります。

「スキー場の整備が大事」とのことなのですが、通年リゾートとしての充実化以前に、外国人観光客向けのインフラ面に注力したほうがよさそう。

最近、白馬などはリゾート開発の力の入れようがすごくて、「通年リゾートとしての充実化」は言うことなしに進んでいます。山の上にビーチ作ったり、絶景テラスカフェ作ったり、アウトドアの会社がすごい施設を建設してたり。

リゾートとしては華やかになっていて、メディア映えもする。けどこのIRからの流れや富裕層の取り込み、そして一時的なレジャー客の呼び込みではなく「日本の雪山のファン」になってくれる人を長期的に増やすという意味でいうと、

1. 外国人観光客(富裕層)の潜在ニーズを把握し応える
2. レジャー層ではなくコア層向けに雪の魅力を発信する

あたりが、キーになってきそうだと感じています。

1. 外国人観光客(富裕層)の潜在ニーズを把握し応える

最近オーストラリアにいるのですが、冬が近づいてきて日本へのスキー旅行の広告がたくさん出てきます。

そこでわかってきたのが、日本人が考える「外国人観光客(とくに富裕層)へのおもてなし」は、少しずれているかもしれないということ。

たとえば出てくる広告はこんな感じで、、、

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・質のよいパウダースノーであること
・専有アパートメントに宿泊できること
・リフトパス付きであること
・空港送迎付きであること
・ウェスタンスタイルの朝食付きであること

このあたりが訴求されているポイント。この広告は富裕層向けという感じではないのですが、ニーズはだいたい一緒です。体験の物珍しさや華やかさよりも、「質のよい雪をしっかりと堪能し、かつ快適なインフラを享受」という方向性が強めです。

ツイートもしたのですが、富豪のニーズとして「いつもと変わらない快適感の、少しラグジュアリーな空間」が求められるので、あまり奇をてらった体験を創出する必要はないのかも。

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昨年ニセコで把握しましたが、富豪たちが泊まりたいのはこういうところ。

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お洒落な建物がどこまでも続いていて、こういう家のような宿を1ヶ月〜数ヶ月単位で借りたりしています。

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1棟貸しのユニットレントみたいなのも人気。我が家のように。

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ちなみに中はこんな感じになっています。これは今冬にオープンするTELLUS NISEKOのパース画像をお借りました。羊蹄山がばっちり見えるし、ラグジュアリーの極み。

私の以前からの発信を知ってくれている人は、ニセコが外資に乗っ取られている・・・とか嘆いておきながらこんな写真をペタペタ貼るのは矛盾と思うかもしれないのですが、やっぱり外国人富裕層のニーズは圧倒的にここにあります。

日本文化はそれなりに楽しみたいのだけど、「古民家風」とかよりはラグジュアリーな客室で、(布団ではなく)ベッドで寝たい。温泉も入らないし、食材が地元産であればディナーも洋風でOK。

ちなみに余談で、私は白馬のピザレストランで働いていたことがあるのですが、外国人にピザってめっちゃ売れます。彼らはあくまでスノースポーツを楽しみに来ているわけなので、よくわからん日本食にトライしてみようとかあまり思わないんですよね(もちろん人によるけど)。馴染みのピザに地元産キノコが乗ってるくらいが、ちょうどいい。

すみません、ごはんじゃなくて宿の話。ニセコのように外資に土地を買われてしまう前に、国内企業がこういうの作れないのかな?と思ったりします。国が投資してくれてもいいですよね。

白馬にはマリオットホテルが進出したりもしていますが、パークハイアットやリッツカールトンなど高級ホテル開業ラッシュのニセコと違い、まだまだ富裕層向けのホテルやコンドミニアムが圧倒的に不足しています。Airbnbで探しても出てくるのは民宿ばかりで、アパートメントは少ないです。

「日本にスキーしに行ってみたいけど、なんか難しい」

と言われたこともあり……。わかる……。

他にもアクセスの問題とか、Wi-Fiがなさすぎるとか、リフト券の買い方が難しいとか、ゲレンデ食堂で英語が通じなさすぎるとかインフラ面の問題はたくさんあると思います。

ユニークな施設を作るのと並行で、きちんとお金を落としてくれる富裕層のニーズに応える、地に足のついたインフラ整備にお金が投入されるといいですよね。

2. レジャー層ではなくコア層向けに雪の魅力を発信する

もうひとつが、家族などのレジャー層ではなく「スキー/スノーボード愛好家」と呼べるようなコア層に向けた発信です。

中国のスノー産業はまだ始まったばかり。日本のバブル期前夜、みたいな状態が今なのです。これが2023、24、25年となってくると、当然みなさんの技術レベルが向上し、バックカントリーにも入ってみたくなったりします。

そういうコア層に向けては、もっと「日本の雪そのものの魅力」が伝わるようなコンテンツが必要になってきます。

海外のスキー/スノーボード愛好家の間では、JAPOW(JAPANのPOWDER SNOW)はまじでヤバい!と認識されています。北米・欧州のリゾートでも日本ほど雪質に恵まれる日は少なく、JAPOWはワールドクラスで見てもレベルが段違い。だいたいのことはこの記事で力説してるので見てほしいのですが、雪は国が授かった天然資源だと思っていまして。

このJAPOWのクオリティをどう伝えるか?が、長期目線で見るとカギになってくるはずです。中国は人工雪のスキー場ばかりなので、最初こそ「天然の雪を滑れる」だけでお客さんは来ます。けど技術レベルが上がれば、「どれだけ良い雪があるか」で世界中のスキー場を比較してデスティネーションを選ぶようになる。

今だと、まだ中国人の行き先としては日本はヨーロッパなどに負けていますが、この勝負に勝つための本質的な「雪質」というところでアドバンテージがある。日本のスノーリゾートは、「雪質」だけで世界と戦い勝てるポテンシャルを持っています。

直球でいうと、「日本のすばらしい雪質を伝えるコンテンツに、もっとIR整備レベルで国が投資してもよくない?」ということかも。


自治体がつくるきれいにまとまったプロモーション動画でできることって、「レジャー目的の観光客誘致」にすぎません。いろんな利権が絡むし、「やべぇ」って興奮とともにシェアされるような動画は出てこない。

すでに自国や他国で雪を楽しんでいるコア層には魅力を届けるには、やっぱり雪本来の魅力や世界観をスタイルをもって表現できる民間企業とそこに繋がる個人クリエイターが動ける仕組みが必要だと思います。

IRにそれだけの予算かけて動けるなら、スキー場もとい民間スノー関係団体・企業・個人にも、もっと投資されてほしい。。雪は日本を救うキラーコンテンツなので、魅せ方を工夫していけるといいですよね。

まとめ:日本の未来はIRとスキー場次第で変わる

IRとスキー場。本気で「日本の未来」はここにかかっている気がしてならない。。

IRはわりと順調だからいいとして、傾いているスキー場のほうがどうなるかが気になっています。スキー場が存続していくにはお金が必要で、お金を落としてくれるビジターが必要で。

「中国人観光客だらけになるのは嫌だ」
「自分たちのフィールドを荒らされたくない」
「せっかく見つけたスポット、独占したい」

みたいな思考はありがちですが、そんなこと言ってる場合ではないです。

けっこうな斜陽産業ではあるけど、ポテンシャルはありまくると思うので、きちんとルールとかマナーとか整備したうえで観光客とうまく共存し、自然の雪山で遊ぶことの価値をもっと上げていくという生存戦略を日本が取っていけるといいな、と。

気候変動の影響で雪が溶けてる……とかも問題視されているので、これはこれで別の活動が必要ですが。

IRの話から後半だいぶスキー場寄りになってしまいましたが、もはや「IRに紐付いたスノー産業」に国の未来がかかっているとまで思っているので、これからもウォッチしていきたい領域です。

なにか情報があれば、ぜひ教えてください!おわり。


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