【オルタナティブスクール訪問記/山口⑤ ~家庭での関わり。親が、〝自分の気持ち〟を子どもに伝えること~】
2日間が、あっという間に過ぎて
横浜に帰る朝がやってきた。
てらこやの充億さんが、新幹線が発着する駅まで送ってくれた。
その車中で、充億さんから、今のわたしにとって本当に大切な言葉を贈ってもらった。
車に乗り込むまで、一波乱あった。
珍獣(兄)は前日にてらこやで、大好きな工作に打ち込んだ。
ラップの入れ物や段ボールを使い、ロケットを制作。
完成させてからは、片時も離さずに持ち歩いていた。
そのロケットを、新幹線の乗車時刻が迫っており
大急ぎで車に乗り込む過程で、わたしが壊してしまったのだ。
壊したと言っても、つなぎ目はすべてセロハンテープだから
すぐに修復可能だったのだけれど、
珍獣(兄)は激高。
目をひん剥き、顔中の筋肉を総動員して表情をゆがめ
車内でも、泣き叫びわたしを罵倒し続けていた。
一旦癇癪を起こすと、もう手が付けられない。
時が過ぎて落ち着くのを待つしかない。
「ごめんねーごめんねー」。
「痛いなあ。かか(わたし)、いま痛かったよ(ノД`)」。←叩かれ
「ごめんね。でも、今ひどいこと言われて、かかは嫌だったな(ノД`)」。←誹謗中傷され
そんな風に、珍獣(兄)とやり取りしていた。
本当は、珍獣(兄)の理不尽な言動に腹を立てていた。
「今日は帰る日だから、もう着替えようね」
「あれ?もう食べた?走るなら、ご馳走さましようよ」
「え?かばんに詰めてたのに、なんで荷物全部出して広げてるの??なに考えてんの?(゚Д゚)ハァ?」
…などなど、ずーーーっとやさしーーーく準備を促してきたのに
珍獣ズは完全スルーで、遊びこけていた。
だから準備が遅れに遅れ、車に慌てて乗り込む事態となったのだ。
何回謝りゃええんや!!
それに、家に着いてテープ貼り替えれば直るって言うとるやんけ!!(゚Д゚)ゴルァァァァァァ!!!!!!
と、内心ではハラワタが煮えくり返るどころかもはやプスプスいっていたのだけれどOOooooo。。。。プスプス。。_o(|)O***__
疲れで、怒る気力も失せ
こちらの気持ちを織り交ぜつつ、珍獣(兄)をなだめていたのだった。
すると、「がんばりよるね」。
運転していた充億さんが、声を掛けてくれた。
そして、次のような趣旨の話をしてくれた。
『そんなふうに、親が子どもに〝自分の気持ち〟を伝えるのは、とても大切なことなんだ。
自分の気持ちを伝え合うことが、対等な関係でのコミュニケーションの基本だから。
大人はつい、頭ごなしに叱りかちだけれど
お母さん、お父さんの、家庭でのそういう言葉掛けが本当に大切。』
うろ覚えだけれど、そんな内容だったと思う。
「そういえば」。わたしは、てらこやのスタッフの方たちの対応を思い出した。
スタッフに対しては『先生』という呼称は用いられず、子どもたちと同じように、下の名前やニックネームで呼び合っていた。
子どもたちとの関わり方も、フラットな感じ。
うまく具体例を出せないのだけれど、『先生と生徒』という縦の関係ではなく
〝ちょっと大きい人たち〟もしくは、平仮名の〝おとな〟がしっくりくる印象をわたしは持った。
あの雰囲気が、子どもたちとの対等なコミュニケーションを象徴していたな…。
腹に落ちた。
そして、それが家庭における〝おとな〟にとっても大切な心掛けであることは、言うまでもない。
充億さんが、続けて話してくれた。
「学校〝だけ〟じゃ、だめ。学校と家庭、両方での(大人の)そういう関わり方が、大事だと思うよ。
どちらか一方じゃ、足りないんだ」。
腹より深く、心の奥にしみこむ言葉だった。
〝いい学校〟だけを追い求めて、それが叶えば万事OK、では決してない。
親が1人の人間として、子どもという1人の人間と触れ合う日常があってこそ
学びの環境を整えるアクションが、意味をもつんだ。
そう思った。
ただ、言葉がいくら染み込んでも
いつもいつも、そういう態度を取る(=自分の気持ちを伝え、対等なコミュニケーションを図る)ことは難しい…
というか無理…。
そうこぼすと、充億さんは笑って
「当たり前だよ!10回に1回できれば大丈夫」と励ましてくれた。