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学校教育の「個別性」と、それを含む全体カリキュラムの在り方とは?教育課程のこれからを探る②

7月、これからの教育課程や学習指導、学習評価などの在り方を議論する有識者会議において
『これからの教育課程の在り方』をテーマに、委員の話し合いが行われました。
前回のこの会議で、「議論の必要がある」と示された論点は4つ。
今回の記事では、この中でも特に


子どもたち1人ひとりの特性を考慮した教育課程の個別性と、それらを包摂する学校の教育課程との調整をどのように図るか?

という論点に焦点を当ててみます。

(前編「“学びの連続性”を担保せよ!子ども1人ひとりの“発達”に着目。教育課程のこれからを探る①」も是非読んでみて下さい!)


現行の学習指導要領の記載を確認


子どもたち1人ひとりの特性を考慮した教育課程の個別性と、それらを包摂する学校の教育課程との調整をどのように図るか?


この論点に関して、現行の学習指導要領ではどのように言及されているのでしょうか。
まず、確認してみます。

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中学校学習指導要領(平成29年3月告示)の、総則に
【生徒の発達の支援】という項目があり、そこで言及されています。
(小学校&高等学校の学習指導要領も同旨)
抜粋・意訳する形で、具体的に見てみます。

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集団に必要なガイダンスと、個別のカウンセリング

【生徒の発達の支援】

〈1〉生徒の発達を支える指導の充実

教育課程の編成・実施に際しては、次の事項に配慮するものとする。

◯下記の双方によって、生徒の発達を支援すること。
・主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンス
・個々の生徒の多様な実態を踏まえ、1人ひとりが抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリング

◯生徒が、基礎的・基本的な知識や技能の習得も含め、学習内容を確実に身につけることができるように、生徒や学校の実態に応じて

▷例えば下記のような学習を取り入れる。
・個別学習
・グループ別学習
・繰り返し学習
・学習内容の習熟の程度に応じた学習
・生徒の興味や関心等に応じた課題学習
・補充的な学習や発展的な学習などの学習活動

▷教師間の指導体制を確保する。

こうした指導方法や指導体制の工夫改善により、個に応じた指導の充実を図ること。

「特別な配慮が必要な生徒」に特化の項目


続く〈2〉は、【特別な配慮を必要とする生徒】に特化した項目となっています。
ここでいう特別な配慮を必要とする生徒とは、

・障害のある生徒
・海外から帰国した生徒など、学校生活への適応や日本語習得に困難のある生徒
・不登校の生徒
・学齢を経過した者

その上で、例えば「障害のある生徒」については
「特別支援学級で実施する特別な教育課程を編成する際のポイント」などが挙げられています。

「困難の解消」⇒「個性・才能伸ばす」視点を!

本会議の論点


子どもたち1人ひとりの特性を考慮した教育課程の個別性と、それらを包摂する学校の教育課程との調整をどのように図るか?


を念頭に置いた上で
上記で紹介した、現行の学習指導要領における記述に対し
委員からまず出たのは

「『個別最適な学びと協同的な学びの一体的な充実』を掲げた、“令和答申”(※)を踏まえた記載が必要ではないか」

という意見。
(※令和3年1月に公表された、「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~」の略称)

その上で同じ委員が、現行の学習指導要領の記載(「生徒の発達の支援」)について

「すべて、(その子どもの)“困難の解消”という視点で書かれている。
しかし文科省として、
『子どもの個性や才能を伸ばすという視点が必要』
という報告を出している。
『特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する 学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 審議のまとめ』などがそれに当たる。
(学習指導要領などにも)こうした視点が重要」

という趣旨の指摘をしました。

インクルーシブ教育で、多様性を学ぶ

また、先ほど紹介したように、現行の学習指導要領には
『特別な配慮を必要とする生徒への指導』
という項目がありますが、委員は

特別の支援のみでなく、定型発達(と呼ばれる)子どもたちも一緒に教育を受けることで、多様性を学ぶことができる。
特に義務教育段階でこそ、それが大切」

と、インクルーシブ教育の視点からの意見も述べました。

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個別性というのはそれ単体では意味を持ちえず、集団という前提があってこそ価値があると思うので
そのバランスをどう取るか?という、論点の設定に納得です。

ただ、現行の学習指導要領の関連部分を今回、改めて読んで
学校教育における個別性の担保について、既に具体的な記載がここまでされていることにいい意味で驚きつつ
現場の実践として、どこまで浸透しているのだろう…?と感じました。

学校教育に関する国全体としての方針と、現場の乖離は
どうすれば埋まるのでしょうか。
微力ながら、それを埋める一助になりたくて、亀ペースで発信しているものの
なにか有効な手立てはないものかな…と模索しています。
現場で日々奮闘されている、子どもたちの育ちを本質的に支えようという熱意のある先生方に、情報や知識を届けたいと切に願っています。


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