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海賊の首領にして華やかに女装するデ・ニーロ! それが「スターダスト」。

勝手にデ・ニーロ・ナイト、第八夜は、2007年のファンタジー映画「スターダスト」をお届けする。

あらすじはこちら↓

イングランドの外れにあるウォール村。18歳の青年トリスタンは愛するヴィクトリアの心をつかむため、魔法の国“ストームホールド”に落ちた流れ星をプレゼントしようとする。だが墜落現場で彼が見つけたのは、美しい女性の姿をした“流れ星”だった。そのころ、永遠の若さを手に入れようと“流れ星”の心臓を狙う魔女の三姉妹、“流れ星”が持つ王位継承の証であるルビーを狙う王子たちも彼女の行方を探していた。“流れ星”の争奪戦に巻き込まれたトリスタンは彼女を守るために戦うが…。

パラマウントピクチャーズ  公式サイトより引用

よくあるファンタジーものにしてストーリーはシンプル。
イケメンとヒロインが世界の命運を救うため旅に出る、愛と冒険の物語だ。
ただし監督が後に「キングスマン」シリーズを手がけるマシュー・ヴォーンなのでアクション描写がキレッキレ&軽快なリズムで話を進めるので、油断してると、振り解かれる。

デ・ニーロ、海賊王になる。


さて、デ・ニーロは、本作において
空飛ぶ海賊船(つまり空賊)キャスパータイン号のキャプテン・シェイクスピアを名乗っている。
狡猾で残虐との噂に違わず、空から降ってきたトリスタンとイヴェイン(美しい女性の姿をした“流れ星”とは彼女のこと。)を捕まえるや、縄でぐるぐる巻きにし、悪の親玉らしくさんざ罵声を浴びせた後、男は飛空挺から突き落とし女は慰み者にすることを部下の前で高らかに宣言し、それを実行する…

というのは、「欺くは味方から」の言葉通り、
トリスタンとイヴェインふたりを追う魔女の手下を欺くための詐術。
本当は心優しい:だから二人の旅に心良く力を貸す。
トリスタンは自分の甥として、イヴェインは自分のオンナとして、匿う。

渾名に「シェイクスピア」を付ける所以たる、イギリスへの憧れと思い入れはただものではない。
見た目は田舎者なのに、トリスタンに剣技と紳士の振る舞い、
イヴェインに教養と淑女のマナー、と今後の旅にそれぞれ必要となるものを教授する、二人の師匠となってやる。
知的な部分と動的な部分を兼ね備えるデ・ニーロだからこそ、説得力ある役柄。

もはや追っ手を撒けまい、と知った時、彼は一芝居打つ。
トリスタンとイヴェインをこっそり逃した後に、自分一人残って、追っ手を引き受けるのだ。
この時、イヴェイン嬢よろしく女装して独りタップを踏む姿は随一の見どころ。
(ジャック・オッフェンバックの重々しい「天国と地獄」が流れる中、髭面のむさいオヤジが完成度低いながらも軽快におどけてみせるギャップ、
実にキュート!)

飛空挺乗りで、世話焼きで、戦士タイプのオヤジで、勇気ある功労者。
すなわち、本作における彼は、FFにおけるシドである。

ミシェル・ファイファー、魔女になる。


なお、本作で一番マッドなのは
悪い魔女ラミア(演:ミシェル・ファイファー)である。

欲深魔女らしく、自分から逃げたイヴェインを追って、
どこまでもどこまでも執念深く追跡する。
そして、狼のように両目を釣り上げ、髪の毛を逆立て、殺気を放ち、刃物を振りかざしてイヴェインの命を狙い、あたりすべてを自身の魔力で破壊し、最後は大いなる力に取り込まれて破滅する…

これは、デ・ニーロ的というより、ニコルソン的狂気である。


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※勝手にデ・ニーロ・ナイト インデックス

第一夜:暴れん坊のデ・ニーロ「マチェーテ」

第二夜:青い目をした牢人のデ・ニーロ「RONIN」

第三夜:働き方を考えさせるナイスミドルのデ・ニーロ「マイ・インターン」

第四夜:ナイトメアクリスマス夢見るデ・ニーロ「ウィザード・オブ・ライズ」

第五夜:役作りに七転八倒のデ・ニーロ「俺たちは天使じゃない」

第六夜:沈痛のデ・ニーロ「ディア・ハンター」

第七夜:ハメを外すデ・ニーロ「ダーティ・グランパ」「ラストベガス」

第八夜:華麗なる紳士にして空賊のデ・ニーロ「スターダスト」

第九夜:自分探し真っ最中のデ・ニーロ「マラヴィータ」

第十夜:追憶のデ・ニーロ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」

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