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映画の名セリフ、、引いてみた。

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甘い言葉がある。辛い言葉がある。英語だとわかるニュアンス、日本語の方が腑に落ちやすいフレーズもある。 そんな映画の英語の名セリフを、拙訳と共に引いてみる。 目標は和田誠の「お楽し…
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2022年7月の記事一覧

“私は自分の実力で勝ちたいんだ!”ブラック大魔王の元ネタのたまう“The Great Race(1965)”

「チキチキマシン猛レースの元ネタだよね。」 「現代人は、チキチキマシンなんて知りません。」 black, white, and pink. 冒険にロマンがあった時代を軽やかに楽しく、描いて。 19世紀、世界は急速に狭くなっていった。蒸気機関の発明がもたらした鉄道をはじめとする交通機関の発達によって、欧州、インド、アジア、アメリカ、またをかけた大旅行が可能になった。そこには、確実に見知らぬ世界へ飛び込む喜びがあり、物見遊の喜びを多くの人に知らしめようと、後世に残る冒険文学が

“ばかげた球蹴りのせいで、すべて台無しだ!”_”Victory”(1982)

ジョン・ヒューストン監督、シルベスター・スタローン主演「勝利への脱出」より。 スタローンのペルソナが裏返った裏ベストといって良いと思う。ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワンなサッカーへの狂熱に巻き込まれる、アウトローの悲喜劇。 1943年。第2次大戦下のドイツ南方ゲンズドルフ収容所。そこでは、捕虜になった連合軍兵士たちが、鉄条網の中で、ボール・ゲームに暮れる絶望的な日々を送っていた。 そんな捕虜たちの中に、恵まれた身体能力を活かして機敏なゲームぶりを発揮する男がいた

“どんな弁護士も、踏み越えようと思わなかった一線を踏み越えてしまうのだ。”_“The Rainmaker (1997)”

弁護士とかけてサメととく、その心は? フランシス・フォード・コッポラのかっちり撮れた佳作「レインメーカー」より。原作はジョン・グレシャム。 凱旋当時の某オカダ・カズチカも「金の雨が降るぞ!」と息巻いていたが、まさしくその通りで、原題は「何も無いところから裁判沙汰によって金を捻り出す」弁護士の存在意義を突いた名句。  テネシー州メンフィスに住むルディ(マット・デイモン)は、パートタイムで給仕をしたりしながら法律を勉強。 ロースクールでどう勉強したか? 彼はこう振り返る。

“勝てないのはアンタが太ってるからだよ!”_”Nacho Libre”(2006)

ぶっちゃけた話、実によく出来たタイガーマスク実写版と言えるジャック・ブラック主演「ナチョ・リブレ 覆面の神様」より。 映画冒頭。彼が修道院の僧侶や孤児たちのために作っている昼食。トルティーヤ・チップスに添えて出している、ドロッとした得体の知れない黒いカタマリ、これはおそらくフライド・ビーンズ。 a little bit more 少しの enchiladas、chilaquiles、tamele  ※メキシコの国民食 作り方は、以下の通り。 せめて出来上がりにチーズ

“書を捨てよ、街に出よう”_ “Higher Learning (1995)”

学園モノかと思ったら、あれよあれよと、思いがけない方向に話が転がる。 「ボーイズ・オン・ザ・フッド」「ワイルド・スピードX2」のジョン・シングルトンが監督、自ら脚本も記した映画「ハイヤー・ラーニング」(日本語の意味:高等教育)。 架空の大学(アメリカ大陸到着400周年の1892年に創設されたコロンブス大学)が舞台。そこには、様々な人種、民族で構成された学生男女たちが登場する。 黒人、白人、アジア人、先住民インディアン、ヒスパニック、ユダヤ人。キャンパスや寮では人種や民族によ

“私の人生に余分なものはない。余計になったら、ポッと消すだけさ。”_“Skyfall(2012)”

「スカイフォール」の敵:シルビアは、まるでボンドと合わせ鏡のような_またはポルターガイストのようなキャラクターで、見るものを惹きつける。 簡単にいえば、ボンドのifの姿。 それは、 with ~ as a backdrop ~を背景として、~を背にして easily  容易に、たやすく、苦もなく、手軽に、円滑に、するすると、気楽に、楽に、確かに、もちろん arresting 【形】 人目[人の注意]を引く 〔容疑者を〕逮捕する 〔~の進行を〕阻止する 〔装置などが〕拘る

「80歳になった気分はどう?」「40歳の曲がり角の2倍、悪いね。」_“On Golden Pond(1981)”

夏の緑が豊かな湖畔の別荘に、ノーマン(演:老優ヘンリー・フォンダ)とエセル(演:老優キャサリン・ヘップバーン)の老夫婦がやってきた。 今年はノーマンの誕生日を祝おうと、普段は疎遠な娘のチェルシー(演:確執ある親父と初共演ジェーン・フォンダ)が恋人のビルと彼の連れ子ビリーを伴って訪ねて来る… 人の世の燈火、 ほのぐらき樹の間。原題は「On Golden Pond」。 映画の舞台は美しい湖畔の別荘で終始する、そこからは、広い湖が裾野を見るように一目の中に見える。日はその湖の先の

“祈るのよ、祈るのよ、祈るのよ。”_Carrie(1976)

ブライアン・デ・パルマ監督「キャリー」である。真っ赤が流れる。真っ赤に燃える。 今なお斬新。 なんといっても、舞台に立つ前後の暗転、狂気、爆発、後悔・・・につきる。 プロムパーティー当日。母親の反対を押し切り、自作のドレスでやってきたキャリー。喜びと不安の気持ちが入り混じる彼女を、トミーは優しく励ます。自分に自信を持ったキャリーとトミーは、パーティーのベストカップルに選ばれた。今までに無い幸せを感じながら、ゆっくりとステージ上に上る二人。 この栄光の瞬間に唾をかける。「上げ

“もう一人、後もう一人、救う力を。”_”Hacksaw Ridge (2016)”

前半で一本作れたのではないか?そう思える程濃く匂い立つ、戦った父 と 戦う子 のドラマ。メル・ギブソン監督「ハクソー・リッジ」より。 本作の白眉は、やはり何と言っても主人公が と呟きながら、取り残された傷病兵を一人、また一人と救い出す奇跡にあるだろう。 とはいえ、やはり日本人としては、日本兵の描写に「もやっと」させられる。 剥き出しの真っ白けた岩壁の上での殺戮と救出劇が、事実を基にしていながら、まるでこの世のものではないかのように、私の中では浮き上がってくる。 過剰な演

“何が起こるか・・・待ってみようじゃん?”_”The Thing”(1982)

目に余る怪物の恐ろしさより、目に余る南極の男臭さ。怪物にとっては目障りなのか、みんな、喰われる。 言わずもがな、身の毛も凍る、ホラー映画の金字塔。舞台が極寒の南極、閉鎖された空間に忍び込んだ異形の恐怖は、今なお見るものを圧倒する。 「何かが起こる気配」気分だけで全編プッシュしたのは正解だろう。油断すると、暑苦しい男臭さばかりが顔を出す。図体は立派な大の大人ばかりが、怪物たちの前に為すすべもなく一人また一人とやられていくのが面白い。 ネタバレしてしまえば、 男たちの友情はも

“美よ、我とともにあれ”_”The Sunchaser”(1996)

これが、マイケル・チミノの遺作だ。 遺作と呼ぶに相応しい風格だ。 そもそもチミノは、作品を出すたび、何かしら社会のスキャンダラスな一面をえぐってきた。 ベトナム帰還兵とロシア系移民(アメリカ国内のマイノリティ)を扱った監督二作目の「ディア・ハンター」は言わずもがな。 「天国の門」は1890年代のワイオミング州を舞台にロシア・東欧系移民の悲劇を描いた。 干されて復帰した後の「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」にはチャイニーズ・マフィア含む人種問題の色が現れる。 芸術か偏見か、いつも

“カネか。いくらあっても足りない気のする「ゴミ」そのものさ。”_”Detour”(1945)

まずはこの男の、憑かれた顔を見てほしい。  1945年のフィルム・ノワール「恐怖のまわり道」の主演を演じたトム・ニールの顔。女優をめぐって同僚を大怪我させたり、妻を射殺したり、フィルムノワールを体現するスキャンダルまみれの人生を起こした男の貌。ナヨナヨしい眉毛、しょぼくれた感じ、もちろん演技やメイクもあるのだろうけが、人生に疲れ果てた感、B級的侘びしさをかもし出している。 68分のテンポ良い短編というのも良い:気だるく疲れた悪の世界が、流れて通り過ぎていく。 話は簡単。男

「アメリカ人だと、バレるじゃないか」「アメリカ人だから、ここにいるのさ。」_“Where Eagles Dare”(1968)

無口な男、おしゃべりな男。クリント・イーストウッドとリチャード・バートンが「荒鷲の要塞」で共演。 無口なのは、もちろん、どっち? ドル箱三部作でノリに乗っていたイーストウッドが、初めて挑戦した戦争映画だ。 「ナバロンの要塞」の原作者アリステア・マクリーンが原作・脚本を担当。同じく難攻不落の要塞をターゲットに、スリル満点の冒険活劇が繰り広げられる。 第二次世界大戦、連合軍がようやく反撃に移ろうとしている頃、“鷲の城”と呼ばれる難攻不落の ドイツ軍要塞に、アメリカのカーナビー

“神など人間の産物に過ぎん!”そんな思い上がりを正すよ”The Sea of Trees”(2015)

A24の映画は気を衒い過ぎる。熱狂的なファンを獲得する一方で、総スカンを食らうこともある。 映画「追憶の森」は後者。「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント×渡辺謙の期待値見た日本人の多くが、観終わった後「見た記憶」そのものを脳から抹消した。 ようこそ、同じものだけが永劫回帰する、森の奥へ。 「男たちだけの中に徹底的に閉じた関係や世界」を描き出すことに徹したら、ガス・ヴァン・サント監督の右に出るものはいないだろう。 大の男が、あまりに繊細すぎる心のために、誰と