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映画の名セリフ、、引いてみた。

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甘い言葉がある。辛い言葉がある。英語だとわかるニュアンス、日本語の方が腑に落ちやすいフレーズもある。 そんな映画の英語の名セリフを、拙訳と共に引いてみる。 目標は和田誠の「お楽し… もっと読む
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デンゼル・ワシントン、英雄失格。映画「フライト」。

つい最近、主演を務める「イコライザー」最終作が公開されたばかりのデンゼル・ワシントンが、2012年にロバート・ゼメキスと組んだ映画『Flight』(邦題: フライト)より。 ウィップ・ウィトカー(演: デンゼル・ワシントン)という有能な航空機のパイロットは、自身が機長を務める旅客機の故障に見舞われ、彼自身の卓越した操縦技術によって多くの乗客を救助する場面から、物語は始まる。 彼の英雄的な行動により、多くの人命が救われた一方で、事故原因の調査が進む中でウィップの人生には問題が

「栄えある死のために。」_"Dishonored"(1931)

第一次世界大戦中の渦中を股にかけたとドイツ帝国に喧伝された、実在のスパイ:マタ・ハリをモデルに、マレーネ・ディートリッヒが美貌の女スパイを演じた、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の1931年の映画「Dishonored」(邦題:間諜x-27)より。 1915年、オーストリア帝国の首都ウィーン。娼婦のマリーは帝国の諜報部から強制的にリクルートされ、スパイとなる訓練を受ける。戦時中ゆえ拒否権はない。勲章すがたの将校が、愛国心や自己犠牲をマリーに説く。彼女は実にどうでも良さげに

「すべての葉が抜け落ちた感じがするのだ。」_"The Father"(2020)

2020年に公開された映画「The Father(邦題:ファーザー)」は、フランスの劇作家フロリアン・ゼラーによる戯曲『Le Père(父)』を基にしたイギリス・フランスの共同製作のドラマ映画だ。 監督はゼラー自身が務め、主演はアンソニー・ホプキンスが演じた。 映画は、認知症に苦しむ老人アンソニー(演:アンソニー・ホプキンス)と、彼の娘アンの複雑な関係を中心に描かれている。アンソニーが次第に現実と錯覚を混同し、周囲の出来事が分からなくなっていく様子が描かれ、観客は彼の視点か

「カトリックが絶滅するまで、アイルランドに平和はない!」_"CROMWELL"(1970)

オリバー・クロムウェルは17世紀のイギリスの政治家および軍人で、イングランド共和国の指導者。その名声は、19世紀、かのゲーテと友誼を結んだ歴史学者ロバート・カーライルの伝記によって世界中に知られ、日本でも内村鑑三が、聖書と並んで自身の影響を受けた書籍として挙げていて、じじつ内村自身が と熱弁ふるって讃えた、議会制民主主義の発展に寄与した人物、表向き清廉潔白の英雄。 他方で、権力を握った後は、反対派や煩い連中を容赦なく弾圧する独裁者へと変貌。グローブ座ほか多くの劇場を閉鎖に追

「俺みたいな救えねえ奴と会ったことが一生の不幸さ、ざまあみろ。」"Nightcrawler"

上映当時であれば生配信主あるいはパパラッチという生易しい言葉。いまでいえば暴露系youtuberまたは炎上系youtuberという厳しい言葉で断罪されるであろう、少なくとも子供の憧れの職業にはなりえない「お仕事」を追体験できる2014年に公開されたアメリカのサスペンス・スリラー映画『Nightcrawler』(邦題:ナイトクローラー)より。 物語は、ルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)という男が、食い詰めた挙句ふとしたきっかけから、ロサンゼルスで不法なニュース映像を撮

「猫が好きだ。そしてネコが嫌いな人間が大嫌いだ。」_"North Sea Hijack"(1981)

以上の逸話、本当だったかはともかくとして、みごとに三代目ボンドを演じて見せたロジャー・ムーア。 フラレてもフラレてもめげずに、粘りで女をゲットする男。取りあえず一発試せるかどうか?まずは単刀直入に切り込む男。断られても怒らない男。そして何より、女のピンチには必ずそばにいるダンディな男(期待通り向こうから飛び込んできてくれる男…)近づいてくる女性は敵だろうが味方だろうが、まずは信じる、優しさに溢れた男…。 女たらしでユーモラスなスパイ=ジェームズ・ボンドという前時代のイメージは

「メリー!メリー、メリー、メリー…気持ちの良い響きだ「黙れ。」」_"Logan Lucky(2017)"

ダニエル・クレイグ。 バッシング一辺倒の前評判を覆して、「007 カジノ・ロワイヤル」で最高に野性的でクールなシリアス・ボンド像を作り上げた男。筋骨隆々の肉体の肉体逞しい、金髪碧眼の、男が惚れる男。2012年夏のロンドン・オリンピックではエリザベス女王とともに開会式に登場し、世界をあっと言わせた(そして来る2020年東京五輪開会式の演出のハードルを上げた)男…。 はい!「わたしは、ダニエル・ブレイク」を007の番外編かと思っていた私が通りますよ。 実際この人の骨格や味のあ

「私が歌えない、と他人は言うかもしれないけれど、誰も、私が歌わない、とは言いやしない。」_"Florence Foster Jenkins"(2016)

エド・ウッドの様に、世の中には「才能が欠落しているために、夢に賭けた、ヒトの二倍も三倍もの努力や愛情が空回りする」愛すべきヒトビトが存在する。フローレンス・フォスター・ジェンキンス(Florence Foster Jenkins)もそのひとり。 以下、ChatGptから引用。機械が作成した客観性が担保されているはずのテキストなのに、なぜだか、容赦ない物言い。 努力に賭けられるお金が足りず資金調達にあくせくしたエドと違って、フローレンスの場合、努力に賭けるお金がそれこそ湯水の

"1899年、ニューヨークの街は新聞売りの声で響き渡っていた…"_"Newsies"(1992)

若かりしChristian Bale(1975-)が主演した1992年のディズニー製ミュージカル映画「Newsies(ニュージーズ)」より。 この映画は、1899年にニューヨークで起こった実際の出来事に基づいており、ニューヨーク・ワールド紙とニューヨーク・ジャーナル紙のティーンエイジがその役を担った販売員("newsies")が、待遇、とくに賃金を改善しようとストライキを起こす様子を描いている。 「ディズニー・ルネサンス」の旗手アラン・メンケンの音楽とジャック・フェルドマン

「帽子を前後逆にかぶるんだ、それで俺のスイッチが入る」_"Over the Top"(1987)

10年間息子から引き離されてコンボイ・トラックの運転手をしながら全米アームレスリングのチャンピオンを目指しているリンカーン・ホーク(シルヴェスタ・スタローン)は、妻の入院を機会に息子と再会を果たすこととなる。しかし、年月の壁は、息子の父に対する気持ちを凍りつかせていた。 リンカーンは決意した。息子の心を取り戻すためにもチャンピオンにならなければいけない。 キャノン・フィルムズ総帥メナハム・ゴーラン御大自ら監督、1987年に鳴り物入りに公開、全米で大コケ日本で大喝采、シルヴェス

腐れ縁の果て、剃刀、桜、鏡。岡田茉莉子主演「秋津温泉」

「映画に愛された小説家」藤原審爾原作、藤原自身にも重なる境遇の、両親のない17歳の少年が伯母に連れられて山奥の秋津の温泉宿を訪れ3年後、その5年後、また8年後と繰り返し秋津を訪れながらそこで出会った女性と妻子を持つ身となっていく主人公の関わりを叙情的に描いた小説「秋津温泉」の映画化(監督:吉田喜重)より。当時の松竹の看板女優:岡田茉莉子が、自身の出演作品100作記念として企画・衣装を手掛けた作品でもある。 本作、吉田喜重が依頼を岡田茉莉子から受け、脚本を自ら書くことと原作に

「悪党は世ン中の犠牲者じゃねえ、世ン中を牛耳るためにいるンだよ!」_"The Departed"(2006)

ボストンのアイルランド系マフィアのボス・フランク(ジャック・ニコルソン)は、幼少の頃から目をつけていた聡明なコリン(マット・デイモン)を州警察へ潜入マフィアとして送り込む。 警察内で出世街道をひた走るコリンによって漏らされる情報によって、フランクもビジネスを順風満帆に拡張していた。しかし、州警察から送り込まれてきた潜入捜査官ビリー(レオナルド・ディカプリオ)の登場によって、全ての雲行きが怪しくなっていく。果たして潜入が発覚するのはコリンとビリーどちらが先か!? レオナルド・

「昨日は誕生日だったけど、誰も"おめでとう"って言ってくれやしなかった…」_「Dark Star」(1974)

「ハロウィン」「遊星からの物体X」「ニューヨーク1997」などアクション、ホラー諸作品で80~90年代のハリウッドで一時代を築いたジョン・カーペンターの監督デビュー作「Dark Star」(1974年公開、邦題:ダーク・スター)より。彼は自身で脚本を書き、音楽を作曲し、低予算で製作を行っている。後に「エイリアン」を手掛ける脚本家ダン・オバノンにとっても出世作となった。 「2001年宇宙の旅」以後「スターウォーズ」以前の70年代のSF映画といえば「絶対にシリアスでなければいけな

「君は子供みたいに振舞うんだね。」「…イイ男ってのは子供心をいつまでも忘れないものさ!」_YEAR OF THE DRAGON(1985)

ベトナム帰還兵でもあるスタンリー・ホワイト警部(ミッキー・ローク)が、チャイナタウンに転属することになった。チャイナタウンに巣食うチャイニーズ・マフィアを壊滅するために若きボス・ジョーイ・タイ(ジョン・ローン)を追いつめていく。ジョーイ・タイもホワイトの妻を殺害し報復。暴力の応酬はとどまることなく…。 以上、あらすじからして、「ランボー」同様ベトナム・ベテランがベトナムで味わった挫折、失われた自己肯定感を、他所の野蛮人の土地で正義のヒーローとして暴れる中で取り戻す「汚名返上」