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映画の名セリフ、、引いてみた。

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甘い言葉がある。辛い言葉がある。英語だとわかるニュアンス、日本語の方が腑に落ちやすいフレーズもある。 そんな映画の英語の名セリフを、拙訳と共に引いてみる。 目標は和田誠の「お楽し…
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「ローマ人の言葉を知っていても、死んだローマ人とは話せませんよ、センセ!」_"S.W.A.L.K. "(1971)

子供たちの気取らないナチュラルな姿を写しつつ、エモーショナルな瞬間を切り取り、なぜか日本では本国と違いヒットした1971年のイギリス映画「小さな恋のメロディ(原題:S.W.A.L.K.または MELODY)」より。 舞台はロンドン東部の下町にある、公立小学校。甘えん坊でいたずら小僧のダニエル(マーク・レスター)が、ガキ大将のオーンショー(ジャック・ワイルド)と友情を深めるのと同時進行で、ちょっとおませな女の子メロディ(トレイシー・ハイド)を好きになり、二人はついに将来を誓う。

「マヨネーズだよ!マヨをくれよ!」French Connection 2(1975)

70年代のハリウッドでは珍しい続編もの(あと有名どころでは「猿の惑星」くらいしか思いつかない)である、1975年の映画「フレンチ・コネクション2」より。前作で逃がした麻薬密売組織のボス、シャルニエ(フェルナンド・レイ)を捕えるため、単身、 フランスのマルセイユに乗り込むジミー・ポパイ・ドイルの活躍を描いている。 続編と言っても、ハックマンとシャルニエ役のフェルナンド・レイ、音楽のドン・エリス以外、キャストとスタッフ は一新。監督はウィリアム・フリードキン…ではなく、フランスが

“15回もジサツしちゃった(テヘペロ”_”Harold and Maude”(1971)

いまだったらA24が配給するだろうが、当時は何を血迷ったか大手メジャー:パラマウントが配給した1971年の映画「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」より。 日本配給元(CIC)も宣伝に頭悩ませたことだろう、音楽を担当したキャット・スティーブンスにクローズアップしたビジュアル、 というやっつけくさい惹句が涙を誘う。 キャット・スティーブンスの甘ったるい声の中で、少年は首を吊る、衝撃の展開から、映画は始まる。「死ぬ死ぬ詐欺」で構ってちゃんする少年は、困ったちゃんだ。 周りを取り

「日曜日、(銀行強盗)以外にやることなんて、あるかい?」"The Thomas Crown Affair"(1968)

70年代前夜、スティーブ・マックイーンが「ブリット」以降のマッチョな役に転じる前夜、さわやかで飄々としたキャラクターを持ち味とした実質最後の作品「華麗なる賭け」(原題: "The Thomas Crown Affair", 1968年、ノーマン・ジュイソン監督)より。 1999年のピアース・ブロスナン主演の無味無臭なリメイク「トーマス・クラン・アフェア」と違って、本作は、いま見てもめちゃくちゃオシャレでカッコイイ映画だ。 監督は、日本ではマイナー、カナダにおいては自国映画産

「チャーチルはそこの椅子に座っていました。優しい人でした。」_"Queen"(2006)

ダイアナ事故死から十年も経たず、登場人物の大半が存命という状態で製作された生々しい2006年のイギリス映画「クイーン」より。 といっても、スキャンダラスな内容ではなく、あくまで、実在人物そっくりの俳優たちが、その内幕を再現する静かなドラマとして演出されている。 1997年、労働党の若き党首トニー=ブレアがイギリス新首相に決まり、エリザベス女王は世代ギャップを感じながら彼を首相に任命する。その直後に元太子妃ダイアナがパリで事故死し、ブレア首相は彼女を「国民のプリンセス」と表現

「身を隠すには良い土地さ。誰もが覗きたくない土地だから。」 「Sorcerer」または「The Wages of Fear」(1977)

ウィリアム・フリードキンは1970年以降のアメリカ映画の最も重要な要素の二つであるアクション映画とA級ホラー映画を、ある批評家の言葉を借りれば、「実質的に発明」した。ダーティハリーと合わせ、その後の映画とテレビにおける刑事物のパターンを決定した「フレンチ・コネクション」とオカルト映画の走り「エクソシスト」だ。 音響馬鹿、演出過剰、鋭いカッティング。 ヌーヴェルヴァーグの革新の風をハリウッドに持ち込んだ、フリードキンが2つの世界的大ヒットの後、次に手掛けた作品が「Sorcer

”1951年 テキサス州 アナリーン 変わるはずのものは何もなかった…” "The Last Picture Show"(1971)

「ラスト・ショー」という懐古的、ノスタルジアな甘い響きに反して、その味は非常に鬱屈。1950年代初頭テキサスの小さな町を舞台に、閉鎖する映画館とともに若者たちの青春とアメリカの失われた夢の終わりを淡々と描いた秀作だ。 起伏のある展開というものはない。主人公のソニー(演: ティモシー・ボトムズ)は、くたびれた機動音を奏でる1951年のフォード・カスタム デラックス(Ford Custom Deluxe)を乗り回し、テキサス州の小さな町、アナリーンをあっちへ行ったりこっちへ行っ

デンゼル・ワシントン、英雄失格。映画「フライト」。

つい最近、主演を務める「イコライザー」最終作が公開されたばかりのデンゼル・ワシントンが、2012年にロバート・ゼメキスと組んだ映画『Flight』(邦題: フライト)より。 ウィップ・ウィトカー(演: デンゼル・ワシントン)という有能な航空機のパイロットは、自身が機長を務める旅客機の故障に見舞われ、彼自身の卓越した操縦技術によって多くの乗客を救助する場面から、物語は始まる。 彼の英雄的な行動により、多くの人命が救われた一方で、事故原因の調査が進む中でウィップの人生には問題が

「栄えある死のために。」_"Dishonored"(1931)

第一次世界大戦中の渦中を股にかけたとドイツ帝国に喧伝された、実在のスパイ:マタ・ハリをモデルに、マレーネ・ディートリッヒが美貌の女スパイを演じた、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の1931年の映画「Dishonored」(邦題:間諜x-27)より。 1915年、オーストリア帝国の首都ウィーン。娼婦のマリーは帝国の諜報部から強制的にリクルートされ、スパイとなる訓練を受ける。戦時中ゆえ拒否権はない。勲章すがたの将校が、愛国心や自己犠牲をマリーに説く。彼女は実にどうでも良さげに

「すべての葉が抜け落ちた感じがするのだ。」_"The Father"(2020)

2020年に公開された映画「The Father(邦題:ファーザー)」は、フランスの劇作家フロリアン・ゼラーによる戯曲『Le Père(父)』を基にしたイギリス・フランスの共同製作のドラマ映画だ。 監督はゼラー自身が務め、主演はアンソニー・ホプキンスが演じた。 映画は、認知症に苦しむ老人アンソニー(演:アンソニー・ホプキンス)と、彼の娘アンの複雑な関係を中心に描かれている。アンソニーが次第に現実と錯覚を混同し、周囲の出来事が分からなくなっていく様子が描かれ、観客は彼の視点か

「カトリックが絶滅するまで、アイルランドに平和はない!」_"CROMWELL"(1970)

オリバー・クロムウェルは17世紀のイギリスの政治家および軍人で、イングランド共和国の指導者。その名声は、19世紀、かのゲーテと友誼を結んだ歴史学者ロバート・カーライルの伝記によって世界中に知られ、日本でも内村鑑三が、聖書と並んで自身の影響を受けた書籍として挙げていて、じじつ内村自身が と熱弁ふるって讃えた、議会制民主主義の発展に寄与した人物、表向き清廉潔白の英雄。 他方で、権力を握った後は、反対派や煩い連中を容赦なく弾圧する独裁者へと変貌。グローブ座ほか多くの劇場を閉鎖に追

「俺みたいな救えねえ奴と会ったことが一生の不幸さ、ざまあみろ。」"Nightcrawler"

上映当時であれば生配信主あるいはパパラッチという生易しい言葉。いまでいえば暴露系youtuberまたは炎上系youtuberという厳しい言葉で断罪されるであろう、少なくとも子供の憧れの職業にはなりえない「お仕事」を追体験できる2014年に公開されたアメリカのサスペンス・スリラー映画『Nightcrawler』(邦題:ナイトクローラー)より。 物語は、ルイス・ブルーム(ジェイク・ギレンホール)という男が、食い詰めた挙句ふとしたきっかけから、ロサンゼルスで不法なニュース映像を撮

「猫が好きだ。そしてネコが嫌いな人間が大嫌いだ。」_"North Sea Hijack"(1981)

以上の逸話、本当だったかはともかくとして、みごとに三代目ボンドを演じて見せたロジャー・ムーア。 フラレてもフラレてもめげずに、粘りで女をゲットする男。取りあえず一発試せるかどうか?まずは単刀直入に切り込む男。断られても怒らない男。そして何より、女のピンチには必ずそばにいるダンディな男(期待通り向こうから飛び込んできてくれる男…)近づいてくる女性は敵だろうが味方だろうが、まずは信じる、優しさに溢れた男…。 女たらしでユーモラスなスパイ=ジェームズ・ボンドという前時代のイメージは

「メリー!メリー、メリー、メリー…気持ちの良い響きだ「黙れ。」」_"Logan Lucky(2017)"

ダニエル・クレイグ。 バッシング一辺倒の前評判を覆して、「007 カジノ・ロワイヤル」で最高に野性的でクールなシリアス・ボンド像を作り上げた男。筋骨隆々の肉体の肉体逞しい、金髪碧眼の、男が惚れる男。2012年夏のロンドン・オリンピックではエリザベス女王とともに開会式に登場し、世界をあっと言わせた(そして来る2020年東京五輪開会式の演出のハードルを上げた)男…。 はい!「わたしは、ダニエル・ブレイク」を007の番外編かと思っていた私が通りますよ。 実際この人の骨格や味のあ