人には人の生き方がある。何者かになっても、ならなくても得られる人生の充実 〜Kさんの場合〜

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Kさん(28歳)の場合
人間関係を築くことの難しさから、高校卒業後に入学した大学を中退。その後、入学し直した大学も2年次の終わりに中退する。
そこから契約社員やアルバイトとして生計を立てるものの、人間関係の煩わしさですぐに辞めてしまう。それから人と接しなくとも生計を立てられそうな株で生活をすることに。しかし、特にやりたいこともなく惰性で過ごす日々。なかばもはや生き続けることの意味さえ見出せずにいた。
そんな時、人生観が変わるはずだと勧められ行った初めての海外。そしてそこでも一切の感動はなく、無意味さに絶望し帰国。いよいよ本格的に生きる意味がわからなくなっていた。
そんな時期、偶然出会ったボーリング。その奥深さに妙に引き込まれていった。
生きている意味。それは彼にとってはボーリングであり、今はアルバイトとしてボーリング場で働いている。給料は同世代の平均額よりも少ないものの、ストレスフリーに生活を送っている彼の姿は一つの人生の在り方を示しているように見えた。
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人間関係って難しいなぁって思って中退しました。で、そこからもう一回別の大学に入り直したんですけど、そこでもやっぱり人間関係はうまくいかなくて..。

—本日はよろしくお願いします。
今日お時間取って頂いたのは、多様な方のインタビューを通して、様々な生き方や考え方を知りたいと思ったからです。普段の生活の中では出会いにくい方の生き方を知ってもらうことで、こういう人もいるんだという、誰かの新しい気づきになれたら良いなと思っています。

Kさん:以下Kと記載):はい。よろしくお願いします。

—早速なのですが、簡単に高校くらいからの経歴を教えて頂いても良いですか?

K:中高は男子校の一貫校に通っていて、そこから普通に大学に入学したんですけど、人間関係って難しいなぁって思って中退しました。で、そこからもう一回別の大学に入り直したんですけど、そこでもやっぱり人間関係はうまくいかなくて。

—高校の時はうまくいってたんですか?

K:高校の時は中高一貫だったこともあって、中学の時ってある意味なんとなく仲良くなれたりするじゃないですか。だから、中学の時に自然と仲良くなれた人たちと高校生活も送っていて。

つまんなかったですね。
繰り返しになるんですけど、人間関係を築くことがすごく苦手だったから。

—たしかにそのギャップはありますよね。いきなり知らない人だらけのところに迷い込む感じは大学入学時はありますよね。

K:そうですそうです。
なんか入り直した大学では、ドラムが好きだったので、軽音サークルに入ったんですけど、やりたいことやるためには往々にして誰かとやる必要があって。軽音サークルも本当は1人でドラム叩いておきたかったのに、バンド組まなきゃいけないし。自分の好きな感じでするのって難しいなって思ったんですよね。

—じゃあ、大学で面白いと思えたことは

K:特にないです。つまんなかったですね。
繰り返しになるんですけど、人間関係を築くことがすごく苦手だったから。

—ちなみに、その中でも大学時代に仲良い人はいたんですか?

K:学科の中ではほぼゼロ。サークルの先輩には、ややいたかなってところで。サークルの同期とか後輩はギリ1人ずつくらい。

—先輩とは仲良くできてたんですね。

K:仲良くっていうか、おそらく先輩からは少し好かれやすいのかなと思っていて、それで向こうが単純に良くしてくれてただけって感じですけどね。笑

人間関係をうまく築くとかは難しいんですけど、そもそもぼく寂しがり屋なんですよ

—そうなんですね。
それはそうと、Kさんの行動して面白いところって大学中退して、大学には籍がない状態の時に大学のサークルに入ったじゃないですか(笑)
人間関係って難しいって言いながらなんでわざわざ大学中退してからサークル入ったんですか?

K:人間関係をうまく築くとかは難しいんですけど、そもそもぼく寂しがり屋なんですよ。だからです。

—どうやって入ったんですか?

K:大学行ったらサークル情報をまとめたパンフレットがあって、それで当時の年齢でも入れるところを探して。そこで偶然見つけたところになんとなく入りました。

—その時はもちろん大学生として?

K:そうですそうです

正直入って1ヶ月ぐらいでこんなん絶対続かないわと思って辞めました。そこからは焼き肉屋のバイトしたり、でもそこも結局店長と折が合わずにすぐ辞めちゃいました。

—なるほど(笑)
時系列的には前後すると思うんですけど、大学を中退してからどうされたんですか?

K:中退なんで、もちろんいわゆる就活っていうことはできず、一応契約社員として、音楽教室の受付になりましたね。音楽はまぁ好きだったので。

—そこはどれくらい勤めたんですか。

K:3ヶ月ぐらいですね。正直入って1ヶ月ぐらいでこんなん絶対続かないわと思って辞めました。そこからは焼き肉屋のバイトしたり、でもそこも結局店長と折が合わずにすぐ辞めちゃいました。
で、やっぱり人と関わる系の仕事は無理だなって思って。
その時に株のことをなんとなく知って、じゃあまぁ株で頑張るかって思ったんですよね。そこで3年くらいは株で生計立ててて、贅沢しなければ、数年くらいは生活できるくらいまでは稼いで。

—それはそれですごいですよね(笑)
でも株は辞めちゃうんですよね。なんでだったんですか?

K:純粋につまんないんですよね。少しも人と関わらないし、ただ画面見て一日終わっていくし。
で、だから株辞めてから天ぷら屋でバイト始めたんですよ。完全にバイトをしなくなってから、数年ぶりにまたアルバイト始めて。
で、心境の変化っていうのもあって、人と接する仕事もいいなって思えたんですよね。そこは人間関係も良くてきっとちゃんと続くなと思えたんですよ。
でも、まさか働き始めて半年ぐらいで店の営業縮小でクビになっちゃって。

なんか考えも変わるかなってちょっとは期待して行ってみたんですけど、ホントなにも面白くなくて。(笑)

—それはツライ。その時の気持ちってかなり辛いですよね。

K:まぁでも、仕方ないかーくらいの感じでしたよ。株で稼いだお金も残ってるし、まぁいいやっていう感じでしたね。
で、貯金の金で生活はできるんですけど、なんかすることもやりたいこともねぇなーって思ってて。うーーん、生きていることに意味はあるのかなって時期が一年半ぐらい続いて。
で、そういうタイミングで、大学時代から関係が続いてたサークルの先輩から、なにもすることないなら海外でも行ってみたら?って言われて。人生観もきっと変わるよって。
調べたら一ヶ月ぐらい滞在しても10万円くらいでいけるんですよね。まぁだったら行ってみるかって思って。
なんか考えも変わるかなってちょっとは期待して行ってみたんですけど、ホントなにも面白くなくて。(笑)
ほんとにつまんなかったし、価値観の変化なんて生まれなかった。なぜかむしろ感受性が鈍化したんじゃないかなって感じでしたよ。それでいよいよやばいなって思って。なにかやりたいこととか、生きる意味みたいなものが見つかるかなっていう期待もして行ったのに、なにも変わらなくて。
で、海外から戻ってきた時の僕は、正直もう生きる意味ないなーって思ったんですよね。
それで海外から戻って金遣いめちゃめちゃ荒くなったんですよね。半ば自暴自棄というか諦めっていう感じで。貯金も全部使い切っちゃおうって思って。
そこから、海外でなにも見つからなかったから、とりあえず思いつく限りのやりたいっぽいことを頑張って見つけて。たとえば、図書館にある表紙を隅から隅まで全部見て、気になるワードをピックアップしたり、インターネットで面白そうなものを探したり、これやったら悔いはないっていうリストを一ヶ月くらいかけて作って。そのリストを一つひとつ消していくっていうことをしていました。
たとえばスカイダイビングとかバンジージャンプとか。あとは、食べたことないから食べておきたい美味しいものリスト作ったりとか。
で、そのリストの一つにボーリングがあったんですよ。
それ以外のものは、1回やったら満足してどんどんリストからも消してたんですけど、なぜかボーリングだけは何回やってもなかなか消せなくて。なんか、もうちょっとしたいなって気持ち?
お金は使い切っちゃおうって思ってたので毎日のようにボーリングは行ってて。そしたらお店の人に毎日来てる若い人なんて珍しいからって、なぜかボーリングのマイボールまで貰って(笑)
それで一層のめり込んでやっちゃいました。やっぱりボーリング面白いなぁってなって。
で、その時に女性ともお付き合いすることになって、そしてボーリング場でのバイトも見つけて。
だから、人生完全に諦めかけてた、キワキワのタイミングで、趣味と彼女と仕事が全部揃って。だったら、まぁもうちょっと生きようかなって思ったんですよね。

気づいたら放任主義になってました。こういう子どもがいるということに親が適応してくれたっていうか(笑)

—その絶望からの巻き返しがすごく面白いんですけど(笑)
聞きたいのが、これまでの生き方を聞く限り、いわゆる一般的な進み方でもないかなって思うんですけど、それこそ大学中退してご両親は心配しなかったんですか?

K:心配しまくりでしたよ。中退も1回目は、まぁそういうこともあるよねって感じだったんですが、さすがに2回目はめちゃめちゃ心配されましたね。これからどうすんのよ?みたいな。

—それは心配されますよね。今でも心配されていますか?

K:いや、気づいたら放任主義になってました。こういう子どもがいるということに親が適応してくれたっていうか(笑)

自分が良い状態って思えてることが一番良いんじゃないですか?
例えば、他人に良い評価されることが自分の価値だっていう考え方ははそれはそれで凄く良いと思いますし

—適応力高いですね(笑)
ちなみに、めちゃめちゃ大きな質問になっちゃうんですが、僕としては人に迷惑さえかけなければ、それぞれが思う幸福が実現できれば良いと思っていて。
そういう意味で、Kさんの幸福ってなんですか?見る限り楽しく生きてる感じがするなって思っていて。

K:幸福っていうのをあんまり意識はしたことないですけど、シンプルに楽しいことがあるから生きてるって感じですね。今で言うとボーリング。
自分が良い状態って思えてることが一番良いんじゃないですか?
例えば、他人に良い評価されることが自分の価値だっていう考え方ははそれはそれで凄く良いと思いますし、それが幸福的なものに繋がってるのであれば素晴らしいことだと思う。
僕としては、自分が楽しいことしてるなっていう状態であればOKだと思ってるだけで。

趣味で日々を過ごしながら、美味しいご飯も食べて、休日は誰かと会って話して孤独癒して。
ノンストレスで毎日楽しく過ごしてるので
僕の生き方、考え方ってすごくシンプルで、自分が嫌なことはしないし、好きなことをし続ける、以上。

—実はこれまで話を聞いた中で、アルバイトだけで生活してる人って聞いたことがないので参考にしたいんですけど、簡単にどう生計を立てているか聞かせてもらっても良いですか?

K:だいたい週4から5日で、23時から5時まで働いていて。時給は1250円。
なので、大体月収は14万円ぐらいですかね。多少前後しますけど。
それで、家賃が42000円で、光熱費が8000円。で、携帯が格安SIMなんで1500円ぐらい。
そのへんがインフラ関係で。
あとは社会保険費。年金と健康保険ですね。それが僕の場合トータル2万円。
で、日々の消耗品、食材とか調味料とかで1日1000円。なので月3万円。
残り4万円は自由に使えるっていう感じです。
4万円は外食費とか交通費で使いますね。あとはあんまりないですが、突発的な出費。
そこまで物欲がないので、正直そこまで使わないんですよね。なので、残ったお金は貯金。
僕寂しがり屋なんで、仕事は夜勤入る代わりに土日は休みにしてもらって、その土日で誰かに会いに行ってます。
あと、ご飯を作るのも食べるのも好きなので、自分で美味しいもの作って食べて。平日は毎日ボーリングしてから仕事に入って。
趣味で日々を過ごしながら、美味しいご飯も食べて、休日は誰かと会って話して孤独癒して。
ノンストレスで毎日楽しく過ごしてるので、そういう人生におけるプラス面を考えると、バイトってまぁ仕事なので面倒くさい気持ちにもなったりしますけど、トータルで考えるとその面倒くささって微々たるもの過ぎてなにも感じません。
ここまで聞いてもらったらわかるかもしれないですけど、僕の生き方、考え方ってすごくシンプルで、自分が嫌なことはしないし、好きなことをし続ける、以上。

—すごく明確(笑)
ありがとうございました。

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