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コザの夜に抱かれて 第14話

 木曜日。みゆきの定休日である。みゆきはバスを乗り継いで、とある病院へと来た。診察券を機械に通し、予約票を受けとる。それを受付に出して、薄暗い待合室の水色の席に座った。ソニーのヘッドフォンを耳にかけ、いつものようにアイポッドをシャッフルにする。ジャフェムの<ウォーキング>が流れ出した。そして本をとり出して開いた。読みはじめようとしたとき、彼女の目の前に看護師が現れた。
「○○さん」
 ヘッドフォンを外し、メガネをすこし持ち上げ、みゆきは看護師を見上げた。
「はい」
「今日は混みあっているので、先に採血とエコーしておきましょう」
「わかりました」
 本をカバンにしまう。彼女は看護師のあとについて、水色のカーテンをくぐり、採血室に入った。丸イスに座って、ジャージの袖をめくる。
「生年月日をお願いします」
 みゆきは生年月日と本名を言った。
「アルコールでかぶれたりはないですよね?」
「はい」
 針が腕に刺さる。管を蛇が藪をゆくように、赤い彼女の血が這っていく。みゆきはそれを必ず眺めている。
「気分悪いとかないです?」
「大丈夫です」
 五分とかからず採血が終わり、彼女は、次は生理検査室へと連れていかれた。横になり、腹にローションを塗られ、T字型のバーがあてられる。息を吸ったり、吐いたりしながら、内臓の写真をとっていく。
 それから、彼女はまた待合室に連れて行かれた。すると、十分もしないうちに呼ばれた。101号室の扉を開いた。
「お久しぶりです。教授」
「うるせーよ。風俗嬢」
 みゆきのように髪をうしろで縛った、女医だった。
「この前は仕事だったんですか?」
「ああ。悪かったね、行けなくて。ばあちゃん、怒ってたろ?」
「いえ。おばあちゃんは、真由美おばさんの仕事のことには、口はだしませんよ。わたしみたいに定職にも就かず、ぷらぷらしているひとが、親戚の集まりに顔出さないのは嫌がりますけどね」
「ははっ。そうだね」
 そう返事をすると、真由美と呼ばれた女医はパソコンに向かいなおり、エコー写真を画面に出した。
「結論から言うとねー……」


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