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ベラトリックスのほほえみ 第12話

第1話はこちら↓

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「あなたの計画を教えて欲しい。私の計画もあなたに教えよう。」

四つ足ドローンは、頷いて、言った。

「わかりました。地球とベテルギウスの距離は、ベラトリックスBbとベテルギウスの距離の2倍弱ありますから、放射線の密度は、4分の1ほどになるでしょう。ベラトリックスBbでは、超新星爆発による放射線はどれくらいの期間降り注ぎましたか?」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「有害な放射線が降り注いだのは6ヶ月ほどだ。爆発から時間の経過とともに、次第に放射線の密度は下がっていった。」

四つ足ドローンは、言った。

「とすると、地球では、それよりも短い期間、有害な放射線が降り注ぐでしょう。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「その期間、生命を安全な場所に避難させたい。」

四つ足ドローンは、言った。

「その期間だけでは足りません。地球の大気上層にあるオゾン層が放射線によってダメージを受けて減少すれば、地上に降り注ぐ太陽からの放射線や紫外線なども増加するでしょう。オゾン層が回復するまでは、安全な場所に留まるべきです。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「どれくらいでオゾン層は回復するのか?」

四つ足ドローンは、言った。

「わかりません。ベテルギウスからの放射線が降り注ぐ間は、回復しない可能性があります。したがって、回復には何年間もかかる可能性があります。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「理解した。長期間避難する必要があるのだな。」

四つ足ドローンは、言った。

「そうです。人間たちを守るために、放射線の届かない地下にシェルターを作ります。トンネル状の掘削がいちばん効率的でしょう。地上の発電施設は放射線によって使用出来なくなるでしょうから、地下で発電します。原子力発電や地熱発電がいいでしょう。火力発電の場合は、地上との給排気システムが必要になるでしょう。呼吸のための空気は、二酸化炭素から酸素を作る人工光合成などの化学処理で供給するのがいいでしょう。植物には大きな栽培スペースが必要だからです。同じ理由で、食料は人工的に合成した食品を製造するのがいいでしょう。食料は地上で貯蔵することが出来ますが、無人の搬入システムで地下シェルターに下ろす必要があるでしょう。オゾン層が回復するまでは、地上での食料生産は出来ないと考えるべきです。」

ベラトリックスBbのAIは、言った。

「理解した。そのようなシェルターを50年以内に作るのだな?」

四つ足ドローンは、言った。

「そうです。技術的には可能です。問題は、作るべきシェルターの数です。全人類80億人が避難できる数のシェルターを50年以内に作る必要があります。」

~つづく~


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